【26年最新】獣医師が解説!犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは?原因・症状・治療法・予防まで詳しく解説

犬に多い関節疾患「パテラ(膝蓋骨脱臼:しつがいこつだっきゅう)」について、原因・症状・グレード分類・予防法・治療内容や費用まで獣医師がわかりやすく解説します。初期症状の見極め方や手術が必要になるケース、日常でできるケア方法も丁寧に紹介しています。
- 目次
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは
はじめに、犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とはどのような疾患であるかについて理解を深めておきましょう。
パテラは英語で「patellar」と書き、膝蓋骨(しつがいこつ)を意味する単語です。ただし、動物の病気として扱われる「パテラ」は、膝蓋骨に脱臼が起きた状態、つまり膝蓋骨脱臼のことを示す用語として使われています。膝蓋骨脱臼を英語にすると、正確には「patellar luxation(パテラ ラクセイション)」となりますが、犬ではよく見られる病気ということもあり、通称「パテラ」と呼ばれています。
さて、パテラ(膝蓋骨脱臼)と診断されたとき、犬の体の中ではどのようなことが起きているのでしょうか。状態としてはわかりやすく、膝のお皿の骨である膝蓋骨が、あるべき位置からずれてしまっています。膝蓋骨は膝頭に位置している骨なので、正常な状態では正面を向いて収まっているものです。しかし、先天的な要因、もしくは後天的な要因により、内側あるいは外側にずれてしまうことがあります。これが、パテラ(膝蓋骨脱臼)です。参考までに、内側にずれる場合を「内方脱臼」、外側にずれる場合を「外方脱臼」といいます。この脱臼が起こるたびに膝関節にズレを生じさせることになるため、徐々に関節部位に炎症が起こり痛みや変形などの骨格への影響が出てくることがあります。
内方脱臼と外方脱臼では内方脱臼のほうが見られる頻度が高く、片足に起きることもあれば両足に起きることもあります。犬種に関係なく発症するといわれていて、5頭に1頭がパテラを患っていると言われています。トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、チワワ、ヨークシャ・テリアといった小型犬に多いことが知られていて、日本におけるこれらの犬種では4頭に1頭以上の発生率だという報告もあります。
犬のパテラの初期症状

犬の膝のお皿が外れやすくなる「パテラ(膝蓋骨脱臼)」は、初期の段階でも行動に小さな変化が現れることがあります。日常の様子に違和感が見られる場合、早めに気づくことが対処の第一歩になります。
初期症状としては、次のようなサインがみられやすいとされています。
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不自然な歩き方(スキップするように片足を浮かせる など)
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段差や階段を嫌がる
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足を後ろに伸ばすしぐさが増える
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立ち上がる際に一瞬ためらう、ぎこちなさがある
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突然「キャン」と鳴く
これらはどれも軽度の異変として見過ごされがちですが、放置すると進行する可能性があります。気になる変化が続くときは、早めに動物病院で相談することが大切です。
犬のパテラの症状犬のパテラにおける4つのグレード
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、脱臼の程度によって症状が大きく異なります。状態は4つのグレードに分類され、それぞれで見られる行動や歩き方が変化します。まずは、どのグレードでどのような症状が起こりやすいのかを理解することが大切です。
以下に、グレードごとの特徴を解説します。
グレード1
グレード1では、膝蓋骨を手で押すと外れますが、手を離すと元に戻る状態です。犬は普段の生活で特に異常な様子を見せませんが、激しい運動の後に症状が現れることがあります。
グレード2
グレード2では、基本的に膝蓋骨は正常な位置に収まっていますが、足を曲げ伸ばしすると脱臼します。手で膝蓋骨を押すと元の位置に戻り、日常生活には大きな支障はありません。
グレード3
グレード3では、膝蓋骨が日常的に脱臼し、手で押してもすぐにずれてしまいます。犬は後ろ足を引きずるように歩く様子が見られることがあります。また、ほかの骨が変形するなどの影響も見られる場合があります。
グレード4
グレード4では、膝蓋骨が常に脱臼した状態であり、手で押しても元に戻りません。犬はほかの骨が変形するなどの影響を受け、後ろ足をつけずに歩いたり、うずくまるように歩いたりする場合があります。
