【獣医師監修】猫のご飯量はどれくらいがベスト?足りない時のサインについても

キャットフードの袋には、給餌量が記載されています。それを守っているのに、太りすぎだと指摘されたり、食べ足りないと猫からご飯をせがまれたりして、困惑することはありませんか。また手作り食をあげたい飼い主さんなら、適切なご飯量の求め方を知りたいことでしょう。猫のご飯量は、成長速度や活動量が異なるライフステージを意識する必要があります。
いつまでも元気に過ごしてもらうための、適切なご飯量について解説します。
- 目次
猫の適切なご飯量は?
食事管理は健康管理の基本です。完全肉食動物の猫が必要とする栄養は、人と同じ食事からでは十分に摂れません。しかし、良質な猫専用のフードが容易に入手できる現在の猫の食事管理では、栄養管理よりもご飯量の管理の方が、深刻な問題になってきています。万病のもととも言われている、肥満の猫たちが増えてきているからです。
必要なご飯の量は、育ち盛りの子猫や活発な成猫、活力が衰えてきたシニア猫など、ライフステージによって異なります。まずは、子猫と成猫の適切なご飯量の概要について、見ていきましょう。
子猫の場合
通常子猫を迎え入れる場合は生後8週齢を過ぎているため、離乳食が終わり徐々に固形のフードに切り替える頃になります。猫は生後約4ヶ月で成熟時の半分ほどの体重になり、10〜12ヶ月で成熟します(メインクーンなどのいくつかの猫種では成熟に15ケ月を要することもあります)
。この時期は、とにかく成長を促し、健康な成猫に育てることが最重要課題となります。
ただしこの時期の成長速度はオスとメスで大きく異なり、一般的にメスの子猫はオスの子猫よりも成長が遅いのが普通です。多頭飼育をしている場合、性別による成長度合いの違いは、あまり心配する必要はありません。
成長期のエネルギー不足は大問題ですが、エネルギーの過剰摂取も問題です。というのも、成長期にエネルギーを過剰に摂取すると、脂肪細胞の数を増やしてしまうからです。成熟後の肥満は脂肪細胞が大きくなることが原因で、これは食事管理によって元に戻せます。しかし、増えてしまった脂肪細胞の数は、減らすことができません。そのため、成長期には、エネルギーの過剰摂取に十分に気をつけた上で、しっかりと食べさせることが大切です。
子猫用のフードの袋に、必ず1日の給与量の目安が表示されています。月齢と体重によって目安量が設定されていますので、こまめに体重を量りながら、必要な量を食べさせるようにしましょう。
成猫の場合
成猫になったら、成猫用のフードに切り替えましょう。基本的には子猫の時と同じように、フードの袋に記載されている1日の給与量目安にしたがって与えます。ただし、活発な猫、あまり動かない猫や避妊・去勢手術をした猫、妊娠期や授乳期の猫など、それぞれの状態や性格によっては、目安の量では多過ぎたり少な過ぎたりする場合があるため注意が必要です。
基本的に、1歳を過ぎた成熟した猫は、体重に変化が見られないのが理想です。1歳の誕生日を迎えた時の体重を覚えておいて、その体重がその子の理想体重だと考えましょう。目安量を与えながら定期的に体重を量り、体重の変化に合わせてしっかりと管理しましょう。主食には必ず総合栄養食を与え、おやつを与える場合には、多くても1日の摂取カロリーの20%までに抑え、おやつで摂取したカロリー分を1日摂取カロリー分から差し引いたカロリーを総合栄養食で与えるようにコントロールしてください。
また妊娠期や授乳期の猫には、栄養面から考えて、その時期の猫用に設計されているフードを与えましょう。
猫の体重から適切なご飯量を計算する方法

基本的に総合栄養食のキャットフードを食べさせる場合には、袋に記載されている給与量の目安にしたがいながら、愛猫の体型や体重の変動に合わせて適宜調整していきます。ヒトでも太りやすい人、太りにくい人がいるように、猫でも同じことが言えます。一番の目安は体重です。体重管理をしながら、その子にあった給与量を調整します。
しかし、手作り食にも挑戦したいといった飼い主さんもいらっしゃると思いますので、猫の体重をベースに適切なご飯の量(エネルギー量=カロリー)を算出する方法をご紹介します。
手順1:猫の理想体重を把握しておく
体が大きければ必要なエネルギー量も多くなり、体が小さければエネルギー量は少なくてすみます。そのため、必要なエネルギー量を求めるためには、まず愛猫の理想体重を知ることが大切です。
よほどのことがない限り、1歳になったばかりの頃の体重が、その子の理想体重です。ですから、愛猫が1歳になった頃の体重の記録が残っている場合は、それを理想体重と設定しても問題ないでしょう。
