猫の外部寄生虫・内部寄生虫の種類や治療法を解説

2023.04.10
猫の外部寄生虫・内部寄生虫の種類や治療法を解説
品種に関係なくどんな猫であっても飼い主さんが気をつけてほしいのが、寄生虫の存在です。猫の体のどこに寄生するかで「外部寄生虫」と「内部寄生虫」に分けられますが、寄生虫は私たちの身の周りにいるものですから、常に感染のリスクにさらされていると言って過言ではありません。寄生虫が猫に寄生すると、さまざまな体調不良を引き起こします。寄生虫の種類や治療法について知り、愛猫の健康を守りましょう。
目次


猫の外部寄生虫と内部寄生虫


猫の寄生虫は、皮膚など体の外部に寄生する外部寄生虫と、腸など体の中に寄生する内部寄生虫とに分けることができます。さらに細かく分類すれば、寄生虫の種類によって生態も、出る症状もさまざまなのですが、ここではざっくりと概要を押さえておくことにしましょう。

猫の外部寄生虫
外部寄生虫は、毛の中や皮膚など、体の外側に棲みつく寄生虫をいいます。外部寄生虫に寄生されたときの症状として代表的なものは、痒みです。そのほか、皮膚に炎症を起こすこともあれば寄生虫が運んできた病原菌で二次感染を引き起こすこともありますし、アレルギー症状が出ることもあります。
猫の内部寄生虫
内部寄生虫は、腸など猫の体内に棲みつく寄生虫です。種類がとても多いだけでなく感染経路もさまざま、母猫の胎盤を通して感染するケースもあります。おもな症状としては、下痢や嘔吐のほか、貧血や食欲不振など。特に子猫の場合、寄生虫の種類によっては、命に危険が及ぶことがあります。

猫の外部寄生虫の種類


次に、猫の外部寄生虫の種類について見てみましょう。数が非常に多いため、特に気をつけたい代表的な虫について解説します。

まずは、ノミです。ノミの種類は数えきれないほどありますが、猫に寄生するのは「ネコノミ」と呼ばれるもの。繁殖力が強く、「ネコノミ」と名づけられていながら犬や人間にも悪さをすることがあるという困った存在です。

ノミが寄生すると、痒みを感じるようになります。それだけでなく、血を吸われたときに唾液が侵入すると、激しい痒みや皮膚の炎症、脱毛などのアレルギー症状を起こすこともあるのです。また、大量のノミに血を吸われると、貧血になることも。さらに気をつけたいのは、ノミが媒介する寄生虫により、ほかの病気を発症する可能性もあることです。

ノミと並んで注意を払いたい外部寄生虫として、マダニが挙げられます。マダニもノミと同じように、痒み、皮膚炎、貧血などの症状を引き起こすほか、さまざまな病気を媒介する寄生虫ですが、やっかいなことといえば皮膚に食い込んでしまうこと。

そのほかにも、猫の耳に寄生するミミダニ、全身に寄生するヒゼンダニなどが猫に寄生する外部寄生虫として知られています。いずれも激しい痒みをもたらすため、早期の治療が必要です。

猫の内部寄生虫の種類


次に猫に寄生する内部寄生虫の中から、特に注意したいものを解説します。
筆頭は、線虫類に属する猫回虫です。白い糸のような形状をした虫で、体長は長いもので10cmほどもあります。感染したときの症状は、下痢や嘔吐のほか、食欲不振、発育不良などです。

サナダムシの名で知られる条虫も、猫によく見られる内部寄生虫のひとつ。おもな症状は、下痢や嘔吐などです。感染すると小腸で繁殖するのですが、その感染経路のことはぜひ覚えておきましょう。条虫を媒介するのは、ノミであることが一般的です。そのため、条虫に感染していることがわかったら、条虫駆除と同時にノミ駆除の対策もしなければなりません。

寄生されていても猫が健康であれば症状は出ないのに、猫の体調が悪くなったり抵抗力が下がったりしたときに症状が出る内部寄生虫に、コクシジウムという虫がいます。症状は、下痢のほか、脱水や血便、貧血、体重低下などです。

ほかにも、鉤虫(こうちゅう)や糞線虫も、下痢、小腸の出血による血便、貧血、脱水などの症状をもたらす内部寄生虫として知られています。

なお、内部寄生虫は、人間に寄生する可能性が否定できません。愛猫のためにも飼い主さんのためにも、もし症状が見られたときには、早急な治療が必要です。

猫の寄生虫の治療方法


では、愛猫が寄生虫に感染したら、どのような治療が行われるのでしょうか。
寄生虫の種類によって異なる面もありますが、基本的には、飲み薬、注射、スポットタイプやスプレータイプの外用薬での治療が基本です。獣医師の診断や処方に従いましょう。

なお、多頭飼育などで複数の愛猫がいる場合は、猫から猫への感染を防ぐために、すべての愛猫に投薬が必要となることがあります。その必要性については、獣医師のアドバイスに従って対処することが大切です。

特に気をつけたいノミとマダニは、定期的に投与する予防薬も開発されていますから、獣医師に相談してみましょう。


外部寄生虫、内部寄生虫、どちらの寄生虫も身近なところから感染する可能性があります。寄生されてしまうと、愛猫だけでなく、飼い主さんに影響が及ぶこともあるのが難点です。痒みや下痢、嘔吐などの症状が見られたら、速やかに獣医師の診察を受けてください。

監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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