【獣医師監修】犬の嘔吐の原因とは?動物病院に連れて行くべきサインも解説

2026.08.03
【獣医師監修】犬の嘔吐の原因とは?動物病院に連れて行くべきサインも解説

犬の嘔吐は比較的よく見られる症状ですが、「様子を見ても大丈夫なのか」「すぐに病院へ連れて行くべきなのか」と不安になる飼い主さんも多いでしょう。実際、空腹や食べ過ぎによる一時的な嘔吐もあれば、誤飲や消化器疾患など、緊急性の高い病気が隠れているケースもあります。


特に、吐いたものの色や状態、元気や食欲の有無は重要な判断材料です。本記事では、犬の嘔吐の原因や危険なサイン、家庭でできる対処法についてわかりやすく解説します。

目次

 

犬の嘔吐の原因とは?色や状態をチェック    
 

犬の嘔吐には、空腹による一時的なものから、病気や誤飲による危険なものまでさまざまな原因があります。特に、吐いたものの「色」や「状態」は原因を見極める重要な手がかりです。


たとえば、黄色い液体なら胆汁、白い泡なら胃液、赤い液体なら出血が疑われることがあります。また、未消化のフードや異物が混じっている場合も注意が必要です。


犬が嘔吐した際は、吐いた内容だけでなく、元気や食欲の有無、嘔吐の回数などもあわせて観察しましょう。少しでも異変を感じた場合は、早めに動物病院へ相談することが大切です。

黄色い液体(胆汁)や透明な液体・白い泡の場合

黄色い液体は「胆汁」が混じっている可能性があります。透明な液体や白い泡は「胃液や唾液」を含むことが多く、空腹時にみられることがあります。空腹時間が長いと胃酸や胆汁が逆流し、朝方や食前に吐くケースがあります。


単発で、吐いたあとに元気や食欲がある場合は、すぐに重篤な病気とは限りません。しかし、頻繁に繰り返す場合は胃腸炎や消化器疾患だけでなく、膵炎や肝疾患、腎疾患、内分泌疾患などが関係している可能性もありますので早めに動物病院を受診しましょう。


予防策としては、食事回数を増やして空腹時間を短くする、夜食を少量与えるなどが効果的です。また、急なフード変更やストレスが原因となることもあるため、生活環境の見直しも大切です。

未消化のフードや茶色の液体の場合

食べたものがそのまま出てくる場合は、早食いや食べ過ぎによる「吐出」の可能性があります。嘔吐は腹部の収縮を伴って胃や小腸の内容物を吐き出す現象です。一方、吐出は食事内容物が受動的に戻る現象で、未消化フードがそのまま出てくることがあります。食後すぐに吐いた場合は、胃に入って消化が始まる前に食道から戻ってきているケースも少なくありません。


勢いよく食べる癖がある犬では、早食い防止食器を使ったり、食事量を分けたりすることで改善が期待できます。


一方、茶色い液体には注意が必要です。茶色の嘔吐物はフードの色である場合もありますが、コーヒーかすのような茶色は「消化された血液」が混じっている可能性があり、胃潰瘍や消化管出血などが疑われます。


嘔吐だけでなく、元気消失、食欲低下、黒い便などが見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

血液が混じった赤い液体(鮮血)の場合

赤い血液が混じった嘔吐は、口の中や食道、胃、場合によっては呼吸器から出血している可能性があります。少量でも、繰り返す場合や鮮やかな赤色をしている場合は注意が必要です。


原因としては、胃炎や胃潰瘍、異物による粘膜損傷、中毒、感染症などさまざまな疾患が考えられます。強い咳のあとに血が混じるケースでは、呼吸器疾患が関係していることもあります。


特に、ぐったりしている、呼吸が荒い、何度も吐く、便にも血が混じるといった症状がある場合は、重篤な状態の可能性があります。


鮮血が混じる嘔吐は自己判断せず、迷わず動物病院を受診することが重要です。

異物(おもちゃの破片・紐など)が混じっている場合

おもちゃの破片や紐、布、ビニールなどの異物が混じっている場合は、誤飲・誤食による嘔吐が疑われます。犬は好奇心からさまざまなものを飲み込んでしまうことがあり、特に子犬では注意が必要です。


