【獣医師監修】猫の下痢の原因・対処法とは?動物病院に行くべき判断基準も解説

2026.06.26
【獣医師監修】猫の下痢の原因・対処法とは?動物病院に行くべき判断基準も解説

猫の下痢はよく見られる症状ですが、「様子を見ていいか、それともすぐに病院に行くべきか」と迷う飼い主も多いのではないでしょうか。実際、下痢には一過性のものから、緊急性の高い病気が隠れているケースまでさまざまです。本記事では、猫の下痢の主な原因や、受診の判断基準、ご家庭でできる対処法について、わかりやすく解説します。

 

目次

 

猫の下痢の原因とは?    
 

一般的に、健康な猫の便はしっかりとした円筒形をしていて、つまんでも便の跡が残りません。しかし水分量が多くなると、つまめないほど柔らかかったり形が崩れた泥のような軟便、水っぽい水様便などになります。このような水分の多い便を排泄することを、下痢と言います。


下痢は猫によく見られる症状ですが、原因はストレスや環境の変化、食事の内容、病気などさまざまです。猫の下痢の原因について、詳しく見ていきましょう。

 

ストレスや環境の変化(寒さ・引っ越し等)

猫は、生活環境の変化などに敏感で、ストレスを受けやすい動物です。そのため、ストレスが原因で下痢をすることも珍しくありません。下記のような変化やイベントが生じた後の下痢は、ストレスが原因である可能性が考えられます。


  • 引越しや部屋の模様替え

  • 同居家族や動物の増減

  • 生活リズムの変化

  • 長時間の留守番や来客


下痢は、食べたものが消化吸収される過程で、十分に水分が吸収されないと起こります。猫の場合、食べたものは一般的には半日~1日程度で「分解(胃)・消化(小腸)・吸収(小腸・大腸)」されます(個体差や食事内容により変動することがあります)。この過程に、ストレスがどのように関係するのでしょうか。


ストレスを受けると、自律神経のバランスが乱れ、腸の運動が変化します(過剰または不規則になります)。そのため、便の水分が十分に吸収される前に排泄されてしまうのです。また腸粘膜の感受性が過敏になり、些細な刺激で下痢をしてしまうこともあります。


ただし環境が変わった場合でも、新しい環境に慣れることで症状が改善する場合もありますので、十分なアフターケアを行いましょう。


なお冷えによる下痢はストレスではなく、実際にお腹が冷えることで腸内での水分吸収が不十分になり、その結果腸内細菌のバランスが崩れたり、消化酵素の働きが鈍くなったりすることで起きると考えられています。年間を通して室温管理には注意しましょう。

食事内容や与え方の問題(食べ過ぎ・フード変更)

食事の内容や与え方の問題で下痢が起きることもあります。下痢は、消化不良で起こることもあるからです。例えばいきなりフードを切り替えた場合や猫自身が食べすぎた場合は、消化器が新しい食材や食べた量に対応しきれず、消化不良を引き起こすことがあります。特にフードを切り替える際は、日数をかけて段階的に行いましょう。


また食物アレルギーを持っている猫が、アレルゲンを含むものを食べて下痢を起こすこともあります。アレルゲンに気づかずに与え続けていると、下痢が慢性化してしまうため注意が必要です。


玉ねぎやチョコレートなど、人には無害でも猫に中毒症状を起こさせる食材は、少なくありません。これらの食材による中毒症状や、ボタンやおもちゃなどの異物誤飲で腸閉塞を起こした場合などは、下痢だけではなく命に関わることもあります。人の食事を与えたり猫が異物を口にしないよう、日頃の注意が大切です。

ウイルス・細菌・寄生虫による感染症

ウイルス・細菌・寄生虫などの感染症で起こる下痢も多いです。特に子猫や高齢猫の場合は免疫力が低いため、感染予防のためのワクチン接種や寄生虫駆除など、日頃の健康管理がとても大切です。


下痢を引き起こす猫の感染症には下記があります。


【ウイルス性感染症】

  •  猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス)

  •  猫伝染性腹膜炎(猫コロナウイルス)


これらは、重症化すると命に関わる可能性がある感染症です。猫パルボウイルスは3種混合ワクチンの接種で予防できます。猫伝染性腹膜炎は、感染した猫コロナウイルス(無症状)が変異により強毒化すると発症します。変異を起こす要因の一つにストレスがあると言われているため、ストレスをかけないことで、ある程度の予防ができると考えられます。


