【獣医師監修】子犬が下痢をする原因とは?受診判断や対処法・予防法を解説

2026.09.24
【獣医師監修】子犬が下痢をする原因とは?受診判断や対処法・予防法を解説

子犬が下痢をしていると、「食べすぎただけ?」「元気があれば様子を見てもよい?」と不安になる飼い主も多いでしょう。


子犬の下痢は、フードの急な切り替えや環境の変化によるストレスなど、一時的な原因で起こることがあります。


この記事では、子犬が下痢をする主な原因や動物病院を受診すべき症状、家庭での対処法、治療方法、予防法について解説します。

目次


子犬の下痢の主な原因


子犬の下痢は、食事の変化やストレスといった一時的なものから、感染症や異物の誤飲など、早急な治療が必要なものまでさまざまです。子犬の下痢の主な原因について詳しく見ていきましょう。

食事の切り替え・食べすぎによる消化不良

子犬は消化機能が十分に発達していないため、フードの急な切り替えや食べすぎによって消化不良を起こし、下痢をすることがあります。新しいフードが体質に合わない場合や、一度に多くの量を食べた場合にも便が軟らかくなることがあります。


子犬を迎えた直後は、ペットショップやブリーダーのもとで食べていたものと同じフードを与えるのが望ましいかもしれません。別のフードへ変更するときは、これまでのフードに新しいフードを少しずつ混ぜ、一般的には1週間程度かけて割合を増やしていくことで下痢の発生を抑えられることがあります。


また、おやつの与えすぎや、人の食べ物を与えることも下痢の原因になります。家族間で与えたものと量を共有し、管理することが大切です。

環境の変化によるストレス

子犬は環境の変化に敏感です。新しい家庭へ迎えられた直後のほか、引っ越し、長時間の留守番、来客、騒音などがストレスとなり、自律神経や腸の働きに影響して下痢につながることがあります。


環境の変化による下痢であれば、新しい生活に慣れるにつれて数日以内に落ち着くケースもあります。子犬が安心して休める静かな場所を用意し、必要以上に触ったり遊ばせたりせず、十分な睡眠を取らせましょう。ただし、症状が続く場合や悪化する場合は感染症など他の原因も考えられるため早めの受診が必要です。

ウイルス・細菌・寄生虫による感染症

子犬の下痢では、ウイルスや細菌、寄生虫による感染症にも注意が必要です。特に犬パルボウイルス感染症や犬ジステンパーなどは、ワクチン接種が完了していない子犬で重症化する可能性があります。激しい下痢だけでなく、軽度の下痢であっても、嘔吐、発熱、食欲不振、元気の消失などを伴う場合は、速やかな受診が必要です。


また、子犬では回虫、コクシジウム、ジアルジアなどの寄生虫感染も珍しくありません。感染すると、下痢や嘔吐、腹部の膨らみ(回虫感染の場合)、体重が増えにくいなどの症状が現れることがあります。


母犬や兄弟犬から感染するケースもあり、家庭へ迎え入れた時点ですでに感染している可能性もあります。

異物の誤飲・誤食

好奇心旺盛な子犬は、目についたものを口に入れてしまうことがあります。おもちゃの破片、ボタン、布、靴下、紐などを飲み込むと、胃腸が刺激されて下痢や嘔吐を起こすほか、腸閉塞につながる可能性があります。


また、観葉植物や薬品、人の食べ物にも注意が必要です。ネギ類やチョコレート、ブドウ・レーズン、キシリトールを含む食品など、犬が食べると中毒を起こすものがあります。ゴミ箱や食品は子犬の届かない場所で管理しましょう。


異物を飲み込んだ可能性がある場合は、元気に見えても自己判断で様子を見たり、無理に吐かせたりしてはいけません。異物の種類や大きさによって対応が異なるため、何をいつ、どのくらい飲み込んだ可能性があるのかを伝え、速やかに動物病院を受診してください。受診までは異物が排出されたかどうか、毎日の便も確認しましょう。


子犬の下痢は成犬より危険度が高い


子犬は成犬に比べて体が小さく、体内に蓄えられている水分やエネルギーも多くありません。そのため、下痢を繰り返すと水分や電解質が失われ、短時間で脱水が進む可能性があります。嘔吐を伴って水分をとれない場合は、さらに注意が必要です。


また、食欲不振が続くと低血糖を起こし、ぐったりする、震える、ふらつく、意識が低下するといった症状が現れることがあります。特に月齢の低い子犬や超小型犬では、わずかな絶食でも低血糖につながる場合があります。


成犬なら一時的に様子を見られる程度の下痢でも、子犬では急速に状態が悪化し、命に関わる可能性があるため、「たかが下痢」と考えず、便の状態だけでなく、元気や食欲、水分摂取量なども確認し、早めに対応することが大切です。


