【獣医師監修】猫の便秘とは?原因や対策・解消法をわかりやすく解説

2026.04.02
【獣医師監修】猫の便秘とは?原因や対策・解消法をわかりやすく解説

便は、愛猫の健康状態を把握できる重要な指標の一つです。毎日のトイレ掃除の際に、便の状態や回数、量などを観察している飼い主さんも多いでしょう。


下痢の場合は、フードの見直しや動物病院での受診といった対処につながりやすいです。しかし、対処に迷うのが便秘です。何日くらい出ないと危険なのか、自宅でできるケアや再発防止法は何かなど、愛猫の便秘に悩む飼い主さんの疑問にお答えします。

目次

 

猫の便秘を疑う目安や受診判断は?

 

健康時と比べ、排便回数や量が減り、便が腸内に長時間停滞する状態が「便秘」です。猫は、便秘の際に「しぶり」と言われる「何度もトイレに行っていきむのに排便できない、またはごく少量しか排便できない」ことが多いです。


では、猫の健康な便とはどういう状態でしょうか。個体差はありますが、一般的には下記が猫の健康な便だとされています。


  • しっかりした円筒形で、途中で切れたり分節化したような外観をしている

  • 適度な水分を含んで硬すぎず、簡単につまみ上げられる

  • つまみ上げた便の跡に、残留物がほとんど、または全く残らない

  • 茶褐色または暗褐色

  • 未消化の毛や食物繊維が残っていることもある

  • 回数は1〜3日に1〜2回程度


上記に対し、強くいきんでも水分の少なくて硬い、球またはアーモンド状の便が少量しか出ない場合は「便秘気味」、普段の排便間隔以上に排便できない場合は「便秘」が懸念されます。


個体差はありますが、下記が緊急性のある受診判断の目安と考えると良いでしょう。


  • 健康時に1日1回の排便があり、2日以上排便がなかった場合

  • 健康時に2〜3日に1回程度の排便があり、3〜4日排便がなかった場合

  • しぶりの症状がある場合

  • 元気消失、食欲不振、腹部膨満、嘔吐などの症状も見られる場合


ただし、上記以外の場合でも判断に迷うのであれば、動物病院を受診するのがおすすめです。

 

猫の便秘の原因

 

猫が便秘になる原因として多いのは水分不足ですが、それ以外にも複数あり、複雑に絡み合っている場合もあれば、単独で便秘を引き起こしている場合もあります。主な原因を挙げると、次の通りです。


  • 水分不足

  • 食事の影響

  • 運動不足・ストレス

  • 毛玉や誤飲

  • 薬の副作用

  • 病気や炎症


それぞれの原因について、個々に詳しく解説していきます。

水分不足

体内の水分が減ると、便が乾燥して硬くなり、直腸や結腸を通過しづらくなり、猫がいきまなければ排便できなくなります。猫の場合、便の水分が減る原因として真っ先に考えられるのが、水分不足です。


砂漠地帯に住んでいた猫の祖先(リビアヤマネコ)の習性を受け継いでいるため、猫は元々あまり積極的に水を飲もうとしない傾向があります。そのため、体内の水分が不足しがちで、便も硬くなりやすいのです。

また、高齢の猫に多い慢性腎臓病では尿が多量に酸性・排泄されるため脱水しやすい状態になる傾向があり、便秘になりやすいとされています。

食事の影響

キャットフードの種類を変えた、キャットフードをやめて手作り食に変えた(またはその逆)など、食事の内容を変えた場合、それが原因で便秘になることがあります。


消化不良は、腸内の水分バランスや通過時間に影響し便秘につながることがあります。シニア期の猫に見られる便秘は消化機能低下の影響であることもあります。また急に食事内容を切り替えると、食べ慣れない食材が消化不良になり便秘になることもあります。


ウェットタイプとドライタイプでは、水分含有量が異なります。ウェットタイプ中心からドライタイプ中心に変更すると、食事からの水分摂取量が減るため、水不足となり便秘を引き起こすこともあります。


食事中の食物繊維の種類の変化も、繊維の種類によっては水分保持性が異なり、便の水分量と固さに直接影響するため便秘の原因になることがあります。特に不溶性食物繊維は便容量を増加させ、大腸を刺激して運動性を高めますが、水分含量を低下させるため、過剰だと便が固くなる可能性があります。可溶性食物繊維の過剰摂取はどちらかというと便が柔らかくなりすぎることが多いですが、場合により腸内環境の乱れから便秘につながる場合もあります。

運動不足・ストレス

意外かもしれませんが、運動不足やストレスも、便秘の原因になります。運動は大腸の蠕動運動を促進する役割があるため、活動量の低い猫は腸管の運動が低下して便の停滞時間が延びることで便が硬化し便秘に繋がりやすいことが報告されています。ストレスは自律神経のバランスを崩し、腸の運動が低下することで便秘に関する要因となる可能性についても報告されています。


