老猫がごはんを食べない原因は? 対処法も解説

2022.11.05
老猫がごはんを食べない原因は? 対処法も解説
老猫と呼ばれる年齢になると食欲が落ち、あまりごはんを食べなくなることがあります。食は命にかかわるので、ごはんを食べないと心配になりますが、そもそもどうして老猫はごはんを食べなくなるのでしょうか。年齢によるものだと考えて様子を見ていて大丈夫なのか、それとも何か対処したほうがいいのか。
この記事で老猫がごはんを食べない原因や対処法について説明しますので、どうぞ参考にしてください。
目次


老猫がごはんを食べない原因


老猫がごはんを食べない…その原因は、ひとつではありません。考えられることはいくつかあるので、もし飼っている老猫がごはんを食べないと心配な場合は、ひとつずつチェックしてみてください。

まず挙げられるのが、年をとったことによる消化機能の衰えや基礎代謝の低下です。消化機能、つまり胃腸の働きが弱ってくると、以前のようにごはんを食べることができなくなってしまいます。基礎代謝の低下というのは、生命活動を維持するために必要なエネルギー量が少なくなること。老猫は寝る時間が増えて運動量が減るため、ごはんの量もそれほど必要ではなくなるということです。

そのほか、歯周病や口内炎など、歯や口に痛みを感じる病気を患っているため食べられなくなることがあります。特に歯周病は、老猫がかかりやすい病気のひとつです。

鼻水や鼻づまりなど、鼻の病気も食欲低下の原因になります。猫は、目の前にある食べ物が安全かどうかを嗅覚で判断するからです。鼻に異常があり嗅覚が落ちてしまうと、安全性が確認できません。それが食べないという行動につながるわけです。老化により嗅覚が落ちた場合も同じことが言えます。

また、老猫に多い慢性腎臓病をはじめとした内臓疾患も原因のひとつです。食欲不振だけでなく、嘔吐や下痢などの症状が見られるときには病気を疑ってみましょう。

それ以外には、ストレスが原因になることも。猫はとても繊細できれい好きな動物です。食事環境が変わったり清潔ではなかったりすると食欲不振につながることがあります。

老猫がごはんを食べないときは病院に連れていくべき?


老猫がごはんを食べないと、やはり心配です。病院に連れていくかどうか、何をもって判断すればいいのでしょうか。

いちばんのポイントは、元気があるかどうかです。ごはんをあまり食べない状態でも、いつも通り元気があるという場合は、少し様子を見てみましょう。明らかに元気がないとき、呼吸が荒くて苦しそうなとき、ごはんだけでなく水も飲まないとき、嘔吐や下痢を伴うときは、すぐに病院に連れて行き、診察を受けてください。

また、たとえ元気があったとしても、食事をとらない時間が24時間を超したときは、病院に連れていきましょう。24時間以上何も食べないというのはやはり普通ではありませんし、十分な栄養が取れなくなることで発症する「肝リピドーシス(脂肪肝)」という病気を誘発してしまう可能性があります。

老猫がごはんを食べない場合の対処法


元気があって病院に連れていくほどではなさそうだけど、老猫がごはんをあまり食べてくれないというとき、飼い主さんはどのように対処したらいいのでしょうか。大きく分けると、ふたつの方法があります。

ひとつは、フードをチェックすること。与えているフードがドライタイプの場合、硬くて食べられないのかもしれません。お湯やウェットタイプのフードを混ぜてやわらかくしてみましょう。そのとき、少し温めてあげると、老猫がにおいを感じ取りやすくなります。

また、フード自体をシニア用に切り替えてみるものいいでしょう。ドライフードの粒の大きさ、ウェットフードのとろみなど、高齢猫が食べやすいように配慮されていますが、気をつけたいのは栄養バランスです。ウェットフードの中には、おやつのような補助食として位置づけられるものもあります。ウェットフードにドライフードを組み合わせるなどして、バランスよく栄養が摂取できるようにしましょう。

なかなか食べてくれない老猫には、猫用のかつお節、お気に入りのウェットタイプおやつなどをトッピングすることも方法のひとつです。老猫はちょっと繊細で気難しい面があるので、1回ではうまくいかないかもしれませんが、いろいろと試しながら食べてくれるごはんを探してみてください。

もうひとつ、飼い主さんが対処できることは食事環境の見直しです。老猫になると、関節に痛みを感じることがあり、腰を下げたり頭を低くしたりしてごはんを食べるのがつらくなるケースがあるのです。床に食器を置いているなら台を用意してあげましょう。

高さのある食器(フードボウル)に変更してもかまいません。老猫が立ったまま、負担なく食べられる環境を作ることがポイントです。なお、食器は大きすぎても小さすぎても食べにくいので、老猫の食べる様子をよく観察して、調節してあげてください。

食事場所は清潔か、老猫が近づきやすい場所にあるかといったことも確認して、食事環境を整えると、食べてくれるようになることがあります。


老猫がごはんを食べないと心配になりますが、まずは愛猫の様子をよく観察してみてください。気になること、明らかな異常が見られる場合は、できるだけ早く病院に連れて行き、獣医師に診察してもらうことが大切です。そうでない場合は、食事内容や食事環境を見直してみましょう。
ただし、食べない時間が24時間を超えたときには、たとえ元気があっても、念のため受診してくださいね。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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