【獣医師監修】猫の肥満の見分け方!適正体重やチェックの基準
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飼っている猫を見て、「肥満かも?」と不安になる方がいるのではないでしょうか。肥満の基準がわからず判断ができないことがあるでしょう。
猫が肥満になると、糖尿病や感染症などにかかり、健康状態が悪くなる場合があります。
本記事では、猫の肥満の見分け方や品種ごとの適正体重、肥満の原因や解消方法を解説します。大事な猫の健康を守るためにも、正しい判断基準を知り、体重管理を徹底しましょう。
- 目次
猫の肥満度チェック!見た目の変化は?
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猫の肥満度をチェックしたい場合は、ボディコンディションスコア(BCS)を使用してください。ボディコンディションスコアとは、見た目と触れた状態を考慮し、体型、特に脂肪の付き具合を5段階(または9段階)で評価する基準です。以下の内容を確認し、猫の肥満度をチェックしましょう。
肥満度 |
見た目の変化(判断基準) |
BCS1 (痩せ) |
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BCS2 (やや痩せ) |
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BCS3 (理想) |
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BCS4 (やや肥満) |
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BCS5 (肥満) |
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出典:環境省「「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
品種ごとの適正体重
猫の適正体重は、品種ごとに異なります。以下の内容を確認し、飼っている猫の種類に照らし合わせ、適正体重を把握しましょう。ただし、同じ品種であっても骨格によっては必ずしも適正体重範囲でないこともあります。ボディコンディショニングスコア(BCS)を確認しながら、目安として参照してください。
猫の品種(五十音順) |
オスの適正体重 |
メスの適正体重 |
アビシニアン |
3.0〜5.0kg |
3.0〜5.0kg |
アメリカン・カール |
2.5~4.5kg |
2.5~3.5kg |
アメリカン・ショートヘア |
3.0~6.0kg |
3.0~5.0kg |
エキゾチック・ショートヘア |
3.0~5.5kg |
3.0~4.0kg |
エジプシャン・マウ |
3.0〜5.0kg |
3.0~4.0kg |
オシキャット |
3.5~6.5kg |
3.0~5.5kg |
オリエンタル・ショートヘア |
3.0〜4.0kg |
3.0〜4.0kg |
サイベリアン・フォレスト・キャット |
4.0~8.0kg |
4.0~6.0kg |
シャルトリュー |
4.0~6.5kg |
3.0~5.0kg |
シャム(サイアミーズ) |
3.0〜4.0kg |
3.0〜4.0kg |
シンガプーラ |
2.0~3.5kg |
2.0~3.5kg |
スコティッシュ・フォールド |
3.0〜6.0kg |
3.0〜5.0kg |
セルカーク・レックス |
3.0〜6.5kg |
3.0〜5.0kg |
ソマリ |
3.0〜5.0kg |
3.0〜4.5kg |
トンキニーズ |
3.0〜5.0kg |
3.0〜4.5kg |
ノルウェージャン・フォレスト・キャット |
3.5~6.5kg |
3.5~5.5kg |
バーマン |
3.0〜6.5kg |
3.0〜5.0kg |
ヒマラヤン |
3.0〜5.5kg |
3.0〜5.0kg |
ブリティッシュ・ショートヘア |
3.0〜5.5kg |
3.0〜5.0kg |
ペルシャ |
3.0〜5.5kg |
3.0〜5.0kg |
ベンガル |
3.0〜6.0kg |
3.0〜5.0kg |
メイン・クーン |
3.5~6.5kg |
3.0〜6.0kg |
マンチカン |
3.0〜6.0kg |
3.0〜6.0kg |
ラガマフィン |
4.0~7.0kg |
4.0~6.0kg |
ラグドール |
4.0~7.0kg |
4.0~6.0kg |
ロシアンブルー |
3.0〜5.0kg |
3.0〜5.0kg |
ジャパニーズ・ボブテイル |
3.0〜4.5kg |
3.0〜4.5kg |
猫が太る・肥満になる原因
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猫が太ったり、肥満になったりする原因には、食事やおやつ、運動不足や去勢・避妊手術が関係します。当てはまるものがないか確認してみてください。
食事内容
猫にフードをあげる場合、カロリーを考慮して与えないと、太る原因になります。とくに、人の食べ物を与えてしまうと猫にとって高カロリーになり、肥満につながるだけでなく、塩分やミネラルなどを過剰に摂取してしまい病気の原因になることがあります。
「猫に元気に育ってほしい」という思いから、パッケージの規定量を守らずにフードを与えすぎてしまうことがあるかもしれません。とくに、猫が美味しそうに食べる姿を見ると、多くのフードを与えたくなるでしょう。