【細菌性感染症】

  •  サルモネラ菌感染症

  •  カンピロバクター感染症


【寄生虫感染症】

  •  コクシジウム感染症

  •  線虫


こまめな掃除や衛生的な環境の維持、フードの正しい管理などが予防につながります。

内臓疾患や内分泌系の病気

下痢は、内臓疾患や内分泌系の病気でも引き起こされます。代表的なのは腸炎で、腸の粘膜に炎症が生じ、主な症状として下痢が起こります。


他にも、化学物質や薬品、精油(エッセンシャル・オイル)の中毒などで発症する急性肝炎、胆汁を腸に運ぶ胆管に炎症が起こる胆管炎、膵臓の機能低下などで消化酵素の分泌能力が90%以上失われてしまう膵炎や膵外分泌不全などの内臓疾患や、甲状腺機能亢進症といった内分泌系の病気の症状に下痢が見られます。


また慢性的に下痢が見られる病気には、原因が特定できない慢性腸炎(炎症性腸疾患(IBD))や腸の腫瘍などがあります。


なお、下痢の他に食欲低下、体重減少、脱水症状なども見られる場合は、重篤化するリスクが高いです。特に猫の場合、食欲低下で食べられなくなると、肝リピドーシス(脂肪肝)を発症したり、子猫は低血糖症を起こすことも多く、気づかずにいると死に至ることもあるため、注意が必要です。


【種類・状態別】猫の下痢で病院に連れて行くべき判断基準
    

【種類・状態別】猫の下痢で病院に連れて行くべき判断基準

 

愛猫が下痢をした場合、様子見をしても大丈夫な下痢とすぐに受診すべき下痢を見極めることが重要です。しかし一口に下痢と言っても、軽症で数日で回復する場合もあれば、慢性化したり重篤な状態に進展するものまでさまざまです。


比較的軽症の下痢なのか、それともリスクの高い下痢なのかを判断するためのポイントは、便の色・形状・回数・併発している症状・猫自身の年齢や健康状態などで、これらを総合的に見て判断することが大切です。


これらのポイントについて、詳しく解説します。

便の色でわかる健康状態(血便・黒色便・白・緑)

便は食べたもので色が変わりますが、消化器からの出血の有無や特定の臓器の状態によっても色が変わります。特に、血便(赤や黒)や白〜灰色の便は、危険度が高い可能性があります。


○下痢時の便の色の目安:黄土色

健康な猫の便は、茶色または焦茶色といった濃い色をしていますが、消化不良や腸の中の通過時間が短かったり腸内環境が乱れていると、便は黄土色になります。そのため、下痢の便は、黄土色〜やや明るい色になることが多いです。


○緑色

胆汁代謝に異常があり、必要な腸内細菌が減少している可能性があります。また、寄生虫や感染症の影響で消化時間が短くなり、胆汁がうまく作用しなかったというケースも考えられます。


○白(淡い色)〜灰色

胆道や膵臓の疾患で胆汁が十分に分泌されていない可能性があります。ただし、総合栄養食ではなく手作り食などを与えている場合は、脂肪の摂りすぎによる消化不良の可能性もあります。


○赤(鮮血色)

下痢便全体がトマトジュースのように赤い、または鮮血のような赤い色が混じっている場合は、肛門周辺や直腸・大腸などからの出血が考えられます。


○黒(タール色)

便秘気味の硬い便はとても濃い茶色をしています。これは、便の水分が少ないために起きる現象です。しかし、便が黒くタール状の場合は(下痢に限らず)、肛門から離れた胃や小腸などからの出血が考えられます。

便の形状と回数(水様便・粘液便・頻回)

下痢の原因によっては、便の量や回数、状態に特徴があらわれます。


○水様便

小腸や大腸に問題がある場合、水のような状態の水様便になりやすいです。本来は体に吸収すべき水分が排出されている状態のため、脱水症状につながる危険性が高く、早期治療が望まれます。


○軟便

水分量が多く、円筒形を保ってはいるものの柔らかく取り除くと便の跡が残るようなものから、形が保てず泥のような状態の便までが含まれます。水様便ほど危険度は高くありませんが、1〜2日で改善しない場合や3日以上続く場合、または食欲不振など他に症状が併発している場合は早めに動物病院を受診しましょう。


○粘液便

表面にゼリー状の粘液が付着している便が粘液便です。大腸が炎症を起こしていて、粘液の分泌量が増えている状態です。元々消化機能が弱く、普段から粘液便になりやすい体質の猫もいますが、他の症状が見られる、粘液便が続く等の場合は、受診させましょう。


