【獣医師監修】猫のごはんは何時がベスト?回数やタイミングについて解説

2025.03.06
【獣医師監修】猫のごはんは何時がベスト?回数やタイミングについて解説

猫の飼い方に関する多くの資料には、「猫の習性を理解した上で適切に対処しましょう」と書かれています。しかし、猫の習性すべてを具体的に解説している資料はあまりありません。


そこで、猫を迎え入れた初日から「一体何時頃に、何回に分けて食べさせるのが良いのだろう?」と食事について悩まれる方もいるのではないでしょうか。


そこで、猫の健康管理と飼い主さんとの暮らし方の双方を考慮した、猫の食事管理について解説します。

目次

 

猫のごはんは1日に2回(朝・夕)が基本



外で暮らしている猫は、自力で獲物を捕まえなければ食事ができません。猫はネコ科の中でも特に高い狩りの能力を持った名ハンターですが、狩りの成功率が高いというわけではありませんし(実際には成功率は15~50%と言われているようです)、獲物もネズミや小鳥などの小さな動物がほとんどです。


そのため、もともと一度にたくさん食べるのではなく、狩りが成功する都度、小さな獲物を食べるというのが、猫の自然な食べ方です。実際に、たくさんのドライフードをまとめて出しても、猫はガツガツと一度に全てを食べてしまうような食べ方はあまりしません(中にはすぐにぺろりと完食してしまう子もいますが・・・)。従って、ご飯を出された時に出された分を食べるようにするためには習慣づけが必要なことがあります。


また、猫の習性に合わせた食べさせ方をさせようと考えるのであれば、1日に必要な量のごはんを、複数回に分けて食べさせるのが良いことになります。しかし、仕事や家事などがあり、猫と必ずしも1日中一緒に過ごせるとは限らない飼い主さんも多いかと思います。


そのため、現実的には朝起きた後に1回、夜帰宅した後に1回の2回に分け、1日に必要な食事の量を均等に分けて食べさせるのが、基本的な食べさせ方になると考えて良いでしょう。

 

猫のごはんの適切な時間・タイミング

 

では、猫に与えるごはんを2回以上に分ける場合に、時間やタイミングをどのように考えれば良いのかについて考えてみましょう。


まず猫の習性をベースに考えてみます。薄明薄暮性の猫は、明け方や夕方の薄暗い時間帯になると、活発に行動します。この理由は、獲物となるネズミなどの小動物の活動時間帯が明け方や夕方だからです。このことから考えると、猫の食事は薄暗い明け方と夕方がベストだと言えそうです。


地域や季節にもよりますが、関東地方で言えば大体03時〜06時頃と16時〜18時頃といった感じでしょう。


猫の習性に合わせたベストなタイミングでも、飼い主さんの暮らしが成り立たなくなってしまっては続けられません。


そこで次に、飼い主さんの生活スタイルをベースに、現実的な時間やタイミングを考えてみましょう。


人間は昼行性なので、昼間に活動をして夜に休息を取ります。そのため、朝起きて仕事に出かけ、夜帰宅して就寝するのが、一般的な生活スタイルです。


つまり、一般的には朝起きて猫に1回目の食事を出し、帰宅後に2回目の食事を出すのが、最も続けやすいスタイルになります。飼い主さんにもよりますが、具体的には06時〜08時頃と18時〜20時頃といった感じでしょう。


ある程度規則性のある生活習慣が確立すると、猫は人の生活スタイルに合わせられるということが分かっています。また、猫の食事の習性とも大きくずれていないことを考えると、飼い主さんの生活スタイルに合わせた朝・夕2回の食事は、猫にも無理なく受け入れられやすいと考えて良いでしょう。


ただし、ライフスタイルは飼主さんによって異なることもあると思いますので、必ずしも朝と夕でなければいけないわけではありません。大事なのは、決まった時間に与えることを習慣化することです。

 

猫の食事回数や時間を分けたほうがいい理由

 