しかし、必要以上にフードをあげると肥満になり、健康を損なうリスクがあります。フードを与える際は、適正量を確認したうえであげてください。
おやつの与えすぎ
猫におやつを与えすぎると、カロリーオーバーになり、太る原因になります。また、おやつの回数を減らしたとしても、中身が高カロリーな場合は肥満につながる可能性があります。「少量だから大丈夫」と思わず、与えすぎに注意してください。一般的に、1日のおやつの量は、1日に摂取するカロリーの2割まで、という基準があります。規則的に体重測定をしながら基準範囲内で上手におやつを取り入れて、愛猫とのコミュニケーションをとるとよいでしょう。
家族で猫を飼っている場合、自分が少量のおやつしか与えていなかったとしても、他のご家族の方が与えていることがあります。この場合、必要以上にカロリーを摂取してしまい、太る原因になります。
猫におやつを与える場合は、家族と話し合い、一日の規定量を確認しておきましょう。
運動不足
猫が運動不足になると、消費カロリーが少なくなり、肥満につながる場合があります。
猫は、外に出て運動する機会が多い犬と比べて、活発に運動がしにくい生き物です。また、猫の糖を分解する機能は他の動物と比較して低く、太りやすいとされています。
家の中が以下に該当する場合、猫の運動不足を引き起こしている可能性があります。当てはまるものがないかチェックしてみてください。
- 動き回れるスペースがない
- 猫が遊べるあるいは興味を示すおもちゃがない
- キャットタワーなどの昇降運動できるような環境がない
去勢・避妊手術
猫が去勢・避妊手術を受けると、ホルモンバランスが変化し、肥満につながることがあります。
たとえば、メスの場合、エストロゲンと呼ばれるホルモンが減少することで、食欲が増えることがわかっています。オスの場合は、テストステロンが減少し、積極的に運動しなくなるのが特徴です。
去勢・避妊手術そのものは悪いことではありません。大切なのは、肥満にならないよう食事管理を徹底することです。
猫の肥満が一因の病気リスク一覧
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猫が肥満になると、おもに以下の病気を引き起こす場合があります。
糖尿病
猫はもともと血糖値を下げる能力が他の動物より低いため、肥満になると、インスリン(血糖値を一定に保つホルモン)の作用が更に鈍くなり、血糖値がコントロールできず糖尿病になる場合があります。
糖尿病になると、多飲多尿や体重減少などが見られるようになるのが特徴です。また、症状が進行すると、白内障や腎機能障害、肝疾患などの合併症が起こることがあります。
糖尿病が適切に管理されずに進行してケトアシドーシスと呼ばれる状態になると、神経障害や呼吸困難などが起こり、命に関わることがあります。
心臓・呼吸器・関節への負担
猫が肥満になると、人と同じように様々な器官に負担をかけてしまう可能性があります。例えば、高血圧のリスクや全身に血液を送り出す心臓への負担が増加する可能性があります。また、首周りに脂肪がつくことで物理的に気道が圧迫されて呼吸がしにくくなることもあります。関節にも負担がかかりやすくなるため関節炎のリスクが高くなります。
脂肪肝
猫は病気などにより食欲が低下して飢餓状態になると、体内に蓄積された脂肪が肝臓に運ばれ、エネルギーに変換しようとします。しかし、その状態が長く続くと肝臓での脂肪の代謝が追いつかなくなり、やがて肝臓に脂肪が蓄積して脂肪肝になってしまいます。
脂肪肝になると、肝臓機能が低下し、毒物の代謝やエネルギー産生・貯蔵が出来なくなり、やがて肝不全になり、治療しないと命取りになる場合があります。
肝不全になると、嘔吐や下痢、脱水や急激な体重減少などの症状が出るのが特徴です。また、活発さが失われたり、目や皮膚が黄色に変化する黄疸(おうだん)になったりすることもあります。
皮膚病
猫が肥満になると、お腹周りの脂肪が邪魔をして毛づくろいがうまくできなくなり、皮膚病につながる場合があります。
猫は、皮膚や毛を健康に保つために毛づくろいをおこない、ノミ・ダニなどの寄生虫やほこり・汚れを落とします。
毛づくろいができなくなると、体が不衛生になり、かゆみや赤みなどをともなう皮膚疾患が起こる可能性があります。また、毛づくろいは猫の本能的な行動であり、本能行動が出来なくなることで、ストレスから脱毛や舐め壊しなどの皮膚症状が見られるようになることもあります。
もし猫の体重が増えたり、太り始めたりした場合は、毛づくろいができているかを確認することも大切です。
麻酔や手術のリスク
肥満の猫は通常の猫以上に、麻酔の管理やお腹を開けるような手術の難易度が上がることがあります。麻酔に必要なお薬が脂肪に吸収されてしまうことで過剰投与になる可能性や、お腹の中の手術が必要な時に、内臓脂肪が多いことで視界の確保や手技の障害になることがあります。また麻酔時に人工呼吸をつけないと、胸周りの脂肪の重みにより自力でしっかり肺を膨らませることができないこともあります。
猫の肥満を解消するための対策
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猫の肥満を解消するためには、食事やおやつ、運動習慣や体重管理が重要です。猫の健康を守るために、以下の内容を実践しましょう。
食事の量や質を見直す