完全室内飼育で、あまり飼い主さんが一緒に遊んであげられないような生活の猫は、運動不足になりがちです。また、部屋の模様替えや引っ越し、家族の増減、生活時間の大きな変化やトイレが汚れているといったことが、猫には大きなストレスになります。環境に変化が生じた場合の愛猫へのケアや、トイレのこまめな掃除などが大切です。

毛玉や誤飲

消化管内に消化できないものや便の通過を妨げるような異物が入り込んで消化管を詰まらせてしまうと、食物が消化管を通れなくなるため、便の停滞時間が長くなり便秘が引き起こされることがあります。消化できないものの例として猫に多いのが、グルーミングで飲み込んでしまった自分の毛です。


飲み込んで胃に溜まった毛は、一般的には毛玉となって吐き出されたり、便と一緒に排出されます。しかし大量に飲み込んだ場合やうまく排出できなかった場合に腸に詰まり、便秘を引き起こすことがあります。


また室内に落ちているボタン、小さな部品や猫自身が食いちぎった布の切れ端などを飲み込み、腸に詰まらせることもあります。こまめなブラッシングで飲み込む抜け毛の量を減らしたり、室内の清掃や整理整頓で異物誤飲のリスクを減らすことが大切です。

薬の副作用

一部の鎮痛薬や利尿薬などの副作用で、便秘が起こることがあります。特に一部の鎮痛薬は腸の運動を抑制しやすく、便秘の典型的な原因とされています。その他鎮静作用のあるお薬や抗ヒスタミン薬も腸の運動を低下させることがあり、利尿剤は脱水を助長することで結果として便が固くなり便秘の原因となることがあります。


処方された薬は、獣医師の指示に従って飲ませることが大切ですが、万が一愛猫の便秘の原因として薬の副作用に思い当たる節がある場合、特にお薬の摂取開始後以降に便秘が48時間以上続く場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

病気や炎症

猫は、巨大結腸症と呼ばれる「結腸の拡大と運動低下が引き起こされ、慢性的な便秘が続く」状態になることがあります。この状態を引き起こす原因は、骨盤骨折・大腸や肛門の腫瘍・神経損傷・脊髄腫瘍・結腸の神経機能障害などさまざまです。猫の場合、これらの病気を引き起こす原因が不明で特発性の場合も多いと言われています。


また、排便姿勢を取ったりいきんだりする際に、体に痛みを感じて力を入れられなくなるようなケガも、便秘を引き起こす原因になり得ます。

 

猫の便秘の治療法

 

猫の便秘の治療法

 

猫が便秘になった場合、原因によっては食事を元に戻す、飲水量を増やす工夫をするといったご自宅の対応で解決できることもあります。しかし、何日も便秘が続く、便秘が治ってもすぐに再発するといったような場合は、動物病院での治療が必要になります。ここでは、動物病院で行われる便秘の治療法について解説します。

 

下剤・浣腸・摘便などの処置

動物病院でまず最初に行われる処置は脱水の有無の確認と必要に応じた水分の補給です。加えて、必要に応じて浣腸や手技による物理的な便の除去を行うことがあります。緊急性の低い場合は下剤や腸管の運動を促進する薬が処方されることもあります。

極めてまれですが、巨大結腸症が重度の場合に最終的な治療選択肢として外科手術が提案されることもあります。

また、再発防止として、高繊維食、便軟化剤、容積性緩下剤などが処方されることもあります。

病気の治療    

便秘の原因として病気やケガがある場合、腸内に溜まった便塊を摘出した後に、その病気やケガの治療を開始します。病気やケガに対応して、それぞれ適切な治療を行いながら、猫が排便しやすくなるよう、消炎鎮痛剤などを投与することで痛みを抑えます。


病気やケガによっては内科的治療だけでは治療できず、骨盤再建や腫瘍摘出、自然排出できなかった異物の摘出などのために、手術が必要となる場合もあります。猫の巨大結腸症は、骨盤再建や腫瘍の摘出などが適切に行われることで改善することもあります。

 

自宅でできる猫の便秘解消法

 

愛猫が便秘になった場合に、飼い主さんが自宅でできるケアについてご紹介します。便秘気味だと感じた時点で解消法を試み、それでも改善しない場合は動物病院で受診することをおすすめします。またこの解消法は、便秘の再発防止や予防としても有効です。

水分摂取量を増やす

日常的に取り入れたいのが、しっかりと水分を補給させることです。猫は積極的に水を飲もうとしない傾向があるため、愛猫の性格や習慣を把握した、飼い主さんの適切な工夫が大切です。


(1) 食事による水分摂取量の増加

ウェットフードの利用、ドライフードに味付けをしていない鶏肉や魚の茹で汁をかけるなどで、食事から水分をより多く摂取できるようにします。


(2) いつでも水が飲める環境の用意

猫の行動範囲の中に、水飲み場を複数設置することで、いつでもどこでも、猫が飲みたい時に水が飲めるようにします。


(3) 飲水意欲の向上:水の種類

猫により、好む水の種類が異なります。最も大切なのは、こまめに水を取り替え、常に新鮮で清潔な水が飲めるようにしておくことです。合わせて、水の種類も、水道水・ミネラルウォーター(ただし軟水に限る)・白湯・鶏肉や魚の茹で汁(ただし味付けしない)・猫用経口補水液など、愛猫の好みを見つけましょう。