子犬の下痢で動物病院を受診すべき症状


子犬に下痢が見られた場合、次のような症状を伴っているときは、できるだけ早く動物病院を受診してください。

・嘔吐を繰り返している
・血便がみられる(特に量が多い場合や繰り返す場合)
・タール状の黒い便が出ている
・ぐったりしている、元気がない
・水のような下痢を繰り返している
・食欲がなく、水も十分に飲めない
・腹部を痛がる、触られるのを嫌がる
・異物や有害な食べ物を口にした可能性がある
・ワクチン接種が完了していない

血便や黒い便は、消化管から出血している可能性を示す症状です。血便が出る原因や受診の目安については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事

犬の血便の原因と受診の目安

https://vetzpetz.jp/blogs/column/dog-blood-stool

下痢だけで元気や食欲がある場合でも、2日以上続いているときや、何度も繰り返すときは受診を検討しましょう。月齢が低い子犬の場合は、2日を待たずに動物病院へ相談したほうが安全です。

受診時には、できるだけ新しい便を清潔な容器や袋に入れて持参すると、寄生虫や細菌などを調べる便検査に役立ちます。


子犬が下痢をしたときの対処法


子犬が下痢をしたときの対処法


子犬が下痢をしたときは、便の回数や状態だけでなく、元気や食欲、嘔吐の有無なども確認しましょう。ここでは、子犬が下痢をしたときの対処法について解説します。

食事は消化の良いものを少量ずつ

食欲がある場合は、いつものフードをぬるま湯でふやかすなどして、消化しやすい状態で与えます。一度に通常量を食べさせるのではなく、少量ずつ複数回に分けることで、胃腸への負担を抑えられます。獣医師から消化器用の療法食を勧められた場合は、その指示に従いましょう。


下痢をした犬には絶食がよいといわれることもありますが、子犬を自己判断で絶食させてはいけません。子犬は体内に蓄えられるエネルギーが少なく、短時間でも低血糖を起こす可能性があります。食べない、食べても吐くといった場合は、無理に与えず、速やかに動物病院を受診してください。

水分補給と保温を心がける

下痢が続くと体内の水分が失われるため、いつでも清潔な水を飲めるようにしておくことが大切です。ただし、一気に大量の水を飲むと吐いてしまう子犬もいます。勢いよく飲む場合や嘔吐を伴う場合は、少量ずつこまめに与え、適切な量や与え方を獣医師に確認しましょう。


また、子犬は成犬に比べて体温を調節する力が十分ではありません。下痢によって体力を消耗すると体温が下がることもあるため、寝床を暖かく保ち、冷たい床やエアコンの風が直接当たらないようにします。


水を飲めない、飲んでも吐く、口の中が乾いている、ぐったりしているといった場合は、脱水が進んでいる可能性があります。


子犬の下痢の治療方法


動物病院では、下痢が始まった時期や回数、食事の変更、誤食の可能性、ワクチン接種歴などを確認します。あわせて便検査を行い、回虫やコクシジウム、ジアルジアなどの寄生虫がいないかを調べます。症状によっては、血液検査や画像検査、ウイルスの検査などが必要です。


治療方法は原因や重症度によって異なります。寄生虫感染には原因に合った駆虫薬が使用され、腸内環境の乱れには整腸剤や食事療法などが行われます。細菌感染の関与が強く疑われる場合や全身状態が悪い場合には、獣医師の判断で抗菌薬が使われることもありますが、すべての下痢に必要なわけではありません。


脱水や低血糖が見られる場合は、皮下点滴や静脈点滴によって水分、電解質、糖分などを補います。犬パルボウイルス感染症のように、激しい下痢や嘔吐を伴い、急速に状態が悪化する病気では、入院して点滴や栄養管理、感染対策などの集中的な治療が必要になることがあります。


子犬の下痢の予防法 


子犬の下痢を完全に防ぐことはできませんが、食事や生活環境を整え、感染症や誤飲への対策を行うことで、発症するリスクを減らせます。


子犬の下痢の予防法について詳しく見ていきましょう。

フードの切り替えは時間をかけて行う

新しいフードへ急に切り替えると、子犬の胃腸が変化に対応できず、軟便や下痢を起こすことがあります。最初はこれまでのフードに新しいフードを少量混ぜ、一般的には1週間から10日ほどかけて、徐々に新しいフードの割合を増やしましょう。


ただし、便が軟らかくなった場合は切り替えを急がず、元の割合へ戻して様子を確認します。下痢が続く場合は、フードが体質に合っていない可能性もあるため、獣医師に相談してください。


