【獣医師監修】犬がご飯食べないのは危険?考えられる病気や対処法

食いしん坊の愛犬がご飯を残す、いつも美味しそうに食べていたフードに口をつけなくなるなど、愛犬がご飯を食べなくなるととても心配になります。犬がご飯を食べなくなる理由はいくつか考えられ、それぞれに対処法も異なります。
特に心配なのは、体調不良や病気の可能性でしょう。ご飯を食べない理由とその対処法、考えられる病気や飼い主さんを悩ませがちな「病院に連れて行くべきかどうか」の見極め方などについてご紹介します。
- 目次
犬がご飯を食べない原因と対処法
動物にとって、食べることは生きることだと言っても過言ではありません。ただ息をしたり心臓を動かしたりするためだけにもエネルギーは必要で、そのエネルギーを得るための手段が食べることだからです。
そのため、愛犬がご飯を食べなくなると飼い主さんは心配で、なんとか食べてもらおうと工夫を凝らします。ところがご飯を食べなくなる理由は一つだけではないため、適切な対処を探るのも簡単ではありません。
そこで、一般的に犬がご飯を食べなくなる理由とその対処法をご紹介します。
食事の好みや飽き
<原因>
ライフステージの変化などでフードを切り替える時を除き、大抵毎日の主食に同じフードをあげていることが多いと思います。そのため、いつものフードの味や匂い、食感に飽きて、違うものを食べたがっている場合もあります。
特に、過去に食欲が落ちた際、いつもと違うフードやおやつをもらった経験があったり、おねだりをすればいつでもおやつがもらえたりする、人間の食べ物を与えてもらうことがある犬は、「ご飯を食べなければもっと美味しいものが食べられる」「おねだりをすればいつでも美味しいものが食べられる」と学習してしまっている可能性が高いのです。
ご飯は食べないけれどもいつも通り元気で、おやつや他の食べ物を欲しがる場合は、もっと美味しいものを食べたいというわがままな気持ちからである可能性が考えられます。
<対処法>
フードに飽きてしまっている場合は、ふやかして食感を変えたり、少し温めてニオイを引き立たせたりすると、食べることがあります。愛犬に合ったフードで風味の異なるものを、時々ローテーションするのも良いでしょう。また、好みの味がある場合は、犬用のふりかけなどを少量(匂い付け程度に)使用して風味を強めるのも試してみてもいいかもしれません。
大切なのは、愛犬に誤った学習をさせないことです。ご飯を出してから一定時間(15分程度を目安に)が経過したら、フードが残っていても食器を片付け、次の食事まで何も食べさせないように徹底しましょう。またおやつは、ねだられても安易にあげてしまわず、ご褒美に限定しましょう。また、おやつを与える場合は、1日摂取カロリーの10~20%以内に抑えましょう。
健康上の問題
<理由>
多くの飼い主さんがご飯を食べなくなった愛犬を心配する理由は、病気ではないかと思うためでしょう。確かに「食欲不振」の症状は、消化器、循環器、呼吸器、口腔内や感染症など、数多くの病気や異物誤飲などで見られます。
病気の可能性を疑う場合は、ご飯だけでなく水も飲まない、嘔吐や下痢、元気がなく動きが少ない、呼吸が荒い、口臭がひどいなど、ご飯を食べないこと以外に他の症状が現れている場合です。また、食欲以外の症状がさほど顕著でなくても、体重が減ったり痩せたりしてきた場合も、病気の可能性が考えられます。
<対処法>
病気にかかると、体は病気と戦うために普段以上のエネルギーを必要とします。そのような状態でご飯を食べられないということは、病気と戦うためのエネルギー源を確保できないということになります。
そのため、少しでも病気が疑われるような症状がある場合は、できるだけ早く動物病院に連れて行き診察してもらいましょう。
病気に早く気付くためには、日頃から愛犬のケアやコミュニケーションを通して健康状態をしっかりと観察すること、そしてご飯を食べる量や食べる時の様子なども把握しておくことが大切です。
ストレスや環境の変化
<原因>
犬は環境の変化などに敏感で、ストレスでネガティブな気分になると、食欲がなくなることがあります。個体差はありますが、犬には警戒心の強い面があり、飼い主さんにはなんでもないことがストレス要因になることもあるので注意が必要です。
ストレス要因になりやすいのは、模様替えや引っ越しなどの生活環境の変化、お子さんの出産や新しい犬を迎え入れるといった家族の変化などです。他にも、飼い主さんの多忙に伴うコミュニケーション不足や散歩時間の短縮による運動不足、近所で始まった工事の騒音などが挙げられます。
あくびをする、目を逸らす、足や体をしきりに舐めるなどは、犬のストレスサインです。いつもと様子が違うと感じたなら、ストレスの可能性を検討してみましょう。
<対処法>
ストレスが原因でご飯を食べない場合の対処法は、ストレスの原因を取り除くことです。どうしても取り除けない場合は、できるだけストレスが緩和するような工夫で対処しましょう。