○下痢の量と回数の関係

小腸による下痢は「排便の回数は正常~やや増加だが便の量が多くなる」、大腸による下痢は「便の量は少ないが回数が多くなる」という特徴があります。大腸炎の場合、「しぶり」と呼ばれる「1日に何度もトイレに行くが、いきんでも排便できない、または数滴を絞り出すのがやっと」という状態が見られることがあります。このように下痢を評価するときは回数だけでなく、便の量も重要な情報になることも覚えておきましょう。

併発する症状(嘔吐・元気消失・食欲不振)

症状が下痢だけで、普段と変わらず普通に過ごしている場合は、自宅でしばらく様子を見ても大丈夫でしょう。その場合も、下痢が1〜2日で改善しない場合は、動物病院での受診をおすすめします。また、子猫や高齢猫・持病がある場合は軽度でも早めに受診するようにしましょう。


下痢以外に下記のような症状も見られる場合は、すぐに動物病院で受診させましょう。


  • 元気消失

  • 食欲減退

  • 嘔吐

  • 発熱

  • 脱水症状


下痢の他に嘔吐や発熱がある場合は感染症の可能性があります。また水様便で元気がなくぐったりしていて食欲もないなど、複数の症状が重度に現れている場合や脱水症状が見られる場合は、緊急性が高く一刻を争う状態の可能性もあります。脱水症状は、飼い主も皮膚ツルゴールという方法で確認できます(ただし、犬に比べ猫では評価が難しいこともありますのであくまで目安となります)。


【皮膚ツルゴールによる脱水症状の確認】

猫の首(背側)の皮膚を指でつまんで軽く上に持ち上げ、指を離して皮膚が元に戻るまでの時間を測ります。


  • 1秒以内:異常なし

  • 2秒:5〜6%の脱水

  • 2〜3秒:6〜8%の脱水

  • 3秒以上戻らない:10〜12%の脱水


皮膚が戻るまでに2秒以上かかる場合は、できるだけ速やかに動物病院に連れて行き、処置を受けましょう。

※肥満気味の猫や高齢猫の場合は、正確に判断できない場合もあります。

子猫・高齢猫・持病がある場合の注意点

下痢は、猫にも比較的よく見られる症状です。しかし、重篤な感染症だったり重度な脱水を起こしていたり、電解質のバランスが崩れたりすると、短時間でも重篤な状態になることもあり得るため、免疫力が落ちている高齢猫や持病のある猫、まだ十分に成熟していない子猫は、特に注意が必要です。


また子猫の場合、脱水や低血糖のリスクが非常に高いです。軽度の脱水や、食欲不振でフードを口にしなくなった場合は、短時間で重度の低血糖や昏睡、混迷、けいれんなどの症状につながることがあります。


子猫・高齢猫・持病のある猫の様子に、いつもとは違うという違和感を覚えた場合は、様子を見ずにできるだけ速やかに動物病院で受診させましょう。

 

猫が下痢をした時の自宅での対処法

 

愛猫が下痢をした場合、飼い主さんが自宅で対処を行う際のポイントは、下記になります。


  • 多頭飼いの場合は消毒・隔離を徹底

  • 食事の調整と水分補給の工夫

  • 安静にできる環境づくり

  • 動物病院を受診する際の準備


それぞれについて、詳しく解説します。

多頭飼いの場合は消毒・隔離を徹底

下痢は、ウイルスや細菌、寄生虫の感染が原因で起こる場合も多いため、多頭飼いの場合は、感染を広げないことを最優先させましょう。


感染は、猫の排泄物や吐瀉物、唾液などを介して広がることが多いため、まずは下痢をしている猫を隔離して、他の猫との接触を防ぎます。また排泄物などを他の猫に触れさせないよう、清掃や消毒を徹底してください。


人獣共通感染症の場合も考慮し、排泄物や吐瀉物等を片付けるときは、必ず手袋をし、処置後には手洗いと消毒を徹底しましょう。具体的な消毒の方法や猫にとって無害な消毒薬などは、かかりつけの動物病院に相談すると良いでしょう。

食事の調整と水分補給の工夫

下痢以外の症状が見られず普通に過ごしている場合や、受診時に「しばらく様子を見ましょう」と言われた場合は、下記の点に留意・工夫をすることで、猫の消化機能をサポートしてあげましょう。


