犬の脱毛症の原因や治療法は? 換毛の抜け毛との違いも解説
2023.04.10
犬の脱毛には生理的なものと病的なものがあります。生理的なものを「換毛」、病的なものを総称して「脱毛症」と呼び、脱毛症になってしまった場合は原因に応じた治療が必要です。ところで、換毛と脱毛による抜け毛は、見分けがつくものなのでしょうか。また、どうして脱毛症を発症してしまうのでしょうか。治療法も含め、解説します。
毛に覆われている犬にとって、生え変わるために毛が抜けるのは自然なことだといえます。ところが、何かしらの原因により病的に毛が抜けてしまうことがあり、こういったケースの総称が「脱毛症」で、治療が必要です。
なお、犬には春と秋の年2回、体を気候に対応させるための換毛期と呼ばれる時期があり、自然に毛が抜けていきます。暑くなり始める春の換毛期の抜け毛はかなり量が多くなるのですが、生理的なことですので心配する必要はありません。
では、換毛による抜け毛と脱毛症による抜け毛には、どのような違いがあるのでしょうか。見分けるポイントを把握しておきましょう。
換毛期の抜け毛では、全身の毛が平均的に抜けていきます。部分的に抜ける量が多かったり、左右非対称に抜けたりということはあまりありません。また、皮膚が丸見えになるほど抜けることも、毛艶の悪さを感じるようなこともほとんどなく、毛をかき分けて皮膚の状態を見たときも、基本的にはきれいな肌の色をしています。
上記とは異なる脱毛が見られる場合は、換毛ではなく脱毛症である可能性が高くなるということです。例えば、皮膚が丸見えになってしまうほど抜けている部分がある、抜け方が左右非対称になっている、皮膚に赤みや発疹などの異常が確認できるなどの場合は、病的な脱毛症の可能性が高いといえます。
そのほか、愛犬に痒がる様子が見られたり、毛並みがゴワゴワして艶をなくしていたりという場合も、脱毛症のサインといえます。
このような異常に対しては、原因に応じて対処、治療する必要があります。放置しておくと重症化することもあるので、できるだけ早く動物病院に行き、獣医師に診察してもらうことが大切です。
では、犬の脱毛症はどうして起きてしまうのでしょうか。原因はさまざまありますが、おもなものをピックアップしてご紹介します。
ひとつは、カビや細菌などが皮膚に繁殖する「感染症」によるものです。カビや細菌は非常に種類が多く、その種類によって、脱毛する部位や症状に違いがあります。また、外部から寄生するノミやダニのほか、犬の皮膚に常在しているニキビダニに代表される寄生虫も、脱毛症の原因となるので注意したいところです。
感染症や寄生虫だけでなく、アレルギーが原因になることもあります。具体的には、フードによる食物アレルギー、フードも含め環境にも要因が認められるアトピー性皮膚炎などです。
さらに、ホルモン分泌に関与する病気が脱毛症を引き起こすことも知られています。多く見られるのは、副腎からホルモンの分泌が過剰になる「クッシング症候群」、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる「甲状腺機能低下症」などです。こういった病気においては、脱毛の症状は見られるものの、痒みはさほど強くないという特徴があります。
また、遺伝や先天的な問題が脱毛症を引き起こすこともあるので覚えておくといいでしょう。シルバー、グレーなど淡い色の毛がうまく育たない「淡色被毛脱毛症」、黒い毛の成長に異常が出る「黒色被毛脱毛症」などが広く知られています。
そのほか、脂漏症など皮膚病により脱毛するケース、毛周期に異常が生じて毛が抜けてしまうケース、ステロイドの塗り薬を長期に渡って使ったことによる脱毛、心理的ストレス、栄養不足なども原因として挙げることができます。
ストレスが原因という場合は、飼い主さんの対応で解決できるかもしれません。愛犬の生活環境に変化はないか、スキンシップの時間は十分に取れているかなど、愛犬の立場で振り返ってみましょう。思い当たることがあるときには、ぜひ、愛犬のストレス解消に取り組んでみてください。
犬が脱毛症になった場合は、原因に応じた治療をすることが基本です。
カビや細菌による感染症が原因となっている場合は抗生物質や抗真菌薬を投与します。ノミやダニなどの寄生虫であれば、それらを駆除するための内服薬や外用薬を使用します。
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などホルモン系の病気が原因となっている場合は、脱毛症そのものではなく、その病気の治療をすることが主眼となります。
ストレスの場合は、飼い主さんに思い当たるストレスを取り除くこと、食物アレルギーであれば、アレルギー対応食に切り替えるなど獣医師の指示に従った対処が必要です。
愛犬の抜け毛が多い気がする……そう感じたら、自然な換毛なのかそうでないのかを判断するために、愛犬の体をよく観察してみてください。皮膚が見えている部分がある、抜け方が左右対称ではない、皮膚に異常が見られるなど、気になることがあったときには、すぐに獣医師に相談しましょう。原因に合った治療を行い、脱毛症を改善してあげてくださいね。