記録が残っていない場合は、現状の愛猫の体型が標準なのか、または標準からどのくらい外れているのかを見定める必要があります。この時に基準となるのが、BCS(ボディ・コンディション・スコア)です。BCSとは、痩せている体型から肥満体型までを5または9段階に分けて評価するための基準で、多く使われているのが5段階評価方式のBCSです。
標準体型をBCS3とし、この体型に当てはまっている場合は、ほぼ理想体重(95〜106%)、BCS2が体重不足(86〜94%)、BCS1が削痩(85%以下)、BCS4は体重過剰(107〜122%)、BCS5は肥満(123〜146%以上)とされています。この数値をベースに現在の愛猫の体型から理想体重を算出します。
BCSには犬用と猫用があり、環境省のサイト等に掲載されています。こちらの資料では、猫を真横と真上から見たイラストと共に、言葉で判断基準が記載されていますので、絵と言葉を元に、愛猫の体型を判定すると良いでしょう。
最初は、動物病院でかかりつけの獣医師と一緒に判定してもらうと、より正確に判断できます。
手順2:「(30 × 体重 + 70)× 係数」で計算
愛猫の体重から、1日に必要なエネルギー量(カロリー数)を算出する場合、下記の簡易計算式を使います。
【簡易計算式】
1日に必要なカロリー数(kcal)=(30 × 体重(kg) + 70)× 係数
*主な係数
・避妊・去勢していない成猫=1.4
・避妊・去勢済みの成猫=1.2
・肥満傾向=1.0
・高齢=1.1
・妊娠中=2.0
・授乳中=2.0〜6.0
・4ヶ月齢未満=3.0
・4〜6ヶ月齢=2.5
・7〜12ヶ月齢=2.0
【計算例】
①体重4kgの避妊・去勢していない成猫の場合
(30 × 4(kg) + 70)× 1.4 = 266kcal
②体重5kgの高齢猫の場合
(30 × 5(kg) + 70)× 1.1 = 242kcal
③体重6kgの肥満傾向の猫の場合
(30 × 6(kg) + 70)× 1.0 = 250kcal
計算式の体重を、理想体重に置き換えれば、理想体重にするために必要なカロリー数がわかります。ただし、いきなり給与量を減らしたり増やしたりするのは健康に良くありませんので、時間をかけて少しずつ量を調整し、理想体重に近づけていきましょう。
なお、より厳密なカロリー数を算出したい場合は、下記の計算式を使います。
【厳密な計算式】
1日に必要なカロリー数(kcal)=(70 × (体重)^0.75)× 係数
(体重)^0.75(0.75乗)は、√(ルート)キーのついている電卓を使って下記のように求めます。
(体重が4kgの場合)
①4 × 4 × 4 = 64 (4の3乗を求める)
②√ √ = 2.82842712 (√キーを2回、=キーを1回押す)
③細かな数字は四捨五入しても大丈夫です。ここでは2.8としましょう。
(体重)の0.75乗が2.8と計算出来ましたので、元の式(70×(体重)0.75)×係数に当てはめると、体重4kgの避妊・去勢していない成猫の場合 70×2.8×1.4≒274kcalとなります。))
年齢ごとの正しいご飯の与え方
ここまで、目安となるご飯の量についてお伝えしました。以下では、もう少し詳しく、年齢ごとの正しいご飯の与え方についてお伝えします。
生後1ヶ月まで
この時期は哺乳期のため、基本的には母乳を飲んで過ごします。
特に出産後24〜72時間以内に出る初乳は、母猫が持っている免疫力を受け継がせるためにとても重要です。この時期は体重が1日当たり約10~30gずつ増えていきます。体重の変化が栄養状態や健康状態の参考になることがあるため、定期的に測定するようにしましょう。
何らかの事情で母猫の母乳を飲めない場合は、市販の子猫用ミルクを温めて飲ませましょう。
子猫用のミルクと市販の牛乳では成分が異なります。市販の牛乳だと上手く消化できないため、必ず子猫用のミルクを飲ませましょう。また、子猫だけでなく成猫も牛乳は消化しにくく、下痢等の原因になることがあるため、与えないようにしましょう。
生後1ヶ月~3ヶ月
離乳期に入ったら、ウェットフードやペースト状のフード、ぬるま湯でふやかしたドライフードなどの、柔らかくて飲み込みやすいフードに切り替えていきます。子猫の乳歯は生後6週間ごろには生えそろいますが、消化器官は発達途中で未熟ですので、硬いものを与えると消化不良の原因になる可能性があるので避けましょう。
