【獣医師監修】犬にサプリメントは必要?不要?与える場合の注意点について

近年、犬の健康をサポートする目的で開発されたサプリメントが増え、ペットショップやオンラインショップでも手軽に購入できるようになりました。栄養補助や健康維持に役立つとされる一方で、「本当に必要なのか?」「どのように選べばいいのか?」と疑問に思う飼い主も多いはずです。
そこで、この記事では犬用サプリメントの役割やメリット・デメリット、適切な選び方や与える際の注意点について詳しく紹介し、必要なのかどうかについて解説します。
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犬にサプリ(サプリメント)は必要か
サプリメントは、普段の食事だけでは十分に摂取しにくい栄養成分を補うことを目的とした健康補助食品で、犬猫用ではペットフードに分類されます。栄養は本来、食事から摂取することが基本ですが、たとえば熱に弱い栄養素など、ペットフードでは補うことが難しいこともあります。サプリメントを飲むことで、食事だけでは補いきれない栄養や一時的に不足している栄養を補うことができます。
犬も同様に、病気やケガをしたときに栄養バランスが崩れることがあります。そのようなときにサプリメントを活用すると、必要な栄養を補うことで、回復のサポートが可能です。
特に高齢犬は加齢に伴い持病を抱えることが増え、食事だけでは十分に栄養をとれない場合もあります。
ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、基本となるのはバランスの取れた食事です。また、犬の体質や健康状態によっては、必要のないサプリメントを与えることでかえって負担をかけることもあります。サプリメントを取り入れる際は、犬の健康状態をしっかりと把握し、獣医師に相談しながら適切なものを選ぶことが重要です。
犬用サプリの選び方
犬にサプリメントを与える際は、単に「健康に良さそうだから」と安易に選ぶのではなく、目的に応じた適切なものを選ぶことが大切です。犬用サプリを選ぶ際に押さえておきたいポイントについて詳しく解説します。
与える目的を明確にする
犬にサプリメントを与える際は曖昧な理由ではなく、具体的な目的を明確にすることが重要です。
たとえば、関節の健康を維持したいなら関節ケア用のサプリ、皮膚トラブルを改善したいなら皮膚ケア用のサプリといったように、愛犬の健康状態に応じて選ぶことが大切です。
また、犬の年齢やライフステージによって必要な栄養素は異なります。子犬の場合は脳神経系の成長をサポートするためのオメガ3脂肪酸の1種であるDHAを含むもの、成犬には健康維持に役立つオメガ3脂肪酸やタウリン、シニア犬には関節ケアや認知機能の維持を目的としたEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸やグルコサミンやビタミンB群などが適しています。ただし、ミネラルや脂溶性ビタミンなどは適切な量でないと、かえって病気を引き起こすこともありますので、注意しましょう。
特定の疾患のケアを目的にする場合、サプリメントの選択には特に慎重になる必要があります。腎臓病や心疾患、関節疾患などを持つ犬に適したサプリを選ぶには、獣医師のアドバイスが不可欠です。自己判断で与えるのではなく、事前に相談して適切な成分と摂取量を確認しましょう。
含まれている成分や効能で選ぶ
サプリメントを選ぶ際は、パッケージに記載されている成分を必ずチェックすることが重要です。犬の健康状態や目的に合った成分が含まれているかを確認し、不要な成分が入っていないかにも注意しましょう。
たとえば、関節ケアが目的の場合は、必須脂肪酸やグルコサミン、コンドロイチンが含まれているサプリが適しています。関節の軟骨を保護し、老化による関節の摩耗を防ぐ効果が期待できます。
皮膚や被毛の健康をサポートしたい場合は、必須脂肪酸やビタミンEを含むものがよいでしょう。抗炎症作用があり、皮膚のかゆみや乾燥を和らげ、被毛のツヤを維持するのに役立ちます。
また、免疫力を高めたい場合はビタミンやポリフェノールなどの抗酸化成分、心臓の健康をサポートするならタウリンやL-カルニチンが含まれているサプリを選ぶとよいでしょう。
