犬の椎間板ヘルニアの症状と原因・予防・治療方法について解説

2022.10.24
犬の椎間板ヘルニアの症状と原因・予防・治療方法について解説
どんなに愛犬の健康に気をつけていても、病気にかかってしまうことがあります。そんな時のために、病気の症状や原因、予防法、治療法について理解し、適切な対処ができるようにしておきましょう。この記事では、犬の病気の中から椎間板(ついかんばん)ヘルニアを取り上げて解説します。ぜひ愛犬の健康な生活にお役立てください。
目次



犬の椎間板ヘルニアとは


はじめに、椎間板ヘルニアとはどのような病気なのか、概要を押さえておきましょう。わかりやすいように「椎間板」と「ヘルニア」に分けて、解説します。

まずヘルニアですが、ヘルニアとは「体内の器官や臓器などが、本来あるべき位置からずれて飛び出してしまう状態のこと」です。ずれる部位によって「椎間板ヘルニア」「鼠径(そけい)ヘルニア」「臍(さい)ヘルニア」などと診断されます。つまり椎間板ヘルニアは、椎間板にずれが生じた症状ということ。

では椎間板とは何かというと、背骨にある骨よりもやわらかい組織で、骨と骨の間に存在し、クッションのような役割を果たしています。ところが、何らかの理由により飛び出してしまい、神経を圧迫することがあるのです。神経が圧迫されると、痛みやしびれが生じます。この症状が椎間板ヘルニアです。

なお椎間板ヘルニアは、トイ・プードル、ダッグスフンド、ミニチュア・ダックスフンド、フレンチブル・ドッグ、ペキニーズ、ウェルシュ・コーギーなど「軟骨異栄養性犬種(なんこついえいようせいけんしゅ)」に分類される犬に多いことが知られています。

犬の椎間板ヘルニアの症状と5つのグレード


犬の椎間板ヘルニアは、症状の重さによって次の5つのグレードに分類されています。それぞれのグレードの症状は次の通りです。
グレード1
いちばん軽い症状がグレード1です。背中を痛がる素振りを見せる、背中に負担がかかる動きを嫌がる、抱き上げると痛がって鳴くなどの症状が見られます。神経の機能に問題はないものの、体勢によって痛みが出る状態です。
グレード2
グレード2になると、歩くときにふらついたり、つま先をこすったりという症状が見られるようになります。
グレード3
グレード3は、後ろ足が動かせない、後ろ足を引きずりながら前足だけで歩くなど、足に麻痺症状が出ている状態です。グレード3以降は、重度の分類になります。
グレード4
排尿困難の症状が出ます。つま先に強い刺激を与えれば反応はするものの、感覚の麻痺が進行しつつある状態です。
グレード5
椎間板ヘルニアではいちばん重い状態で、足の感覚が完全に麻痺し、痛みをまったく感じることができません。

なお、グレード4までは外科手術で90%以上の症状の改善が見られますが、グレード5になってしまうと、時間が経過すればするほど改善率が下がります。ですから、グレード5に進行したことが判明したら、速やかに手術をするなどの判断が必要です。

犬の椎間板ヘルニアの原因


なぜ犬が椎間板ヘルニアになるのか、その原因としては大きく2つのことが指摘されています。

ひとつは、加齢です。椎間板は、「髄核(ずいかく)」という組織の周りを「線維輪(せんいりん)」という組織が取り巻く構造になっています。しかし年齢を重ねると線維輪が変性し、背側に突出することがあります。突出した線維輪で神経が圧迫され椎間板ヘルニアの症状が現れます。このパターンでは病気がゆっくりと進行します。
もうひとつの原因は、遺伝です。先ほど「軟骨異栄養性犬種」に分類される犬は、椎間板ヘルニアを発症しやすいとお伝えしました。理由は、この犬種の遺伝子を持つ犬の場合、本来はゼリー状の髄核が固まりやすいという特徴があるからです。

固まった髄核が周囲の線維輪を圧迫することで亀裂が生じると、髄核が線維輪を突き破り元の位置からはみ出て神経を圧迫します。このパターンでは病気が急に発症します。

犬の椎間板ヘルニアの予防法


では、犬の椎間板ヘルニアを予防するにはどうしたらいいのでしょうか。

まずは体重管理をして、太らせすぎないようにしましょう。栄養バランスの取れた食事、適度な運動で、しなやかな体を保てるようにしてください。2本足で立たせるなど、犬にとって無理な姿勢や動作をさせないこともポイントです。

また、床材が滑りやすいと犬の足腰に負担がかかってしまいます。滑りやすい床材の場合は、カーペットやマットを敷く、床材を滑りにくいものに替えるなどの対応をして、予防につなげましょう。

犬の椎間板ヘルニアの治療方法


もし、椎間板ヘルニアであると診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。

軽度の場合は、抗炎症薬や鎮痛薬などの内服薬を投与して様子を見るか、手術をするかどちらかになります。服薬の場合は、炎症や痛みを取り除きながら、できるだけ安静にして過ごすことも大切です。

症状が重い場合は、手術により飛び出した椎間板を除去します。ただし、多少の麻痺が残るなど完全に治癒しないケースもありますし、術後の体調管理やリハビリも欠かせません。


犬の椎間板ヘルニアは、特に「軟骨異栄養性犬種」で発症しやすい病気ですが、そのほかの犬種でも起きないわけではありません。日ごろから愛犬の様子をよく観察し、椎間板ヘルニアが疑われる様子が見られたら、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。重症化させないためのポイントは、早期発見と早期治療です。

監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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