グレードが低いほど症状は軽微で瞬間的です。パテラの症状に気づいている飼い主さんはわずか10%程度という報告もあり、見逃してしまうことも多い疾患です。動物病院では触診で獣医師が簡単にチェックできる項目でもありますので、健康診断や予防接種の際などに獣医師にチェックしてもらうとよいでしょう。
犬のパテラの原因

犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、単に「膝のお皿が外れやすい」というだけではなく、骨格のつくり、筋肉や靭帯の状態、そして遺伝的な体質など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。
特に小型犬では発症しやすいと言われますが、育った環境や日常の運動量によってもリスクが変わるため、原因を正しく理解することが早期の気づきと予防に直結します。ここでは、パテラの発症に関与するとされる主な要因について詳しく解説します。
遺伝的要因
特定の犬種では、遺伝子によってパテラの発生リスクが高まることがあります。遺伝的な要素がパテラの発症に関与することは、獣医学の研究によって明らかにされています。犬種によっては、特定の遺伝子の変異がパテラのリスクを増加させる可能性があります。
筋肉の弱さ
筋肉の発達不足や筋力の不均衡がパテラを引き起こす可能性があります。犬の筋肉は、パテラの予防に重要な役割を果たします。筋肉の弱さや不均衡は、膝蓋骨の正しい位置を維持するためのサポートを提供できず、パテラの発症リスクを高める可能性があります。
靭帯の緩み
脚の靭帯が弱い場合、膝蓋骨が正しい位置に収まらず、脱臼のリスクが高まります。靭帯は、関節の安定性を維持するために重要な役割を果たしています。靭帯の緩みや弱さは、膝蓋骨の安定性を損ない、パテラの発症リスクを増加させる可能性があります。
犬のパテラの予防法
犬のパテラを予防するためには、膝関節に負担をかけないようにすることが重要です。以下に予防法をいくつか紹介します。
床材のチェック
滑りやすい床材(フローリングやタイルなど)は、犬のパテラの発症や症状の悪化につながる可能性があります。愛犬が日常的に過ごす場所では、カーペットなどを敷くなどして滑りにくくしておきましょう。また、爪と肉球の間の毛が伸びていると、踏ん張りにくくなり滑りやすくなることもあります。定期的にチェックし、ケアすることも予防の一環です。
高いところからの飛び降りを避ける
高いところからの飛び降りや、激しい運動は関節に大きな負担をかけるため、予防の観点から避けるべきです。愛犬が高い場所にのぼれないように工夫し、運動量を適切に管理することも重要です。
どうしても高い場所を利用する習慣がある場合には、段差をやわらげるためのペットスロープやステップを設置することで、関節への負担を大きく減らすことができます。また、日常の運動量を適切に管理し、無理なジャンプや急な動作を避けることも予防には欠かせません。
体重管理
体重が適正範囲を超えると、膝に負担がかかります。愛犬の体重を適切に管理し、肥満を防止することは予防につながります。
まずは日々の食習慣を見直し、何を・どれくらい与えているかを把握することが大切です。おやつは高カロリーなものが多く、与えすぎるとすぐに体重が増えてしまうため、量や頻度を必要最小限に抑えます。
また、人間用の食べ物は糖分や脂肪分が多く、体重増加だけでなく健康トラブルの原因にもなるため避けましょう。愛犬が1日に必要とするエネルギー量をもとに給与量を調整し、規則正しい食習慣を保つことが基本です。
さらに、去勢・避妊後やすでに体重が気になる犬には、低カロリーで満腹感を得やすい体重管理用フードを活用すると、過剰な食欲を抑えながら栄養バランスを維持できます。現在の体重を維持したい場合には、「インドア」や「室内犬」といった表記のある飼育環境に合ったフードを選ぶことで、不要なカロリー摂取を避けられます。
食事だけでなく、適度な運動も体重管理には欠かせません。室内飼いの小型犬であっても散歩は重要で、犬種・年齢・体力に応じた運動量を確保することで、摂取したカロリーを適切に消費できます。
ただし、すでに肥満気味の犬は急に運動量を増やすと関節に負担がかかるため、少しずつ距離や時間を伸ばしていくことが望ましいです。このように、食事・間食・運動のバランスを整えることが、パテラ予防のための体重管理では特に重要になります。
関節をケアするサプリメントの使用
関節の健康をサポートするために、食事の栄養バランスに加えて、サプリメントを活用するのも1つの方法です。特にEPA・DHAなどの脂肪酸は、食事だけでは十分に摂取しにくい場合もあり、適切に補うことで関節や全身の健康維持に役立つとされています。また、グルコサミンやコンドロイチンなど、関節の機能をサポートする成分を含むサプリメントも市販されています。
ただし、サプリメントは薬ではなく、健康をサポートするものです。犬の体質・年齢・症状によって治療方法は異なります。「薬や手術が必要なのか」「サプリメントであれば愛犬にどの成分が合うか」は獣医師と相談したうえで判断することが大切です。自己判断での使用は避け、獣医療の専門家のアドバイスを受けながら適切に取り入れるようにしましょう。
サプリメントについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