目的に合った成分を正しく選ぶことで、愛犬の健康維持に役立てられます。
形状・含有量・安全性を確認する
犬用サプリメントには、錠剤、粉末、液体、カプセルなどさまざまな形状があります。愛犬の好みや飲ませやすさに応じて適切なタイプを選ぶことが大切です。
たとえば、食事に混ぜやすい粉末タイプや液体タイプは、嗜好性の低い犬にも比較的与えやすいですが、錠剤タイプは丸飲みできる犬には手軽に与えられるメリットがあります。
また、成分の含有量にも注意が必要です。サプリメントは健康をサポートするものですが、過剰に摂取すると逆に健康を害する可能性があります。
たとえば、ビタミンDを過剰に摂取するとカルシウムの吸収が過剰になり、腎臓や骨に負担をかけることがあります。同様に、鉄分を過剰摂取すると消化器系に負担を与えることもあるため、必ず適正な量を守りましょう。
さらに、サプリメントの安全性も確認が必要です。動物病院で取り扱っているものや、品質が保証されたメーカーの製品を選ぶとよいでしょう。
また、継続的に摂取していくためには、安定的に製品が供給されることも重要になってきます。10年以上継続的に販売されているものは製品の需要があり、供給が安定している可能性が高く、信頼性の高い製品かもしれません。
不安な場合は獣医師に処方してもらう
市販のサプリメントを選ぶのが難しい場合や、愛犬の体調に合うかどうか不安な場合は、獣医師に相談するのがおすすめです。動物病院では、犬の健康状態に応じた適切なサプリメントを提案してくれるだけでなく、摂取量や与え方についてもアドバイスを受けることができます。
特に持病のある犬や薬を服用している犬の場合、サプリメントとの相互作用が問題になることもあるため、自己判断で与えるのは避けるべきです。
犬にサプリを与える際の注意点
犬にサプリメントを与える際には、正しい知識を持ち、適切な方法で使用することが重要です。犬にサプリメントを与える際の注意点について解説します。
人間用のものを与えない
犬にサプリメントを与える際に最も注意すべき点が、「人間用のサプリメントを与えないこと」です。人間用に作られたサプリメントには、犬の体に合わない成分が含まれていることがあり、健康を損ねる原因になる可能性があります。
たとえば、人間用のビタミンDや鉄分のサプリメントは、犬にとって過剰摂取になりやすく、腎臓や肝臓に負担をかける可能性があります。また、一部のサプリにはキシリトールなど犬にとって有害な成分が含まれていることもあるため、注意が必要です。
犬の健康を守るためにも犬専用のサプリメントを選び、獣医師のアドバイスを受けたうえで使用しましょう。
安易な理由で判断しない
「なんとなく良さそう」「SNSでおすすめされていた」といった理由だけでサプリメントを選ぶのは避けるべきです。
犬の健康状態や栄養バランスを考慮せずにサプリを与えると、かえって健康を損ねることになりかねません。
サプリメントを選ぶ際は、商品の詳細ページや成分表を確認し、愛犬の健康状態や目的に合っているかをしっかりチェックすることが大切です。
また、SNSや口コミサイトの情報だけを鵜呑みにするのではなく、信頼できる情報源や獣医師の意見を参考にしましょう。
定められた用量や用法を必ず守る
サプリメントは、適量を守ってこそ効果が期待できます。過剰摂取は、副作用が出たり、思わぬ健康被害を引き起こしたりするリスクが高まるため、パッケージや説明書に記載されている用量や用法を必ず守りましょう。
たとえば、脂溶性のビタミン(ビタミンA、D、E、K)は体内に蓄積されやすく、過剰摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。
また、ミネラル類(鉄分、カルシウム、リンなど)も過剰摂取すると腎臓や肝臓に負担をかけることがあるため注意が必要です。
サプリを与えるタイミングや回数も重要です。食事と一緒にとることで吸収が良くなるものや、空腹時に与えるべきものなど、適切な使用方法を理解しておきましょう。
他のサプリや薬と併用する場合は、相互作用がないかの確認も必要です。
アレルギーに気をつける