犬の脱毛症とは
毛に覆われている犬にとって、生え変わるために毛が抜けるのは自然なことだといえます。ところが、何かしらの原因により病的に毛が抜けてしまうことがあり、こういったケースの総称が「脱毛症」で、治療が必要です。
なお、犬には春と秋の年2回、体を気候に対応させるための換毛期と呼ばれる時期があり、自然に毛が抜けていきます。暑くなり始める春の換毛期の抜け毛はかなり量が多くなるのですが、生理的なことですので心配する必要はありません。
換毛による抜け毛と脱毛症の違い・見分け方
では、換毛による抜け毛と脱毛症による抜け毛には、どのような違いがあるのでしょうか。見分けるポイントを把握しておきましょう。
換毛期の抜け毛では、全身の毛が平均的に抜けていきます。部分的に抜ける量が多かったり、左右非対称に抜けたりということはあまりありません。また、皮膚が丸見えになるほど抜けることも、毛艶の悪さを感じるようなこともほとんどなく、毛をかき分けて皮膚の状態を見たときも、基本的にはきれいな肌の色をしています。
上記とは異なる脱毛が見られる場合は、換毛ではなく脱毛症である可能性が高くなるということです。例えば、皮膚が丸見えになってしまうほど抜けている部分がある、抜け方が左右非対称になっている、皮膚に赤みや発疹などの異常が確認できるなどの場合は、病的な脱毛症の可能性が高いといえます。
そのほか、愛犬に痒がる様子が見られたり、毛並みがゴワゴワして艶をなくしていたりという場合も、脱毛症のサインといえます。
このような異常に対しては、原因に応じて対処、治療する必要があります。放置しておくと重症化することもあるので、できるだけ早く動物病院に行き、獣医師に診察してもらうことが大切です。
犬の脱毛症の原因
では、犬の脱毛症はどうして起きてしまうのでしょうか。原因はさまざまありますが、おもなものをピックアップしてご紹介します。
ひとつは、カビや細菌などが皮膚に繁殖する「感染症」によるものです。カビや細菌は非常に種類が多く、その種類によって、脱毛する部位や症状に違いがあります。また、外部から寄生するノミやダニのほか、犬の皮膚に常在しているニキビダニに代表される寄生虫も、脱毛症の原因となるので注意したいところです。
感染症や寄生虫だけでなく、アレルギーが原因になることもあります。具体的には、フードによる食物アレルギー、フードも含め環境にも要因が認められるアトピー性皮膚炎などです。
さらに、ホルモン分泌に関与する病気が脱毛症を引き起こすことも知られています。多く見られるのは、副腎からホルモンの分泌が過剰になる「クッシング症候群」、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる「甲状腺機能低下症」などです。こういった病気においては、脱毛の症状は見られるものの、痒みはさほど強くないという特徴があります。
また、遺伝や先天的な問題が脱毛症を引き起こすこともあるので覚えておくといいでしょう。シルバー、グレーなど淡い色の毛がうまく育たない「淡色被毛脱毛症」、黒い毛の成長に異常が出る「黒色被毛脱毛症」などが広く知られています。
そのほか、脂漏症など皮膚病により脱毛するケース、毛周期に異常が生じて毛が抜けてしまうケース、ステロイドの塗り薬を長期に渡って使ったことによる脱毛、心理的ストレス、栄養不足なども原因として挙げることができます。
ストレスが原因という場合は、飼い主さんの対応で解決できるかもしれません。愛犬の生活環境に変化はないか、スキンシップの時間は十分に取れているかなど、愛犬の立場で振り返ってみましょう。思い当たることがあるときには、ぜひ、愛犬のストレス解消に取り組んでみてください。
犬の脱毛症の治療法
犬が脱毛症になった場合は、原因に応じた治療をすることが基本です。
カビや細菌による感染症が原因となっている場合は抗生物質や抗真菌薬を投与します。ノミやダニなどの寄生虫であれば、それらを駆除するための内服薬や外用薬を使用します。
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などホルモン系の病気が原因となっている場合は、脱毛症そのものではなく、その病気の治療をすることが主眼となります。
ストレスの場合は、飼い主さんに思い当たるストレスを取り除くこと、食物アレルギーであれば、アレルギー対応食に切り替えるなど獣医師の指示に従った対処が必要です。
愛犬の抜け毛が多い気がする……そう感じたら、自然な換毛なのかそうでないのかを判断するために、愛犬の体をよく観察してみてください。皮膚が見えている部分がある、抜け方が左右対称ではない、皮膚に異常が見られるなど、気になることがあったときには、すぐに獣医師に相談しましょう。原因に合った治療を行い、脱毛症を改善してあげてくださいね。
- 監修者プロフィール
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牛尾 拓(ウシオ タク)
経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許