猫の食事回数や時間を分けたほうがいい理由

 

ここで改めて、猫の食事回数や時間を分けた方が良いという、科学的な理由についてご紹介したいと思います。

猫はごはんを少しずつ食べるから

元々野生で暮らしていた頃の猫は、狩りで小動物を捕まえて食べていました。前述のとおり、狩りの成功率は15~50%とそれほど高くはなく、成功した時にだけ少量の食事ができたというのが猫の食事スタイルでした。


猫の体もそれに適応し、1度に大量の食物を消化できるようにはできていません。ちょこちょこと少しずつ食べるのが、猫には自然なスタイルなのです。猫は他の動物に比べ食後の血糖値が下がりにくいとされていますが、恐らくこれらの食生活への適応の結果と考えられます。


猫に食事を与える回数は1日2回が基本だと説明しましたが、これはあくまでも基本の考え方であり、1日に3〜4回の食事を与えても、問題となるわけではありません。


むしろ成長中の子猫や身体の機能が低下し始めているシニア猫には、消化能力に合わせて少量の食事で回数を増やして与える必要があります。

空腹がストレスや嘔吐の原因になるから

人にとって空腹がストレスになることがあるのと同じように、猫にとっても空腹はストレスになる可能性があります。猫はストレス耐性が低く、ストレスが原因でさまざまな病気を引き起こす可能性があります。


ストレスとなる空腹時間を減らすためにも、食事回数を増やして食事間隔を短くすることが望ましいでしょう。


また、空腹時間が続くことで、胃液を嘔吐することがあります。長い空腹時間を経た後で食事をすると、胃液の影響で胃の粘膜が障害され、食べ物が胃の中に入ったことで刺激となり、それが原因でそのまま吐き戻してしまうこともあります。


猫はグルーミングで飲み込んだ毛玉を吐き戻すことも多く、嘔吐を見てもあまり気にされない飼い主さんもいるようです。元々は、狩りをして食べた小動物の毛を吐き出すための生理的な現象ですので、毛玉を吐くことはそれ程大きな問題ではありません。しかし、空腹による胃液の分泌が嘔吐の原因となっている場合は、胃の粘膜障害や食道への逆流による食道の粘膜障害、消化不良による下痢等の原因となる可能性がありますので、空腹時間をあまり作らないような食事間隔が望ましいでしょう。個体差もあると思いますので、1日2回の間隔ではどうしても空腹による嘔吐が出てしまう場合は、ご飯の種類や回数に関して相談してみましょう。

1回のみだと消化不良の原因になるから

前述のとおり、猫は元々食べられる時に食べる習性をもった動物です。更に、犬のように大きな獲物を小さくかみ砕いて食べるのではなく、猫は小動物などの獲物の塊を飲み込む習性がありました。猫は犬に比べると食べたものが消化管を通過するのに要する時間が非常に長く、消化に時間がかかることが報告されていますが、これらの習性から説明がつきます。つまり、1回の給餌で大量のご飯を摂取してしまうと消化不良を起こす可能性が考えられます。

 

ごはんを時間通りに与えられない時の対策

 

ある程度規則正しい生活をすることで、猫と飼い主さんの生活スタイルを合わせることができます。また日中は留守番になりがちな猫も、「夜になれば帰宅した飼い主さんからごはんをもらえる」と理解できるため、安心して過ごせるようになります。


しかし、時には時間通りに帰れなくなったり、猫の体質的に2回以上の給餌が必要なケース、出張や入院などで帰宅できない日があったりします。そのような場合の対策をご紹介しましょう。


1つ目は、自動給餌器の活用です。ドライフードのような水分の少ないフードは、ある程度の時間が経過しても、あまり傷むことがありません。そのため、あらかじめ長時間の不在がわかっている場合や1回の摂取量が少なくご飯の回数を増やさないといけないが、仕事などで外出している場合は、ドライフードを自動給餌器にセットしておくと、設定した時間にごはんを与えられます。最近では、スマホで遠隔操作できるものや、ウェットフードに対応したものもあります。