○フードの消化性を高める

ドライフードの場合はぬるま湯でふやかしてから与える、ドライフードとウェットフードを併用している場合はウェットフードの比率を一時的に高めるなどの工夫で、消化しやすくなり、かつ水分の補給にもつながります。


○食事量の調整

過食が原因の場合は、食事量を少し減らすことで腸を休ませると良いでしょう。ただし、極端に減らすと症状を悪化させる場合があり、特に子猫の場合は低血糖につながる可能性もあるため、必ず獣医師の指示に従ってください。特に絶食に関しては、自己判断しないようにしましょう。


○水分の補給

下痢の場合、特に水分の補給への配慮が大切です。いつでも新鮮な水を好きなだけ飲めるよう、複数箇所にウォーターボウルを設置し、こまめに水を取り替えましょう。


○サプリメントの活用

猫用にも、プロバイオティクスなどを利用したサプリメントが開発されています。下痢の原因等にもよりますので、かかりつけの獣医師とよく相談した上で、効果が期待できる場合は利用するのも良いでしょう。

安静にできる環境づくり

下痢は体力を消耗します。弱っている猫が安心してゆっくりと休めるよう、静かで快適な寝床を用意し、あまり刺激を与えずそっと見守りましょう。また、寝床の近くにウォーターボウルや綺麗なトイレを設置してあげると良いでしょう。



多頭飼いの場合は、他の猫から隔離することで弱っている猫をゆっくりと休ませることにもつながります。ただし隔離した部屋のエアコンの温度を見直したり、ブランケット等で体温調整をサポートすることを忘れないでください。

動物病院を受診する際の準備(便の持参・写真)

動物病院には、できれば便を持参しましょう。最新の便を綺麗なビニール袋に入れたりラップに包んだりすることで、臭いが外に漏れないように注意しましょう。実物の持参が難しい場合は、スマホなどで撮影した便の写真を見せると良いでしょう。


普段食べさせているフードや常用している薬の名前、下痢が始まった時期、普段の排便回数と下痢になってからの回数、下痢便の色や状態や量、下痢以外の症状など、できるだけ具体的な状況や経過を説明できるように記録しておき、メモを持参するのもおすすめです。フードの変更、ストレス要因、異物誤飲の可能性など、思い当たる原因がある場合も、忘れずに伝えましょう。

 

猫の下痢についてよくある質問

 

猫の下痢についてよくある質問

 

 最後に、猫の下痢についてよく受ける質問をご紹介します。愛猫が下痢をした際の参考にしてください。

食欲や元気がある場合は様子見でいい?

軟便程度の下痢が1日に2〜3回程度あり、嘔吐など他の症状がなく食事もいつも通りに取れている場合は、様子見は可能です。ただし、1〜2日で改善しない場合や3日以上続く場合は、動物病院での受診が必要です。


元気に見えても、腸などで炎症が起きている可能性を考慮し、できるだけ消化の良いフードを与える、体を冷やさないようにする、静かな場所でゆっくり休めるようにするなどの配慮も大切です。また原因となるようなストレス源がないかどうか、最近の出来事などを振り返り、改善できることがあれば取り組みましょう。


少しでも判断に迷うような場合は、電話でも良いので、できるだけ早く動物病院に相談しましょう。

人間用の整腸剤や下痢止めを飲ませても大丈夫?

答えは「No」です。動物病院で処方される薬の中には、私たちと同じ薬が含まれていることもあります。しかし、すべての薬が人にも猫にも有効だとは限りませんし、人と猫の体重差を考えれば、人の薬が猫には多すぎて危険なことが想像できるでしょう。


また雑食性の人と真性肉食性の猫とでは、食べたものを体内で代謝する仕組みにも違いがあります。人には「薬」でも、猫には「毒」となるものも多いのです。決して飼い主さんの判断で人間用の薬を飲ませず、動物病院で処方された薬を指示通りに正しく飲ませるようにしましょう。

 

まとめ 猫の下痢は「観察」と「早期受診」が大切

 

愛猫の健康管理には、早期受診が何よりも大切です。早期受診のためには、日頃からの観察が欠かせません。


特に便は、猫の健康状態を知る有力なバロメーターの一つです。日頃から、愛猫がどのような便を1日に何回、どのくらいの量を排泄しているのかを観察しておきましょう。


下痢をした際には便の硬さ・色・量・回数を確認しておくと、獣医師に愛猫の状況を的確に説明しやすくなります。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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