老猫が吐く理由は? 病院につれていくべき?

2023.04.08
老猫が吐く理由は? 病院につれていくべき?
もともと猫は吐くことの多い動物です。生理的な現象のひとつなので、吐いたからといって慌てる必要はないのですが、老猫が吐いた場合はちょっと気をつけて様子を見てあげてください。もしかしたら体調不良や病気が原因となっている可能性があるからです。ここでは、飼い主さんにとって迷いどころとなる、動物病院を受診するべきかどうかも含め、老猫が吐いた際の対応についてお伝えします。
目次



老猫が吐く理由


猫は、年齢を問わずよく吐く動物です。毛づくろいをしたときに飲み込み、おなかにたまってしまった毛玉を吐く、草を食べて吐くなど、基本的には胃の調子を整えるための生理的な現象で、人間が吐くのとは違った意味を持っています。
しかし、それ以外の理由で吐くこともあるので、老猫の場合は少し注意が必要です。

理由のひとつとして考えられるのは、食事内容が合わなくなっていること。猫のフードは、年齢ごとに食べやすい工夫がされていますが、若いころの食事をそのまま続けていると、年齢を重ねた老猫の体に合わず、吐いてしまうことがあります。というのは、猫が食べ物を丸のみするという習性を持っているから。年を取ると、唾液や食道の分泌液が減るため、丸のみしたフードが、喉や食道に詰まりやすくなってしまうのです。特に、早食いをしたり食べ過ぎたりする傾向のある老猫によく見られます。

若いころから食事内容を変えていないという場合は、フレークの細かいものに変更したり、お湯やスープでふやかしたり、喉を通りやすくしてあげましょう。愛猫に早食いや食べ過ぎの傾向が見られるなら、早食い防止の食器を利用する、食事を小分けにするといったことも対処法のひとつです。

ただし、食事を変更してから吐くようになった場合はアレルギーが原因となっている可能性もあります。思い当たる節があるときには、食事を元に戻して様子を見てみてください。

じつは猫は、空腹でも吐くことがあります。吐いた内容物が白い泡、あるいは黄色い液体のみのときは、その可能性が高いといえます。白い泡の正体は胃液、黄色い液体の正体は胆汁です。食事をして吐き気がおさまり元気になったのであれば、空腹で吐いたのかもしれません。

そのほかにも、老化によって消化機能が低下したために吐くこともあります。また、老猫に多い甲状腺機能亢進症などの病気が原因で吐いてしまうことも。体の機能の変化は、老猫ならではの注意点ともいえます。

老猫が吐く原因として考えられる病気


老猫が吐く原因となりうるおもな病気について取り上げてみました。
胃腸炎
腫瘍ができるなど、消化の要である胃腸に炎症が起きる病気です。本来の消化機能がうまく働かなくなるため、吐いてしまうことがあります。
腎臓病
慢性的な腎臓病を抱えている老猫の場合、腎臓病が進行して、体内の老廃物や毒素を排出できなくなることに加え、尿毒症などを併発することも。体の中の水分バランスも崩れ、嘔吐が見られるようになるケースもあります。
膵炎
膵炎は、消化液を分泌する膵臓に炎症が起きる病気です。食べた物の消化がうまくできなくなってしまい、吐くという行為につながります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は老猫に多く見られる病気で、甲状腺ホルモンの異常が原因です。初めのころは食欲が増します。ただ、いくら食べても体重が増えず、痩せていくことがこの病気の特徴です。やがて食欲は落ちていくのですが、吐き気を感じるようになり、吐くシーンが増えてくるとされています。
腸閉塞(ちょうへいそく)
飲み込んでしまった異物など、腸に何かが詰まってしまう病気が腸閉塞です。異物は便に混ざって排出されることもありますが、年齢とともに消化管の働きが衰えると、うまく排出されずに詰まってしまうことがあります。食べたものが腸を通過できないため、吐いてしまうのです。

老猫が吐いた場合すぐに病院に相談するべき?


さて、飼い主さんにとっていちばん気になる「老猫が吐いたら、すぐに動物病院を受診するべきなのか」について考えてみましょう。

年齢により体の機能が衰えている老猫の場合は、病気が隠れている可能性も考えて、できれば動物病院を受診したほうが飼い主さんにとっても安心ではないでしょうか。ただ、繰り返し吐くわけではない、吐いたけれど食欲はあるし元気もある、体重も変化がないというのであれば、電話対応をしている獣医師に相談し、アドバイスをもらいながら自宅で様子を見るというのも選択肢のひとつです。

また、猫によっては動物病院を嫌がったり、そもそもキャリーバッグに入れられることに激しく抵抗したりする場合があります。動物病院を受診することがかえって愛猫の負担になってしまう恐れもありますので、そういった際にも電話相談などを利用するといいでしょう。


老猫が吐くと、飼い主さんとしては心配になりますが、吐いた様子や内容物をよく確認して、適切な対処ができるよう心がけましょう。不安なことがあれば動物病院を受診した方がいいですが、愛猫に負担がかかりそうなら電話相談という方法もあります。長く家族の一員として過ごしてきた老猫を、どうぞしっかり見守ってあげてくださいね。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許




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