猫の肥満を解消するため、食事量や質を見直し、必要に応じて改善しましょう。
適切な食事量を求める際は、以下の手順で計算しましょう。
(1)安静時のエネルギー要求量(RER)を「体重(kg)×30+70」で算出
*ここで言う体重とはその猫の適正体重もしくは目標体重です。
(2)成長段階や活動量に応じて係数を掛けて1日当たりのエネルギー要求量(DER)を算出
*係数に入る数値
✓子猫の場合、生後4か月までは3.0、生後4か月~1年までは2.0
✓成猫の場合、避妊去勢済は1.2~1.4、避妊去勢なしは1.2~1.6
✓7~10歳の中高齢猫の場合、1.1~1.4
✓10歳以降の老齢期の場合、1.1~1.6
たとえば、体重3kgの5歳の避妊去勢済みの猫の場合は下記のように計算します。
安静時のエネルギー要求量(RER)……3kg×30+70=160キロカロリー
1日当たりのエネルギー要求量(DER)……160×1.3(係数)=208キロカロリー
*ここでは係数を1.3としていますが、基本としては避妊去勢済の場合は1.2、避妊去勢なしでは1.6で計算し、体重の変化によりそれぞれの範囲内で調整してください。
計算したDERに基づき、ペットフード100gあたりの代謝エネルギー(ME)を使用して1日当たりの食事量を計算することも可能です。(ペットフードの代謝エネルギーはパッケージに記載されています。)
計算式は「1日当たりの食事量(g)=DER(kcal)÷ME(kcal)×100(g)」です。
例えば、上記の猫が代謝エネルギー312キロカロリーのペットフードを食べていたとすると以下のように計算します。
一日当たりの食事量:208÷312×100=66.7g となります。
ただし、実際に必要なカロリーは、猫の体重や年齢、運動量などによって変わる恐れがあるため、注意が必要です。判断に迷う場合は、動物病院を受診し、獣医師に相談してください。
また、ダイエットにつなげるためには、フード自体を見直すことも重要です。フードを選ぶ際はカロリーが抑えやすくなるよう、脂質が控えめなものを選ぶことが大切です。
さらに、炭水化物の含有量が低く、たんぱく質が多く含まれているものを食べると必要な筋肉を維持でき、太りにくくなります。
体重管理用のフードの中には、摂取量を減らさなくても摂取カロリーが抑えられるよう設計された製品もありますので、たくさん食べたい猫ちゃんの場合はそういった製品を使用すると満足感(満腹感)を損なうことなく継続できるかもしれません。
フードのみでの改善が難しい場合は、必ず獣医師に相談したうえで、ダイエット用のサプリメントを活用するのも一つの手段です。
おやつの与え方を見直す
普段からおやつを与えている場合は、高カロリーなものを避けるようにしてください。また、食事で得られるカロリーを考慮し、いつもよりもおやつの量を減らすことも必要です。
目安となる量は、猫の体重や年齢、運動量によって異なるため、獣医師のアドバイスを踏まえて調整しましょう。
家族で猫を飼っている場合は、知らない間に家族の誰かがおやつを与えていることがあり過剰に与えてしまっていることがありますので、おやつを与える係を決めるか、1日に与える量や頻度を設定して家族間で共有しておきましょう。急におやつ抜きにすると、ストレスが増えるため、上手に調整することが重要です。
たとえば、おやつの回数を分けたり、主食フードをおやつとして少し与えたりすることをおすすめします。
運動させる
猫の運動量を増やすと、肥満解消や予防効果が期待できるようになるため、運動できる環境を整えることが重要です。
猫は上下に動くと良い運動になります。たとえば、キャットタワーを設置すると、自然と上り下りを繰り返すようになり、運動量が増えます。フードの皿をキャットタワーの上に移すのもおすすめです。ただし、体重過剰の場合は関節に負担がかかりすぎることもありますので、猫の様子を見ながら取り組んでいきましょう。
また、猫じゃらしやおもちゃを使って一緒に遊んであげると、運動量が増えるだけでなくコミュニケーションにもなります。猫がストレスにならないよう配慮しながら、楽しく運動させる環境を提供しましょう。
体重をこまめにチェック・記録する
猫の肥満を解消するためには、体重をこまめにチェックし、適正体重に近づけていくことが重要です。目安として、1週間で体重の0.51%ずつ落とすのが理想的です。急激なダイエットはストレスになるだけでなく体にも負担をかけることがあるため、無理のない範囲で続けましょう。
体重を測定するときは、飼い主さんが猫を抱っこし、1回目の計測を終えてください。その後、飼い主さんだけ体重を測定し、1回目との差を算出すると猫の体重が把握できます。
猫にとっての数百グラムは人間で換算すると、数キログラムに相当します。正確な体重を測定したい場合は、動物病院を受診してください。あわせて体調や他の病気の症状がないかなどもチェックしてもらうと安心です。
まとめ 猫の肥満を解消するには日々の食事や運動が重要
猫の肥満が気になる場合は、ボディコンディションスコア(BCS)を活用し、肥満度をチェックしましょう。肥満に該当する場合は、品種ごとの適正体重を把握し、日々の食事管理や運動が重要です。
対処法として、高カロリーなフードやおやつを避け、猫が室内で運動できる環境を整えてください。猫の肥満や体重管理などに関して気になることがあれば、動物病院を受診し、獣医師のアドバイスを受けましょう。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許