最初は、これらの離乳食にこれまで与えていた粉ミルクなどを混ぜて与えると、スムーズに食べてくれることが多いです。離乳食を十分食べない場合は、栄養不足を防ぐためにミルクは満足するまで与えるようにしてください。
また、この時期はまだ消化器官が発達途中のため、少量を複数回に分けて与えてください。ご飯の回数は1日3〜4回を目安にしましょう。空腹時間が長時間続くと低血糖でショック状態を引き起こすことがあるため、気をつけてください。
生後4ヶ月~12ヶ月
成長期のこの時期は、骨や筋肉、内臓などが急激に発達するため、体重当たりのエネルギーや栄養素の必要量が成猫よりも多くになります。そのため、成長期の猫用に設計された総合栄養食を与えるようにしましょう。
猫の習性上、食事を少量ずつ何度も食べるケースがあります。与えた食事を残している場合は、5か月齢くらいまでは1日4~5回に分けて与え、体重がある程度落ち着く6カ月齢を目安に1日2~3回に調整していきましょう。
また、一度にたくさん食べてしまって吐き戻す場合には、1日3〜4回程度に分けて食べさせると良いでしょう。
1~6才(成猫)
この時期からは、成長期と異なる栄養バランスが求められます。成熟した体を健康な状態に維持できるよう、ステージに応じた適切な総合栄養食など、バランスの良い食事を与えましょう。
気をつけたいのは、肥満の防止です。おやつのあげすぎには十分な注意が必要です。肥満は万病のもとになる可能性がありますが、体が重くなることで運動量が減り、ますます体重が増えていくという悪循環を形成することもあります。
食事管理と合わせて毎日適度に運動させることで、太らせないようにすることも大切です。猫はおうちの中で上下運動が良いと言われています。キャットタワーなどを利用して、猫が運動できる環境やおもちゃによる遊びを取り入れましょう。
また、水分の摂取も大切です。常に新鮮な水が飲めるように環境を整えてあげてください。
7歳以降からは徐々に健康に問題を抱える猫も増えてくる傾向があります。獣医師のアドバイスに従い、状態に応じた適切なごはんをあげるようにしましょう。
7才以降(シニア)
シニア用のフードは7歳~になっているものもありますが、ここでは11歳で区別することにします。高齢期になると、関節や脳、心臓、腎臓などに問題を抱える猫が多くなるだけでなく、栄養の消化機能が徐々に低下し、特に脂肪とタンパク質の消化吸収において消化管への負担が増加する可能性が報告されています。
消化をしやすくしたり、筋肉が落ちるのをなるべく防いだりなど、シニア期の猫の体の変化に合わせた栄養バランスや食べやすいフードに切り替えましょう。特に、以下に挙げる高齢期のサインがみられる場合は、動物病院を受診し、適切なフードやサプリメントについても相談してみるといいかもしれません。
・階段や段差の上り下りやジャンプなどをしなくなった
・排泄の場所を間違える、ウロウロすることが多くなるなどの日常行動の変化がみられる
・食事量の変化なしにみられる体重の増減
・被毛の艶や質の変化、毛玉の増加
加齢の進み具合はそれぞれの猫によって異なりますので、かかりつけの獣医師等と相談しながら適切なタイミングを図りましょう。
猫のご飯量が足りない時のサイン
飼い主さんの食事を欲しがったり、フードをしまっている戸棚の前に座って飼い主さんに向けてニャーニャーと鳴いてアピールしたりすると、「ご飯が足りなかったのかな」と思ってしまうかもしれません。
しかし猫がご飯を欲しがるのは、必ずしもお腹が空いているとか、必要なエネルギーが足りていないという場合だけとは限りません。退屈やストレス、飼い主さんにかまってもらいたいなどの理由から、ねだっていることもあるのです。
本当にご飯が足りない場合は、毛艶が悪くなってきた、痩せてきた、元気がなくなってきたなどの、愛猫の様子や行動の変化がサインになります。またその際に、少しでも体調が悪そうな兆しが見られた場合は、できるだけ早く動物病院で診てもらうことをおすすめします。
猫のご飯を与える時の注意点

それでは最後に、猫にご飯を与える時の注意点について整理します。ご飯の量だけではなく、タイミングやフードの変更、おやつなど、注意すべきことをご紹介していきます。
ご飯をあげる時間やタイミングも重要