並行して、ストレス発散の機会を増やしましょう。運動好きな犬なら、散歩時間を増やしたり、休日にドッグランなどで運動する時間を作ったりするのもおすすめです。運動することで食欲が刺激される可能性もあります。運動嫌いな犬なら、飼い主さんと一緒に隠したおやつを探すといったゲームもストレス発散に役立ちます。
どんなに忙しくても、1日の最初と最後には愛犬と向き合う時間を確保して、短時間でもコミュニケーションを絶やさないこともとても大切です。
夏バテ
<理由>
日本の夏の特徴は、高温多湿です。人にとっても過ごしづらく食欲がなくなる季節ですが、犬も同じように夏バテでご飯を食べなくなることがあります。
夏バテの原因の一つとして自律神経のバランスの乱れが挙げられます。自律神経は交感神経と副交感神経からなり、お互い相反する働きを担っているため、どちらかに過剰な負荷がかかるとバランスが崩れます。高温多湿な環境下では、体温の上昇を防ごうと交感神経に過剰な負担がかかり、副交感神経の働きが低下します。副交感神経は食べた物の消化や吸収の役割を担っているため、高温で交感神経に負担がかかると、副交感神経の働きが低下して食欲が低下すると言われています。
夏バテの場合、ご飯を食べなくなる他に、疲れやすくなる、元気がない・動きたがらない、嘔吐や下痢を起こす、水を大量に飲む、ハァハァと辛そうな呼吸(パンティング)をするといった症状が現れることがあります。症状が重くなると、熱中症に進行することがあります。
<対処法>
夏バテを解消するために効果的な治療法はありません。動物病院に連れて行き、現れている症状にあった対症療法をしてもらいましょう。消化器系の機能が低下しやすいため、ぬるま湯でドライフードをふやかし、消化しやすい状態にして食べさせるといった工夫も効果があるでしょう。
また、夏バテは室温を20℃程度、湿度を40〜50%の範囲内に維持することで予防できます。人の目線ではなく、犬が生活している範囲の高さで温度や湿度を確認し、管理することが大切です。また、涼しい室内から急に炎天下の高温環境に移動する等の、温度の変化が激しいことも夏バテの原因の一つと考えられているため、お散歩は涼しい時間帯を選んで行くなどの対応もしてあげましょう。
老化
<理由>
犬も年を取ると、筋肉が落ちて代謝量が減り、体力の低下などで運動量も減ってきます。その結果必要なエネルギー量も減ってくることで、食べる量が少なくなる可能性があります。それが、飼い主さんの目には「ご飯を食べなくなった」と映ることがあります。
ただし、摂取量の低下が必要エネルギー量の低下だけでなく、嗅覚や味覚の低下や、歯肉炎などの口腔内の病気、筋力低下で頭を下げてご飯を食べるのが辛い等の理由で、必要な栄養量を摂れていない可能性も考えなければいけません。
<対処法>
まずは、実際にどのくらいの1日摂取カロリーと食事量が必要なのかを確認しましょう。獣医師に相談、または別記事を参考に計算してみましょう(「犬 ごはんの量」記事への内部リンクを設置)。また、高齢の場合、見た目ではわからない病気が隠れている可能性もありますので、定期的な病院の受診で病気の可能性を除外しておくのも大事です。1日必要量を与えているが摂取量が少なく、体重が減っている、食べづらそうであるといった問題点がある場合は、下記のような対策で対処しましょう。
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嗅覚低下への対策
フードを人肌程度に温め、ニオイを引き立たせて食欲を引き出す。
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口腔内トラブルへの対策
ドライフードを細かくしたりふやかしたりして食べやすくする。
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食べる姿勢のサポート
食器台を利用して、頭を下げずに食べられるようにする。(短頭種は、食器を斜めに置けるとさらに食べやすくなります)
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必要なカロリー摂取のためのサポート
老犬向けの高カロリー食に切り替える。1回の量を減らして食事の回数を増やすことで、確実に食べさせる。
犬がご飯を食べない場合に考えられる病気

犬がご飯を食べなくなる症状が現れる病気は、非常にたくさんあります。加えて、怪我などの外傷により痛みで食べなくなることもあります。
ここでは、犬がご飯を食べなくなった際、同時に見られる症状によってどのような病気が考えられるのかを詳しくお伝えします。
水も飲まない場合
体内の水分量が減ることで、体温調節、栄養分の全身への供給、老廃物や毒素の排出など、さまざまな身体機能に異常が生じて問題が起こります。健康のためには、水分の摂取もとても大切なのです。