フードは、成長期に必要な栄養をバランスよく摂取できる「子犬用」または「成長期用」の総合栄養食を選ぶ必要があります。

サプリメント(プロバイオティクス・プレバイオティクス)を活用する

子犬の腸内環境を健やかに保つ方法として、獣医師に相談したうえでサプリメントを取り入れるのも一つの選択肢です。


プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌、エンテロコッカス菌、バチルス菌など、宿主に有益な作用をもたらすことが期待される生きた微生物を補うものです。一方、プレバイオティクスは、オリゴ糖や一部の食物繊維など、腸内の善玉菌の栄養源となり、その働きを支える成分を指します。


ただし、製品によって含まれる菌や成分、対象年齢、使用量が異なります。人用の製品を流用したり、下痢を治す目的で自己判断により与えたりせず、子犬に適した製品を獣医師へ確認しましょう。

ワクチン接種と定期的な駆虫を徹底する

犬パルボウイルス感染症や犬ジステンパーなど、下痢を引き起こし、子犬で重症化しやすい感染症の一部は、混合ワクチンによって発症や重症化のリスクを抑えられます。獣医師と相談し、子犬の月齢や生活環境に合った接種スケジュールを守りましょう。
また、子犬は母犬や兄弟犬、飼育環境などから寄生虫に感染していることがあります。見た目が元気でも感染している場合があるため、お迎え後は早めに健康診断と便検査を受けることが大切です。
寄生虫が見つかった場合は、種類や成長段階に応じて駆虫薬を使用します。一度の投薬で駆除できないこともあるため、獣医師から指示された再検査や追加投薬を忘れずに受けましょう。
犬の健康診断で行われる検査や受診の頻度については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事

犬の健康診断の内容と受診の頻度

https://vetzpetz.jp/blogs/column/dog-medical-checkup

ストレスの少ない生活環境を整える

子犬を迎えた直後は、新しい家や家族に慣れるだけでも大きな負担がかかります。かわいさから長時間遊んだり、家族が代わる代わる抱いたりしたくなりますが、まずは静かに休める場所を確保し、十分な睡眠を取らせましょう。


食事や散歩、就寝の時間をできるだけ一定にすることも、子犬の安心感につながります。留守番の時間を急に長くせず、生活環境の変化は少しずつ経験させることが大切です。


あわせて、床に落ちている紐や布、おもちゃの破片、薬、食品、観葉植物などを片付け、誤飲や誤食を防ぎましょう。


子犬の下痢についてよくある質問


子犬の下痢についてよくある質問


子犬の下痢について、よくある質問に回答します。

元気で食欲があれば様子を見てもいい?

便が少し軟らかい程度で、元気や食欲があり、嘔吐などの症状もなければ、食事量や便の状態を確認しながら短時間様子を見られる場合があります。


ただし、水のような下痢が出ている、短時間に何度も排便する、血が混じる、便の状態が悪化するといった場合は、元気に見えても受診が必要です。誤飲や感染症の初期には、はじめは元気が残っているケースもあります。


また、子犬は成犬よりも脱水や低血糖が早く進むため、「元気だから大丈夫」と判断して長期間様子を見るのは避けましょう。軽い軟便でも1~2日以内に改善しない場合や、月齢が低い場合、ワクチン接種が完了していない場合は、早めに動物病院へ相談してください。

下痢の際はごはんを抜いたほうがいい?

子犬を自己判断で絶食させるのは避けてください。成犬では獣医師の指示により一時的に食事を控えることがありますが、子犬はエネルギーの蓄えが少なく、食事を抜くことで低血糖を起こす可能性があります。


元気と食欲がある場合は、獣医師に相談したうえで、消化しやすいフードを少量ずつ複数回に分けて与えます。急に手作り食へ変更すると、かえって胃腸へ負担をかけることがあるため、いつものフードをふやかす方法や、獣医師が勧める消化器用フードを検討しましょう。

市販の薬を与えても良い?

動物病院を受診せず、市販の下痢止めや人間用の薬を自己判断で与えてはいけません。下痢は、体内に入った病原体や有害物質を排出するために起きていることがあります。原因を確認せずに腸の動きを抑えると、病原体などの排出を妨げ、状態を悪化させる可能性があります。


また、人間用の整腸剤や下痢止めは、犬に適さない成分を含んでいることがあります。人と犬では安全に使用できる成分や用量が異なり、子犬では体重が軽いため、わずかな量でも問題を起こすおそれがあります。


迷った場合は、子犬の月齢や体重、便の状態、ほかの症状を伝え、まず動物病院へ電話で相談しましょう。


まとめ 子犬の下痢は早めの受診が安心


子犬は成犬よりも生理的な調節機能が未熟なため、脱水や低血糖、低体温を起こしやすく、軽い下痢に見えても急速に状態が悪化する可能性があります。水のような便を繰り返す、嘔吐や血便を伴う、元気や食欲がない、水を飲めないといった症状がある場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。


判断に迷ったときも長時間様子を見ず、早めに獣医師へ相談することが子犬の健康を守ることにつながります。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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