猫は元々、獲物となるネズミなどが活発に活動する夕方や明け方といった薄暗い時間帯に活発に活動する薄明薄暮性であり、その活動の時間帯で狩りに成功した時に少しずつ食べる習性をもつ動物ですので、ご飯を出された時に出された分を食べるようにするためには習慣づけが必要なことがあります。ご飯をあげる時間やタイミングは、飼主さんのライフスタイルに合わせて、ある程度決めておくのが理想的です。成猫の場合は1日2回(朝・夕)にすると、仕事がある方も都合がつけやすい方が多いのではないでしょうか。ただし、ライフスタイルは飼主さんによって異なることもあると思いますので、必ずしも朝と夕でなければいけないわけではありません。大事なのは、決まった時間にご飯を与えることです。
決まった時間にご飯を上げることが難しい場合もあると思いますが、その場合は自動給餌器の使用も検討してみましょう。急な用事で外出時間が長くなる場合や1度の摂取量が少なくご飯の回数を増やさないといけないが、お仕事で外出のためあげることができないといった状況に便利なアイテムです。最近ではスマホで遠隔操作できるものやウェットフードに対応したものもあります。
また、場合によっては置き餌を検討される飼主さんもいらっしゃると思います。
置き餌に関しては賛否両論がありますが、以下の4点を注意することで場合によっては試してもいいかもしれません。
① 鮮度や腐敗に注意する
② 器を清潔に保つ
③ 1日のトータルでの摂取量がわかるようにする
④ 夏の暑い時期の腐敗には特に注意する
特に衛生面に注意が必要ですので、ウェットフードを与えている場合は、置き餌は適していないかもしれません。
猫にご飯を与える時間帯や回数、間隔などについての詳細は、こちらの記事も参考になります。
- こちらの記事もご参考してください
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【獣医師監修】猫のごはんは何時がベスト?回数やタイミングについて解説:
https://vetzpetz.jp/blogs/column/cat-food-time
ご飯を変える時は徐々に慣らす
愛猫のライフステージが変わったり、病気で療法食に切り替える必要ができたり等、愛猫にいつまでもずっと同じフードを食べ続けさせることはできません。フードを切り替えなければならない時に苦労することがあるのが、切り替え方です。
いきなりフードをすべて新しいものに変えてしまうと、警戒してなかなか口をつけてくれないこともありますので、今まで食べさせていたフードに2割程度ずつ混ぜていき、少しずつ慣らしていきながら切り替えるようにすると、切り替えがスムーズにいくことがあります。
もしくは、新しい食事とこれまでの食事を別々の器に並べて置いて、猫に選ばせて徐々に変更していく方法もあります。今までの容器に新しい食事、新しい容器にこれまでの食事を入れておきます。これまでの食事を好む場合もありますが、馴染みのある今までの容器から新しい食事を少しずつ食べてくれることもありますので、うまくいったらこれまでの食事を下げて新しい食事に切り替えていきます。
また、新しい食事を電子レンジで40℃程度(狩りの獲物の体温)に温めたり、におい付けする方法もありますので、必要に応じて試してみてください。
おやつの量も考慮する
猫を犬のようにトレーニングするのは難しいですが、爪とぎなどは、おやつを上手に使うことで、猫専用の爪とぎ器などの正しい場所での爪とぎを覚えさせることができることがあります。
この時に気をつけなければならないのが、おやつのあげ方です。ご褒美に使うおやつなので、優先するのは猫の嗜好性になりますが、欲しがるままに与えてしまうと、栄養のバランスを崩し、肥満の原因にもなる可能性があるため、健康に良くありません。おやつは1回の量を少量に抑え、1日に摂取する総カロリーの1〜2割の範囲に収まるようにしましょう。
また、主食の食事とおやつのすべての摂取カロリーが、1日に必要なカロリーを上回らないように、きちんと計算しながらおやつを使うようにしてください。
まとめ 適切な食事管理で愛猫の健康を保とう
食事管理は、愛猫の体を作り、いつまでも健康に暮らしてもらうためには欠かせない飼い主さんの役割の一つです。
良質で栄養バランスの取れたキャットフードが簡単に入手できるようになった現在では、栄養バランスに関する管理よりも、適切なご飯の量を管理することの方が、より重要性を増してきています。
猫にとって必要となるエネルギー量は、体重をベースとした計算で求めることができますが、実際にはその猫のライフステージや性格、活動性などによって個別の調整が必要になります。かかりつけの動物病院に相談しながら、愛猫を常に観察し、適切な体型・体重を維持できるよう、しっかりと管理をしてあげましょう。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許