犬も人間と同じように、特定の成分に対してアレルギー反応を示すことがあります。サプリメントにはさまざまな成分が含まれていることがあるため、与える前にアレルギーの有無を確認しましょう。
たとえば、魚由来のオメガ3脂肪酸を含むサプリメントは、カプセルに動物性由来のゼラチンが使用されていることがあり、一部の犬にアレルギー反応を引き起こす可能性があります。製品によってはアレルギーの原因になりにくい原料を使用しているものもありますので、体質に応じた製品を選びましょう。また、小麦や大豆が含まれているサプリメントは、穀物アレルギーを持つ犬には適していません。
事前に成分表を確認し、獣医師と相談のうえで愛犬の体質に合ったものを選ぶことが重要です。サプリを与えた後に皮膚のかゆみ、嘔吐、下痢などの異変が見られた場合は、すぐに使用を中止し、獣医師に相談しましょう。
必要に応じて獣医師に相談する
サプリメントはあくまで健康を補助するためのものですが、犬の体調や疾患によっては、適していない場合があります。
持病を持っている犬や、すでに薬を服用している犬には、サプリメントの成分が悪影響を及ぼすことがあるため、自己判断で与えるのは避けるべきです。
サプリメントの使用に不安がある場合は、まず獣医師に相談し、適切なものを選んでもらうのが安心です。
獣医師が処方するサプリメントは、愛犬の体調に合わせて適切な成分と用量が調整されているため、安全性が高く、健康維持に役立ちます。
犬用サプリの種類

では、犬用のサプリにはどのようなものがあるのでしょうか。ポピュラーなものをピックアップしてご紹介します。
関節にトラブルを抱える犬用のサプリ
犬にとって関節はとても重要な部位ですが、トラブルが生じやすい部位でもあります。年齢を重ねた老犬によく見られるのですが、小型犬など犬種によっては若くても関節トラブルが起こることもあり、関節を悪くすると歩行や動きに影響が出てしまいます。
関節用のサプリに含まれているのは、関節の健康をサポートするとされるグルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン、プロテオグリカンなど。関節をつなぐ軟骨を構成したり、滑らかな動きをサポートしたりするものです。
炎症を抑える作用で関節の健康維持をサポートするオメガ3脂肪酸を含む必須脂肪酸サプリなどもあります。
肥満の犬用のサプリ
犬にとっても肥満は、健康上よくありません。体重が関節に負担をかけるだけでなく、糖尿病、心臓や血管の病気につながることもあるからです。
そのため肥満の犬用のサプリには、サラシアやギムネマなど、糖の吸収を抑える成分が含まれています。脂肪の燃焼をサポートしたり、脂肪の吸収を抑制したりする成分が含まれているものもあるので、愛犬の健康状態に合わせて選ぶといいでしょう。
シニア犬用のサプリ
シニア犬になると思うように食事をとることができず、栄養バランスが偏ってしまうことがあります。そのため、シニア犬用のサプリは複数の栄養素が入っていて、栄養バランスを整えることを目的としたものが多いです。
ただし、シニア犬は特定の部位に不調が生じてくることも多いため、愛犬の症状にあったサプリを選んであげることが大切だといえるでしょう。
乳酸菌の犬用のサプリ
愛犬のお腹の調子が気になるという飼い主さんもいらっしゃるでしょう。加齢によって腸内環境が悪化することも考えられます。乳酸菌の働きは、腸内環境を整えること。乳酸菌のサプリをとることで、腸の健康をサポートします。ただし、必要以上に与えることは禁物です。必ず適量を守ってください。
まとめ 犬のサプリメント使用は慎重に
犬用サプリメントは、食事で補いきれない栄養素を補助するためのものですが、すべての犬に必要なわけではありません。目的を明確にしたうえで、適切な成分が適量含まれたサプリメントを与えましょう。
また、持病のある犬や薬を服用している犬には、サプリの成分が悪影響を及ぼす可能性もあるため、自己判断ではなく獣医師に相談することをおすすめします。
愛犬に最適なサプリメントを選び、健康維持に役立てましょう。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許