それにも関わらず、ご飯だけではなく水も飲まなくなった場合は、かなり全身の状態が弱っている可能性があり、消化器系や肝臓、腎臓などの内臓の疾患、中毒物質の摂取、感染症、腫瘍などの疾患で症状が進行している可能性が考えられます。
また、椎間板ヘルニアや関節炎のように身体に強い痛みが出る病気や、熱中症や全身性の炎症性疾患などのケースも考えられます。いずれにしろ一刻を争う状況の可能性がありますので、自己判断で様子を見ず、すぐに動物病院で診てもらいましょう。特に子犬や高齢犬では、体力が低下しやすいため注意しましょう。
嘔吐がある場合
嘔吐した場合、通常は胃の中に入っていた未消化の食べ物が吐き出されますが、ご飯を食べずに胃の中が空の状態の場合は、薄黄色い液体や白い泡が混ざったような胃液、あるいはそれらが混じった液体を吐くことがあります。
このように、ご飯を食べず嘔吐も見られる場合は、消化器系の異常の可能性が考えられ、胃、小腸、膵臓などに炎症を起こす病気でみられる事があります。肝機能低下や腎機能低下といった、代謝を担っている内臓の病気や中毒物質の摂取、内分泌系の全身性疾患などでも見られる可能性があります。
また、異物を誤飲した場合に、犬自身が飲み込んだものを吐き出そうとして嘔吐することもありますし、異物が腸で閉塞して嘔吐することもあります。消化器系や代謝系の病気、異物誤飲のいずれの場合も、まずは病気の有無を診断してもらい、必要な治療を始められるよう、早めに動物病院に連れて行くことをおすすめします。
下痢がある場合
ご飯を食べなくなるだけでなく、同時に下痢がある場合は、腸や膵臓にトラブルがある可能性があります。具体的には、腸や膵臓の炎症、腸内細菌のバランスの異常、細菌やウイルス、寄生虫の感染症、腫瘍や誤飲した異物による腸の通過障害、中毒物質の摂取などです。
何も食べていないのに下痢をする場合、腸のダメージが大きい可能性があります。また症状が長期間続き体重の減少も見られる場合は、病気の慢性化や免疫系の病気が発症している可能性も考えられるでしょう。
下痢になると、腸の機能が低下して栄養素を十分に吸収できず、水分の吸収も十分に行えなくなり、失われる水分も増えます。そのため、下痢は栄養失調や脱水症状を起こしやすいため、体力低下など全身がダメージを受ける可能性があります。
下痢の症状が続く、嘔吐の症状も見られるといった場合は緊急性が高いと判断し、速やかに動物病院で診てもらいましょう。
犬がご飯を食べない時は病院に行くべきか
病院に行くべきケース
ご飯を食べなくなった原因として病気の可能性が高い場合はもちろんですが、他の症状が見られない場合でも、2日以上全く何も口にしないのであれば、動物病院で診てもらうことをおすすめします。
また、併せて他の症状も見られる場合は、できるだけ早くかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
特に「嘔吐」「下痢」「水を飲まない」という症状のいずれかが見られる場合や、複数の症状が現れている際には、状況が悪化して命に関わる場合も十分にあり得ます。特にシニア犬や子犬の場合はすぐに体力が低下してし舞う可能性があるため、自己判断で様子を見ることはせず、できるだけ速やかに動物病院で診てもらいましょう。
それでも判断に迷うような場合は、動物病院に連絡をして愛犬の様子やこれまでの経過を説明し、すぐに連れて行くべきかどうかの判断を仰ぎましょう。
様子を見ても問題ないケース
ご飯を食べない、または食べる量が減ってきている場合でも、すぐに動物病院に連れて行かずに様子を見ていても大丈夫だというケースもあります。
代表的なのは、おやつや他のフードは喜んで食べる場合です。他にも、いつも通り元気にしている、病気を疑わせるような症状は見られないといった場合は、過度に心配する必要はありません。犬がご飯を食べないのは、一時的である場合も多いです。ご飯を食べなくなった原因を探りつつ、様子を見るようにしましょう。
また、ご飯を食べない原因がフードにある可能性も考えられます。例えばフードの保存状態が悪く、湿気ってしまった、ニオイが飛んでしまったというようなケースがあります。元気なのにご飯を食べない場合は、フードの状態を確認してみましょう。
まとめ 犬に体調不良が見られる場合は早めの受診を
「ご飯を食べない=病気」とは限りません。今回ご紹介したように、わがまま、ストレス、老化などの、偏食やメンタル、生理現象で食べないこともあれば、夏バテのように病気の一歩手前の状態で食べなくなることもあります。
いずれにせよ、健康に過ごすためには、必要な栄養をしっかり摂る必要があります。ご飯を食べない時はその原因を探り、適切な対処できちんと食べてもらうようにしましょう。体調不良や病気の兆候が見られた場合は、速やかに動物病院に相談することも大切です。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許