猫の膀胱炎はどんな症状? 原因や予防・治療法など

2023.02.04
猫の膀胱炎はどんな症状? 原因や予防・治療法など

猫がかかる病気にはさまざまなものがありますが、膀胱炎は猫が発症しやすい病気のひとつです。初期症状に気づきにくく、なおかつ再発しやすい病気で、重篤化すると命の危険にさらされることも…。しかし、症状や原因、治療法や予防法を知っていれば、速やかに対処することができます。こちらの記事で解説しますので、お役立てください。


目次

猫の膀胱炎とは?


初めに、猫の膀胱炎とは、どのような病気なのかについて把握しておきましょう。膀胱の役割は人間も猫も同じで、おしっこを貯めることです。この膀胱の内側に、何らかの原因により炎症が生じることがあり、この状態を膀胱炎といいます。治療をしても再発を繰り返すことが多く、時には治りにくい状態になってしまうこともあります。


なお、人間の膀胱炎は男性より女性のほうが多く発症するとされていますが、猫の場合は性別による差はないというのが一般的な見解です。


参考までに、「猫下部尿路疾患」についても触れておきましょう。これは、膀胱から尿道までをひとまとめにした「下部尿路」に異常が見られたときの病名で、膀胱炎のほか、尿路結石、尿道炎などが含まれます。



猫の膀胱炎の症状


膀胱炎になると、猫にはさまざまな症状が見られるようになります。代表的な症状は、少量ずつ何度も排尿するというもの。これは膀胱内部の炎症により、少し尿がたまっただけで尿意を感じてしまうためです。


いわゆる頻尿に該当するのですが、ポイントは尿量が少ないこと。付随して、トイレに間に合わない、尿がぽたぽた垂れてくるという症状が出ることもあります。また、排尿するときに痛そうに鳴く、トイレ以外で排尿する、陰部をしきりになめるなど不快感を思わせる行為も、膀胱炎の症状のひとつです。


頻尿の一方で、尿が出にくくなることもあります。トイレに入っても尿が出ていない、尿が出ない状況が半日以上続くなどの症状がある場合は注意が必要です。


膀胱炎の症状は、尿の色やにおいにもあらわれます。濁った色の尿、赤やピンクなどの血尿、いつもよりきついにおいの尿が出たら、膀胱炎の可能性があります。また、症状の程度によっては、食欲が落ちたり元気がなくなったりするので、その点も気をつけて観察するといいでしょう。


なお、尿に異常があるということは、腎臓などほかの臓器に影響が及ぶ可能性があるので、放置は禁物です。受診をしないでいると、重篤化して腎不全や尿毒症を引き起こし、命が危ぶまれることもあります。



猫の膀胱炎の原因


どうして猫は膀胱炎を発症するのか、その原因について見ていきましょう。


猫の膀胱炎のよくある原因として挙げられるのが、膀胱や尿道にできる結石です。結石は、遺伝や食事内容などさまざまな要因によって生じますが、膀胱内部を傷つけてしまい、炎症を引き起こすことがあります。結石が膀胱の出口や尿道に詰まると、尿が出なくなってしまうこともあるので、結石が原因の場合は注意が必要です。


大腸菌やブドウ球菌などの細菌感染が原因となることもありますが、結石に比べると発症数はさほど多くありません。また、これと言って特定の原因が見当たらないことも多く、その場合はストレスや肥満が関係している可能性があると考えられています。



猫の膀胱炎の治療法


猫の膀胱炎は、尿検査、血液検査のほか、エコーやレントゲンなどの画像検査を総合して診断されます。そのうえで、原因を取り除く治療を行うことが基本です。特定の原因がわからない場合も、症状の軽減に向けた治療が行われます。


例えば結石が原因であるとわかったら、愛猫の状態に合わせた方法で結石を取り除く治療が行われ、点滴や投薬、療法食のほか手術が選択されることもあります。


原因が特定できない場合は、愛猫のストレスを取り除くことに主眼が置かれます。ストレスの原因はそれぞれですが、まず見直したいのがトイレの大きさや設置場所、トイレの清潔度などです。愛猫が気持ちよくトイレを使えるように環境を整えてあげましょう。


愛猫が過ごす空間も衛生に気をつけ、栄養バランスに配慮した食事を与えることも大事な治療の一環です。



猫の膀胱炎の予防法


猫の膀胱炎を予防するために、飼い主さんにできることがあります。愛猫につらい思いをさせないためにも、次のことを心がけましょう。


まずは、定期的に健康診断を受けることです。その際、必ず尿検査も受けてください。異常があれば、早期に発見することができ、すぐに治療を開始できます。


愛猫が常に新鮮な水が飲めるようにしておくことも、大切な予防法のひとつです。自動給水器や、飲み水を複数置くなど、やりやすい方法を取り入れてみましょう。


また、清潔好きの猫にとって、トイレの汚れは大きなストレスになり、それが排尿の我慢につながることもあります。トイレをいつも清潔に保つことはもちろん、愛猫が出入りしやすい形態になっているか、置き場所にストレスを感じないかをチェックし、改善できることはしてみてください。


食事では、栄養バランスに配慮し、肥満にならないように配慮しましょう。



猫の膀胱炎は発見が遅れて重篤化してしまうと、治療が困難なものになってしまうこともあります。だからこそ、予防を心がけ、定期的な健康診断で早期発見できるようにしていきましょう。

尿路結石についてもっと知りたいという方は「猫の尿路結石の原因や治療方法は?手術が必要?」もあわせて読んでみてください。


 

監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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