異物を吐き出した場合でも、すべてが体外へ出たとは限りません。体内に残った異物が腸閉塞を起こし、命に関わることもあります。


例えば紐状の異物は腸を傷つけやすく、血流不全を起こすこともあり、薬や電池、タバコ、人用の食品などは中毒を引き起こす危険性があります。


固いものや大きな異物を飲み込んだ場合はもちろん、少量でも不安がある場合は、できるだけ早く動物病院へ相談しましょう。

犬の嘔吐ですぐに動物病院へ連れて行くべきサイン
    

犬の嘔吐ですぐに動物病院へ連れて行くべきサイン

 

犬の嘔吐は一時的な体調不良で起こることもありますが、中には命に関わる病気のサインである場合もあります。特に、何度も吐く、吐きたそうなのに吐けない、元気や食欲がないなどの症状を伴う場合は注意が必要です。


犬は症状を言葉で伝えられないため、飼い主が小さな異変に気付くことが重要です。様子見で悪化してしまうケースもあるため、「いつもと違う」と感じたら早めに動物病院へ相談しましょう。

何度も繰り返し吐く(頻回な嘔吐)

1日に何度も嘔吐を繰り返す場合は、単なる食べ過ぎではなく、病気が原因となっている可能性があります。頻回な嘔吐は体内の水分や電解質が失われやすく、短時間で脱水症状が進行するため注意が必要です。

特に、膵炎や腎不全、胃腸炎、ウイルス感染症などの内臓疾患では、繰り返し吐く症状が見られることがあります。子犬や高齢犬は体力が低下しやすく、急激に状態が悪化するケースも少なくありません。

また、水を飲んでもすぐ吐く、吐くたびにぐったりしていく場合は危険なサインです。嘔吐が続くほど体力の消耗も激しくなるため、できる限り早めに動物病院を受診しましょう。

吐こうとするのに吐き出せない(えずき)

何度も「オエッ」とえずくのに何も出ない場合は、食道の異物、胃拡張胃捻転症候群(GDV)、重度の悪心などの可能性があります。特にGDVは大型犬で起こりやすく、発症すると短時間で命に関わる危険な病気です。


胃の中にガスがたまり膨らむことで呼吸や血流に影響を及ぼし、さらに胃がねじれてしまうと緊急手術が必要になる場合もあります。


えずき以外にも、お腹が異常に膨らんでいる、落ち着きなく歩き回る、苦しそうに呼吸する、よだれが大量に出るなどの症状が見られることがあります。


「吐けないのに吐こうとしている」状態は緊急性が高いため、様子見をせずにすぐ動物病院へ連れて行くことが大切です。

下痢・元気がない・食欲不振などを伴う

嘔吐に加えて、下痢や元気消失、食欲不振などの全身症状がある場合は、感染症や中毒、重度の消化器疾患などが疑われます。

特に、ぐったりして動かない、呼びかけへの反応が鈍い、水も飲まないといった状態は危険なサインです。犬は体調変化がわかりにくいこともあるため、明らかに元気がない場合はすでに症状が進行している可能性もあります。

また、誤飲による中毒やウイルス感染症では、嘔吐と下痢が同時に現れることがあります。血便や発熱、震えなどがある場合はさらに注意が必要です。

複数の症状が重なっている場合は緊急性が高いため、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

 

犬が嘔吐した時の対処法

 

犬が嘔吐した際は、慌てずに状態を確認し、必要に応じて適切に対処することが大切です。嘔吐は一時的な体調不良で起こることもありますが、重篤な病気や誤飲が隠れているケースもあります。


特に、何度も吐く、ぐったりしている、血が混じるなどの症状がある場合は早急な受診が必要です。まずは嘔吐物や犬の様子をよく観察し、動物病院へ相談する際に伝えられるよう準備しておきましょう。

嘔吐物を確認・撮影する

犬が吐いた場合は、まず嘔吐物の色や状態を確認しましょう。黄色い液体、白い泡、未消化のフード、血液の有無などによって、原因や重症度の目安になる場合があります。


ただし、見た目だけで完全に自己判断するのは危険です。繰り返し吐く、元気がない、異物が混じっているなどの危険サインがある場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。


また、嘔吐物の写真をスマートフォンで撮影しておくと、診察時に役立ちます。さらに、「食前か食後か」「何回吐いたか」「どんな内容物だったか」などをメモしておくと、獣医師が状態を把握しやすくなります。

無理に食事や水分を与えない

嘔吐直後は胃が敏感になっているため、すぐに食事や大量の水を与えると、再び吐いてしまうことがあります。軽度の単発的な嘔吐では、一時的に食事を控えて胃を休ませるように指導されることもありますが、子犬や高齢犬、持病のある犬では長時間の絶食が適さない場合もあるため、獣医師の指示に従いましょう。