(4) 飲水意欲の向上:容器の素材

容器の素材によっても、飲水量が変わることがあります。プラスチックやステンレスの容器より、陶器やガラスの容器を好む傾向が高いと言われています。さらに、電動で容器内の水を循環させた、流れる水を好む猫もいます。

食事内容の見直し

排便を促す成分を含んでいる食事内容に見直すという方法もおすすめです。できるだけ消化しやすいものや、体質に合った食物繊維を含んでいるフードを選ぶと良いでしょう。


ただし、食事内容を変更する場合は、今までのフードをいきなり新しいフードに完全に切り替えてしまうのではなく、今までのフードに少しずつ新しいフードを混ぜていき、7日以上をかけて切り替えていくようにしましょう。


また、腸内環境を整える効果が期待できる、乳酸菌などを含む猫用のサプリメントを活用し、腸内環境の改善や食物繊維の補給を継続的に行う方法も、検討の価値があるでしょう。ただし、サプリメントと投与中の薬剤との相互作用等、考慮すべきリスクもあるため、必ずかかりつけの獣医師と相談してください。


同様に、獣医師に相談せず、自己判断でオリーブオイルや人用の下剤を飲ませることも、絶対にやめましょう。

運動量・生活環境の改善

完全室内飼いで、留守番時間が長い猫は、運動不足になりがちです。飼い主さんの在宅時は、できるだけ一緒に遊ぶ時間を作り、猫が積極的に運動するように促しましょう。


飼い主さんが猫じゃらしなどのおもちゃやボールなどを上手に操り、小動物のように動かすと、猫は狩猟本能が刺激されておもちゃを追いかけ、捕まえようとします。この狩ごっこを1日に数回行ったり、棚の上を開放したりキャットタワーを設置したりして、高い場所に自由に上り下りさせることで、猫の運動量を確保できます。


また猫は、汚れたトイレを使いたがらず、排泄を我慢してしまう傾向があります。トイレは最低でも猫の頭数+1個を用意し、こまめに掃除をして常に清潔な状態で使えるようにしておきましょう。


他にも、騒音・部屋の模様替え・家族の増減・来客など、猫が苦手とする刺激や変化をできるだけ避ける、または慣らすようにして、ストレスができるだけ少なくなるようにしましょう。

 

猫の便秘についてよくある質問

 

最後に、猫の便秘についてよく寄せられる質問をご紹介します。愛猫の便秘管理の参考にしてください。

そもそも便秘とはどのような状態?

獣医学的な共通認識としての定義は、「固く乾いた便が大腸内に長時間とどまり、排泄が少ないまたは困難な状態」となります。



猫の排便状況は個々の猫によって異なるため、愛猫の健康時の排便状況と比較し、量や頻度が減っていないかを確認する必要がありますが、一般的な目安としては、便の出ない日が3日以上続いた場合は受診を考えた方が良いでしょう。ただし、食欲の低下や嘔吐などが見られる場合はすぐに受診しましょう。


また、極度に乾燥して硬くて小さい便しか出ない場合や、何度もトイレに行っていきむのに便が出ない場合は、便秘の可能性が高いと考え、注意する必要があるでしょう。

老猫は便秘をしやすい?

猫の場合、若い頃よりもシニア期以降の方が便秘になりやすいというイメージがあるのではないでしょうか。実際、加齢に伴って便秘がちになる猫は増えていく傾向があります。


老猫が便秘になりやすい理由として、下記の要素が影響していると考えられます。


  • 加齢により生じる関節不調や筋力低下による足腰の痛みによる排便困難

  • 加齢による消化器の機能低下による消化不良

  • 運動量の減少に伴う運動不足

  • 食欲低下に伴う食事量および水分摂取量の減少

  • 慢性腎臓病など高齢化に伴う持病による脱水症状


老猫の場合も基本的には変わらず動物病院に相談し、判断を仰ぐようにしましょう。

 

まとめ 猫の便秘は観察が大切

 

まとめ 猫の便秘は観察が大切

 

猫の便秘に関して、判断基準や原因、動物病院での治療法、自宅でできるケア方法について解説してきました。


便は、健康状態、特に消化器系統の状態を把握できる大切な指標の一つですが、食事内容や量、その猫の体質などにより、健康時の状態にも大きな差があります。そのため、例えば「2日排便がなければ便秘である」などの明確な定義はできません。


そこで大切になってくるのが、健康時の便の状態や量、頻度を把握しておくことです。トイレ掃除の際に、愛猫の便の形状・硬さ・色・ニオイ・量や排便頻度などをよく観察し、把握しておきましょう。


変化が見られた場合は、より注意深く観察し、便秘などの体調不良が疑われたら、できるだけ速やかに動物病院で診察を受け、適切な治療を早期に開始できるようにしましょう。日頃の観察が、愛猫の健康を細やかに管理する秘訣です。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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