猫の口内炎の症状とは? 原因・治療法などもあわせて解説
経験した人ならわかる、あの口内炎の痛み。実は、猫も人と同じように口内炎を患うことがあります。違う点を挙げるとすれば、人の口内炎は部分的ですが、猫の口内炎は口の中全体に広がりやすいことです。そうなる前に気をつけてあげたいところですが、そもそも猫の口内炎の原因は何なのでしょうか。発症したらどのような症状が見られるのでしょうか。治療法も含め、お伝えします。
猫の口内炎とは?
猫の口内炎は、歯ぐき(歯肉)や舌、口の中の粘膜などに、炎症や潰瘍ができてしまう疾患のことです。炎症や潰瘍は、口の中の一部に生じるケースもあれば、口の中全体に広がってしまうケースも。前者の症状は軽度ですが、治療をしないでいると、後者のように重度の症状に進行してしまうことが猫では多く見られます。
口内炎が重度の症状になると、多くの場合、出血や激しい痛みを伴うため、食事をとることが困難になるので注意が必要です。痛みがあることもそうですが、お腹が空いているのに満足に食事ができないというのは、愛猫にとって大きなストレスになります。
猫の口内炎の症状
では、猫が口内炎を患うとどのような症状が見られるのでしょうか。早期発見のためにも、確認しておきましょう。気づきやすい症状のひとつが、かなり強い口臭です。口臭は口内炎ではない病気で出ることもあるため「口臭=口内炎」と断定できるわけではありませんが、口内炎の症状のひとつであることは間違いありません。そのほか、ねばついたよだれが出たり、出血したりといった症状も見られます。
「もしかしたら口内炎ではないか?」という症状は、愛猫の様子をよく見ることで分かることもあります。例えば、毛づくろいをしなくなったり、お腹が空いているようなのに食べることを嫌がったりといったことは、口内炎による痛みが原因かもしれません。よだれや出血により、以前に比べると口の周りが汚れていることもありますし、汚れた口をぬぐった前足が汚れてしまうケースもあります。
猫の口内炎の原因
では、猫の口内炎は、何が原因で発症するのでしょうか。はっきりとした原因は、現時点ではまだわかっていないというのが実情です。ただし、原因として考えられていることは、いくつかあります。
ひとつは、ウイルスや細菌による感染症です。ウイルスでは猫カリシウイルスや猫白血病ウイルスなど、細菌では猫マイコプラズマやパスツレラのほか、口腔内に棲息する細菌の変化などが挙げられます。こういったウイルスや細菌に感染すると、免疫力や体の抵抗力が低下してしまうため、その結果、口内炎を引き起こすのではないかと考えられているのです。
免疫力が低下するという観点でいうと、腎不全や糖尿病など、免疫力を低下させる病気もあります。そういった病気が原因となって口内炎ができてしまうことも、可能性として排除できません。
口の中の病気が原因になることもあります。例えば、猫によく見られる歯周病がそのひとつです。歯周病は、歯のつけ根や歯ぐきに細菌が感染して炎症等が生じる病気ですが、それが放置されることで口内に炎症が広がってしまうことがあります。
猫の口内炎の治療法
人の口内炎は自然に治るのを待つことが多いと思いますが、猫が口内炎になったら治療をすることが一般的です。その方法には、次のようなものがあります。
まずは、抗生物質、抗ウイルス薬、炎症や痛みを抑える薬などを投与することです。もちろん、診察しながら原因と考えられる病気を推測し、その症状に対処する薬を処方して様子を見ることもあります。
場合によっては、歯石の除去、もしくは抜歯といった外科的な処置も行います。歯石の除去は口腔内を清潔に保ち、細菌数を抑えるための処置で、歯周病がひどく進行しているときに行われることが多いのですが、歯石除去だけでは対応が難しい場合は抜歯をすることもあります。
歯石の除去も抜歯も、愛猫が暴れないように全身麻酔をかけて行いますので、愛猫にとっては体力的な負担がかかる処置となることを覚えておきましょう。
猫の口内炎は予防できる?
猫の口内炎には、予防が期待できると言われている方法がいくつかあります。愛猫につらく痛い思いをさせないためにも、ぜひ実践してみてください。
ひとつは、歯をきれいにする習慣をつけ、口の中を清潔に保てるようにケアすることです。猫用の歯磨きグッズ、デンタルケア用のおやつなども市販されているので、試してみてもいいのではないでしょうか。口腔ケアを習慣にすると、口の周りに触れられても嫌がらなくなります。結果、口の中のチェックがしやすくなり異変に早く気づける点が大きなメリットです。
ウイルスの感染を防ぐためにはワクチン接種も効果的ですし、口内炎予防や免疫力アップを目的としたサプリも販売されています。
愛猫にとって口内炎は、とてもつらい病気です。口の中に痛みがあると、食事も毛づくろいも思うようにはできません。これは、愛猫にとって大きなストレスですし、食事ができないことで体調を崩してしまうこともあります。そのようなことのないように、日ごろから口腔チェックを習慣にして、予防を心がけていきましょう。何か異変に気づいたら、早めに診察を受け治療することも大切です。愛猫のためのお口のチェック、さっそく始めてみてくださいね。
- 監修者プロフィール
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牛尾 拓(ウシオ タク)
経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許