獣医師が解説!犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは? 症状と予防・治療方法など

2022.10.24
獣医師が解説!犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは? 症状と予防・治療方法など
犬ではポピュラーな疾患のひとつに、パテラ(膝蓋骨脱臼)があります。愛犬の様子をよく見ていれば気づくことのできる病気なので、飼い主さんとしては、ぜひ症状について把握しておきましょう。どんな症状かがわかれば予防することもできますし、発症したときにも早めに治療を受けることができます。
この記事でわかりやすく解説しますので、どうぞ参考にしてください。
目次



犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは


はじめに、犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とはどのような疾患であるかについて理解を深めておきましょう。

パテラは英語で「patellar」と書き、膝蓋骨(しつがいこつ)を意味する単語です。ただし、動物の病気として扱われる「パテラ」は、膝蓋骨に脱臼が起きた状態、つまり膝蓋骨脱臼のことをいいます。膝蓋骨脱臼を英語にすると、正確には「patellar luxation(パテラ ラクセイション)」となりますが、犬ではよく見られる病気ということもあり、通称「パテラ」と呼ばれています。

さて、パテラ(膝蓋骨脱臼)と診断されたとき、犬の体の中ではどのようなことが起きているのでしょうか。状態としてはわかりやすく、膝のお皿の骨である膝蓋骨が、あるべき位置からずれてしまっています。膝蓋骨は膝頭に位置している骨なので、正常な状態では正面を向いて収まっているものです。しかし、先天的な要因、もしくは後天的な要因により、内側あるいは外側にずれてしまうことがあります。これが、パテラ(膝蓋骨脱臼)です。参考までに、内側にずれる場合を「内方脱臼」、外側にずれる場合を「外方脱臼」といいます。

内方脱臼と外方脱臼では内方脱臼のほうが見られる頻度が高く、片足に起きることもあれば両足に起きることも。犬種に関係なく発症するといわれていますが、トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、チワワ、ヨークシャ・テリアといった小型犬に多いことが知られています。

犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の症状


犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、骨の状態や程度により、グレード1からグレード4までの4つのグレードで診断されます。
グレード1
膝蓋骨を手で押すと外れてしまうものの、手を離せば元に戻る状態です。激しい運動をした後に症状が出ることもあります。グレード1はごく初期の段階ということもあり、犬に特に変わった様子は見られませんが、後ろ足を上げて鳴いたり、スキップのような動作をしたりという場合、パテラ(膝蓋骨脱臼)の可能性もあるといえます。骨がずれたための動作ということです。
グレード2
基本的には膝蓋骨が正常に収まっているのですが、足をちょっと曲げ伸ばしするとずれてしまう状態です。骨を手で押してやると元の位置に戻り、日常生活に大きな支障はありません。
グレード3
グレード3は、膝蓋骨が日常的に脱臼している状態です。手で押すと元に戻りますが、すぐにずれてしまいます。後ろ足を引きずるように歩く様子が見られるほか、大腿骨など、ほかの骨が変形してしまうことも。
グレード4
グレード4になると、膝蓋骨が常にはずれた状態になり、手で押しても戻りません。ほかの骨が変形するなどの影響が及ぶほか、後ろ足をつけずに歩く、うずくまるように歩くなどの様子が見られ、正常な歩行が困難になってしまいます。

犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の予防法

パテラ(膝蓋骨脱臼)は、膝関節に負担がかからないようにする日常生活を心がけることで予防できます。

まずは、床材のチェックです。フローリングやタイルのように滑りやすい素材は、発症だけでなく症状の悪化にもつながります。愛犬が日常的に過ごす場所は、カーペットを敷くなどして滑りにくくしておきましょう。また、爪と肉球の間の毛が伸びた状態になっていると、踏ん張りがきかず滑りやすくなってしまいます。定期的にチェックし、ケアすることも大切な予防の一環です。

高いところから飛び降りたり、激しく運動したりといったことも、関節に大きな負担がかかります。高いところにのぼらせない工夫、運動をさせすぎない配慮もしていきましょう。

また、人間も同じですが、体重が重いと膝に負担がかかってしまいます。標準体重よりも太りすぎないように体重管理をしてください。太りすぎている場合は、減量することも悪化させないためには必要です。

もうひとつ、関節をケアするためのサプリメントを使うことも予防につながります。処方する病院も増えつつあります。

犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の治療方法

最後に、パテラ(膝蓋骨脱臼)の治療方法についてお伝えします。治療方法は、投薬や体重管理などによる内科的なものか、外科的な手術をするかのいずれかです。

症状が軽い場合は前者を選択することが多く、サプリメントや痛み止めを処方しながら、生活環境の改善、減量などの方法で治療にあたります。内科的管理で対処できない場合は、手術が必要です。手術の方法はいくつかあり、犬の種類や具体的な症状、年齢によって異なります。

犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、珍しくない疾患です。症状は4つのグレードに分類され、軽いうちなら日常生活に気をつけることで対処できますが、悪化した場合は手術をしなければならなくなります。ふだんから愛犬の様子や生活環境に気をつけ、かわいい愛犬をパテラ(膝蓋骨脱臼)から守ってあげましょう。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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