2つ目は、家族や友人への協力依頼です。近所に信頼できる家族や友人がいれば、鍵を預けて猫の食事の世話などを依頼できます。いつ何が起こるかわかりませんので、近所に愛猫を任せられるような信頼できる友人を作っておくことは、お互いの生活の質の向上に役立つためおすすめです。


3つ目は、プロのペットシッターへの依頼です。猫は縄張りの外へ出ていくことに臆病なため、ペットホテルに預けるよりもプロのペットシッターに依頼する方が、安心して過ごせることが多いのです。ただし赤の他人を留守宅に上げるため、事前打ち合わせを通して、信頼できるシッターを探す必要があります。

 

猫のごはん時間や頻度を変える時のポイント

 

猫のごはん時間や頻度を変える時のポイント

 

猫のライフステージが変わったり、飼い主さんの生活スタイルが変わったりすることで、それまで習慣化していたごはんの時間や頻度を変えなければならないことがあります。その際、できるだけスムーズに切り替えたり、健康面にマイナスの影響を与えないようにするためのポイントをご紹介します。

1日の適切なごはんの量を把握しておく

食事の習慣を切り替える前には、必ず現在の愛猫にとって適切な1日のごはんの量(エネルギー量)を把握しておきましょう。


食事の量が不足すると、毛艶が悪くなる、元気がなくなる、栄養失調で体調を崩すといった問題が起こります。逆に食事の量が多すぎると、肥満になってしまいます。肥満は、人と同様に猫にとっても万病のもとであり、ありとあらゆる健康リスクを高めます。


猫にとって1日に必要となる食事の量は、その猫の体重、ライフステージなどによって異なります。比較的簡単な計算式で必要なエネルギー量(カロリー)を算出できるため、下記記事を参考に、愛猫に適切な1日のごはんの量を把握しておきましょう。

こちらの記事もご参考してください

【獣医師監修】猫のご飯量はどれくらいがベスト?足りない時のサインについても:
https://vetzpetz.jp/blogs/column/cat-food-quantity

少しずつ変えて様子を見る

朝・昼・夜にこういうことを行うといったざっくりとした習慣は、猫に余計な心配をさせないという点で、ストレスを軽減させる効果を期待できます。


例えば、朝家を出た飼い主さんが毎日暗くなると帰宅するという生活を習慣化すると、猫は日中の留守番の時間が多少長くなっても、必ず飼い主さんが帰宅することがわかっているため、パニックを起こすこともなく安心して過ごせるのです。


逆に習慣を急に変更すると、次に起こることが予測できずに強いストレスを受けることがあります。そのストレスにより体調不良となるケースもあるため、急激な変化は避けて、少しずつ様子を見ながらごはんの回数やタイミングを変更していきましょう。


例えば子猫の成長に伴い、1日4回だった食事を2回に減らそうとする場合、1日3回の食事を間に挟み、慣れてきた頃合いを見計らって1日2回に移行するという段取りを踏むと良いです。

食べない時は早めに下げる

食事の回数やフードを変更した時に、ニオイを嗅いだだけで口をつけない、少し食べただけで残してしまうといったことが起こることがあります。


このような場合、「もったいない」とか「お腹が空くだろう」といった理由で、フードの残ったお皿を出しっぱなしにしている方もいらっしゃるかもしれません。ご飯の時間の習慣化の観点からは、食べない時は早めに下げることで習慣化がうまくできることがあります。

後述する「置き餌」とは異なり、この状況では食べるかどうかがわからないので、習慣化に主眼を置いて置き餌とは異なる考え方が必要になります。

ご飯を片付けるまでの時間は15分を目安にしてみましょう。


ごはんを残すと片付けられてしまい、次の食事の時間まで何も食べられないことがわかれば、猫も気まぐれな食べ方をせず、出された時にきちんと食べるようになることがあります。

 

猫のごはんについてよくある質問

 

猫のごはんについてよくある質問

最後に、猫のごはんに関してよく寄せられる質問をご紹介します。愛猫の食事管理で悩まれた時に、参考にしてみてください。

猫のごはん時間は3回や4回などに分けなくていい?