また、水分をまったく摂れない状態が続くと脱水症状の危険があるため注意が必要です。少量ずつ様子を見ながら与え、再び吐かないか確認しましょう。


食事を再開する際は、消化に配慮した療法食や、ふやかしたフードなどを少量から与えるのがおすすめです。また、日頃から消化に良いフードへ切り替えたり、乳酸菌系のサプリメントを活用したりすることが予防につながる場合もあります。


ただし、子犬や高齢犬、持病がある犬は体調悪化が早いため、自己判断せず動物病院へ相談することが大切です。

中毒物質や異物を誤飲した疑いがある場合はすぐ動物病院へ

犬が異物や中毒性のあるものを誤飲した可能性がある場合は、すぐに動物病院へ連絡しましょう。特に、チョコレート、玉ねぎ、人用薬、タバコ、洗剤、電池などは危険です。


自己判断で無理に吐かせようとすると、かえって食道を傷つけたり、誤嚥を起こしたりする場合があります。そのため、まずは病院へ電話し、指示を仰ぐことが重要です。


受診時には、「何を」「いつ」「どのくらい食べたか」をできるだけ正確に伝えられるようにしておきましょう。パッケージや現物を持参すると、診断や治療がスムーズになることがあります。

 

犬の嘔吐についてよくある質問

 

犬の嘔吐についてよくある質問

 

犬の嘔吐は比較的よく見られる症状ですが、「様子を見ても大丈夫なのか」「病院へ行くべきなのか」と不安になる飼い主も多いでしょう。実際には、一時的なものもあれば、緊急性の高い病気が隠れているケースもあります。


ここでは、犬の嘔吐に関して特によくある疑問について解説します。判断に迷った際は、無理に自己判断せず、早めに動物病院へ相談することが大切です。

吐いた後でも元気なら様子を見て大丈夫?

1回だけの嘔吐で、その後に元気や食欲があり、普段通り過ごしている場合は、しばらく様子を見るケースもあります。特に、空腹による嘔吐や、食べ過ぎ・早食いによる軽い吐出は比較的よく見られます。


空腹が原因の場合は、1日の摂取量は変えずに食事回数を増やしたり、就寝前に少量与えたりすることで改善することがあります。


ただし、元気そうに見えても、吐いた内容物には注意が必要です。血液が混じる、異物がある、何度も繰り返す場合は、見た目以上に深刻な病気や誤飲が隠れている可能性があります。


また、誤飲直後は一時的に元気に見えることもあるため、「元気だから大丈夫」と決めつけず、少しでも不安がある場合は動物病院へ相談しましょう。

散歩中に草を食べて吐くのは危ない?

犬が散歩中に草を食べ、その後に吐くことは珍しくありません。犬が草を食べる理由は完全には解明されていませんが、行動学的要因や胃腸の違和感との関連が考えられています。


単発で、吐いたあとに元気がある場合は大きな問題がないこともありますが、注意点もあります。特に、公園や道端の草には除草剤や殺虫剤が付着している可能性があり、中毒を起こすリスクがあります。


また、植物の中には犬に有害な種類もあるため、むやみに食べさせるのは危険です。


さらに、頻繁に草を食べる場合は、胃腸の不調やストレス、消化器疾患などが隠れている可能性もあります。繰り返す場合や、嘔吐以外の症状がある場合は、一度動物病院で相談すると安心です。

 

まとめ 犬の嘔吐はよく状態を観察して判断する


犬の嘔吐には、空腹や食べ過ぎによる一時的なものから、誤飲や消化器疾患、感染症など重篤な病気が関係しているものまでさまざまな原因があります。特に、黄色い液体や白い泡、血液混じり、異物など、吐いたものの色や状態は重要な判断材料となります。


また、何度も吐く、吐きそうなのに吐けない、下痢や元気消失を伴う場合は、緊急性が高いケースもあるため注意が必要です。犬が嘔吐した際は、嘔吐物の写真や回数、タイミングなどを記録し、必要に応じて早めに動物病院へ相談しましょう。


日頃から誤飲しやすい物を片付ける、消化に配慮した食事を心がけるなど、予防を意識することも大切です。少しでも「いつもと違う」と感じた場合は、自己判断せず獣医師に相談するようにしましょう。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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