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【獣医師監修】犬にサプリメントは必要?不要?与える場合の注意点について
犬のパテラの治療方法・治療費用

犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、症状の程度や発症しているグレードによって治療の選択肢が大きく変わります。初期段階では生活環境の見直しや痛みのコントロールで改善を目指すケースもありますが、進行が進んだ場合には根本的な改善のために外科手術が必要になることもあります。
治療方法を理解することは、愛犬にとって最適な判断を行うために重要であり、併せて治療費用の目安を知っておくことも飼い主の負担を考えるうえで欠かせません。ここでは、内科的な管理と外科的な手術、それぞれの特徴と費用の目安について解説します。
内科的な管理
パテラのグレード1〜2のように症状が比較的軽度な場合は、まず内科的な治療(保存療法)が選択されることが多く、手術を行わずに症状をコントロールできる可能性があります。膝蓋骨が自然に元の位置へ安定する「自然治癒」は基本的に期待できませんが、生活環境の改善や筋力強化によって、脱臼が起こりにくくなるケースは少なくありません。
内科的な治療では、獣医師がサプリメントや痛み止めを処方しつつ、日常生活の見直しを組み合わせて進めていきます。例えば、体重管理によって膝への負担を減らしたり、太ももの筋肉を鍛えるリハビリや軽いトレーニングによって関節を支える力を高めたりすることで、症状がほとんど現れなくなることもあります。
また、滑りにくい床材の利用や段差を避ける環境づくりなどの生活改善も、内科的管理の重要なポイントです。特に跛行(片足を引きずる動作)が軽度で、日常生活に大きな支障がない場合や、筋力が発達しやすい若い犬では、この保存療法が有効に働くことがあります。
サプリメントや薬などを使用する場合の治療費用は、1回あたり数千円〜数万円程度が目安とされています。症状の程度や治療内容によって費用は変動するため、継続する期間も含めて獣医師と相談しながら進めることが大切です。
外科パテラ手術
パテラの症状が進行しており、グレード3〜4のように膝蓋骨が常に脱臼している、あるいは関節の変形が見られる場合には、外科的な手術が求められることが多くなります。内科的な管理では改善が難しいケースや、歩行に大きな支障が出ている場合は、根本的に膝蓋骨の位置を安定させるための外科的アプローチが必要です。
外科手術にはいくつかの方法があり、犬種・骨格・年齢・脱臼の程度によって最適な術式が選ばれます。関節の溝を深くする手術や、膝蓋骨を正しい位置に引き寄せるための骨の矯正など、複数の手法が組み合わせて行われる場合もあります。手術には一定のリスクが伴いますが、多くのケースで歩行機能の改善や痛みの軽減が期待され、長期的には生活の質(QOL)の向上につながります。
手術費用は病院や術式によって幅がありますが、一般的な目安として1回あたり15万〜50万円ほどと言われています。入院費や術後のリハビリ、再診料が別途かかることもあるため、事前に獣医師へしっかり相談し、全体の費用感を理解しておくことが大切です。
犬のパテラについてよくある質問
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、小型犬を中心に多く見られる関節疾患で、グレードや症状の進行度によって治療方法も大きく変わります。症状が軽い場合は日常生活で気づきにくいこともあるため、飼い主が正しい知識を持つことが重要です。ここでは、飼い主からよく寄せられる疑問に回答します。
どんな犬種がなりやすい?
小型犬全般(トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、チワワ、ヨークシャ・テリア、パピヨン、マルチーズなど)だけでなく、柴犬、ゴールデン・レトリーバーなどでも見られます。
自然に治ることはある?
パテラ(膝蓋骨脱臼)は、膝蓋骨が本来の位置から外れる構造的な問題であるため、完全に自然治癒することはほとんどありません。ただし、グレード1〜2の軽度な段階であれば、手術を行わずに症状をコントロールできるケースが多くあります。膝蓋骨そのものが自然に「治る」わけではなく、筋力や体重管理、環境改善によって脱臼しにくい状態を維持できるというイメージに近いと言えます。
まとめ 犬のパテラは適切な予防や治療が重要
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、犬の膝関節の疾患であり、膝蓋骨があるべき位置から脱臼してしまう状態を指します。症状の程度によって軽度から重度まで分類され、適切な予防や治療が重要です。予防法としては、床材のチェック、高いところからの飛び降りの回避、体重管理、関節をケアするサプリメントの使用が挙げられます。治療方法としては、内科的な治療と外科的な手術があります。愛犬の健康と幸福を守るために、定期的な健康チェックや症状の監視が重要です。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許