1日の食事回数は、2回以上であれば3回や4回に増えても問題はありません。


前述のとおり、猫が1度にたくさんの食事をとると、消化不良など消化機能に負担をかけてしまう可能性があります。

猫がごはんの時間を待てない時はどうする?

猫はたまに、ごはんの時間を待ちきれずに催促をすることがあります。美味しそうなニオイなどにつられて、お腹が空いていないのに食べたがっているのかもしれません。そこで安易に要求に応えてしまうと、おねだりをすればいつでもごはんがもらえると学習してしまい、おねだりが常態化する恐れがあるため、注意が必要です。


また想定外のおやつは、愛猫の肥満を招きます。本当に空腹なのかを見極め、普段の食事で間隔が空きすぎる、量が足りないという場合は、食事量や回数を見直しましょう。


猫が本当に空腹の場合は、白い泡が混じっている薄黄色い液体(胃液)を吐くことがあります。また、低血糖を起こしてぐったりとするなどの症状が現れることもあるため、そのような事態にならないよう猫をしっかり観察しましょう。


また甲状腺機能亢進症や糖尿病などの症状で食欲が増進しているケースもあります。急に活動性がみられ、ご飯をしっかり食べているのに瘦せていく場合や、食欲の増加とともに飲水量と排尿量が増えているなど、気になるあるいは以前と変わった様子が見られる場合は、早めに動物病院で診てもらってください。

猫は何時間で空腹になる?

一概に、食事の後何時間経過すると空腹になるとは言えません。その猫の1回の食事量や、猫自身の運動量、健康状態などによって左右されるからです。


普段から1日に2回の食事をしている猫であれば、習慣的に12時間程度で空腹を感じることはあるでしょう。


できるだけ空腹の時間が長くならないようにした方が良いと聞くと、「では何時間おきにすれば良いのだろう」と考える飼い主さんは多いですが、ケースバイケースであり、愛猫の普段の様子をよく観察して決めるのが、最適解だと考えましょう。

猫のごはんは置き餌でもいい?

置き餌にすることのデメリットはありますが、置き餌にしてはいけないというわけではありません。ただし多頭飼育の場合は、どの子がどれだけの量を食べたのかを把握できなくなるため、置き餌方式にはしない方が良いでしょう。また、ウェットフードなどの傷みやすいご飯も置き餌には適していません。


単頭飼育で置き餌をする場合には、次の点に注意が必要です。


①衛生管理

衛生面での管理は、特に注意が必要です。傷みやすい水分の多いフードを避け、食事場所の温湿度管理は特に夏の暑い時期には注意しましょう。給仕の度に必ず食器を洗うことも、最低限必要な条件です。


②鮮度管理

傷みづらいドライフードも、長時間出しておくと風味が落ちて、猫の食欲をそいでしまいます。1日に何回か、時間を決めて入れ替えましょう。


③カロリー管理

置き餌でも、1日の総摂取カロリーの管理は必要です。1日の総カロリー量となる分量だけを給仕し、入れ替える際に残っている量を量って食べた量を確認します。この方法だと、完食しても食べ過ぎることはありません。

 

まとめ 猫のごはんの量・回数・時間は飼い主が管理しよう

 

動物の体は、食べたもので作られます。猫には猫にあった栄養バランスで、良質な食材を使ったごはんを、最適な量だけ食べさせることが大切です。また、1日の食事を何回かに分けて食べさせることも、猫の健康維持に役立ちます。


飼い猫は、自力で食事の支度ができず、食事管理は飼い主さんの役目です。飼い主さんにとって無理なく続けていける範囲で、愛猫に最適な食事管理を行うよう、工夫と努力を重ねることが大切です。

 

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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