【獣医師監修】犬の涙焼けは病院に相談すべき?原因や対策について解説

2025.04.02
【獣医師監修】犬の涙焼けは病院に相談すべき?原因や対策について解説

犬の涙焼けが気になり、心配になることはないでしょうか。「このまま放置をしてもいいのかな」と不安になることもあるでしょう。

本記事では、犬の涙焼けの原因や涙焼けになりやすい犬種、治療法や自宅で実践できる対処法を解説します。

涙焼けが重症化しないよう、適切な処置を行い、犬の健康を守りましょう。

目次

 

犬の涙焼けが起こる仕組み



涙焼けとは、目の周りの被毛が涙に濡れて茶色や赤茶色に変色する現象です。


涙には、目の表面を潤わせることで目の表面の細胞を乾燥から守り、外界から侵入する菌や異物から守ったり、酸素や栄養を目に供給したりする役割があります。涙は、涙腺から分泌され、涙点(るいてん)と呼ばれる穴に入り、鼻涙管(びるいかん:目と鼻をつなぐ細い管)の中を通って鼻腔に流れます。


涙焼けは、涙が過剰に分泌されたり、涙の通り道で詰まったりして目からあふれることで目の周囲の被毛が変色するのが特徴です。涙自体は無色透明ですが、あふれすぎた涙や目やにに対して細菌や酵母菌が繁殖したり、時間の経過や紫外線により涙に含まれる物質(ポルフィリン)が酸化したりして毛が変色します。

 

犬の涙焼けの原因

 

犬の涙焼けの原因

 

犬の涙焼けにはさまざまな原因があります。以下の要因ごとの特徴やおもな症状を把握し、愛犬の様子に当てはまるものがないかチェックしましょう。

鼻涙管閉塞

鼻涙管閉塞とは、鼻涙管が塞がる病気です。鼻涙管が塞がると涙が鼻に通らなくなるため、目にとどまるようになり、目からあふれやすくなります。目から出た涙を放置すると皮膚や毛が濡れた状態になり、細菌や酵母菌が増殖して目やにや結膜炎、皮膚炎などのトラブルが発生することがあります。


鼻涙管閉塞の原因は先天的なものと後天的なものの2種類に分けられます。


  • 先天性の要因:生まれつき鼻涙管が狭い、鼻涙管の発達が不足しているなど

  • 後天性の要因:歯根や鼻の炎症による鼻涙管の詰まりや、怪我など


鼻涙管閉塞は、主に鼻先から鼻の付け根までが極端に短い担当種のパグやシー・ズーなどで先天性が、プードルやゴールデン・レトリーバーなどは後天的に閉塞しやすいと言われています。

眼瞼内反症

眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)とは、犬のまぶたが内側(眼球側)に巻き込まれることにより発生する病気です。下まつ毛が目に入ることで刺激が起こり、痛みや炎症、涙の分泌が起こります。


考えられる原因は、以下が挙げられます。


  • 先天性:生まれつきまぶたの構造が内反しやすい形をしている。特に顔に皺が多いブルドッグや、目が大きく露出しているパグ、ペキニーズなどに多く見られます。

後天性或いは二次性:重度の結膜炎や外傷などによるまぶたの変形、目の周りの筋肉や神経の異常などによりみられる事があります。

眼瞼内反症を発症するリスクのある犬種としては、パグやブルドッグ、トイプードルやペキニーズなどが挙げられます。

マイボーム腺機能不全

マイボーム腺機能不全とは、マイボーム腺が機能しなくなる病気です。マイボーム腺とは、目の表面の涙が蒸発して乾燥するのを防ぐための脂質を分泌する腺です。マイボーム腺機能不全になると、涙焼けの原因になるだけでなく、まぶたの炎症や腫れを引き起こすことがあります。


マイボーム腺の炎症のおもな原因は以下の2つです。


  • 麦粒腫(ばくりゅうしゅ):おもに黄色ブドウ球菌の感染によって起こる急性炎症。腫れや痛み、赤みやイボなどを引き起こす、いわゆる「ものもらい」のことです。


  • 霰粒腫(さんりゅうしゅ):マイボーム腺の通り道が何らかの原因で閉塞し、分泌物が貯留することにより慢性的な炎症を起こし、まぶたに硬結(こうけつ:しこりのようなもの)が生じます。


マイボーム腺機能不全は、パグやシー・ズー、ブルドッグなど短頭種(頭蓋骨の長さの幅に比べて鼻の長さが短い犬種)、アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどで発症しやすいとされています。

 

まつ毛の生え方の異常

まつ毛の生え方が異常な場合、涙焼けの原因になることがあります。たとえば、異所性睫毛(いしょせいしょうもう)は、まぶたの裏側(上瞼・下瞼)にまつ毛が生え、眼球を刺激することで目やにや涙目になることがあります。重症化すると、結膜炎や角膜炎につながり、目に傷が入る可能性があります。異所性睫毛は、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやシー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエルといった犬種で発症するケースが多いです。


また、睫毛乱生(しょうもうらんせい)は、正常な一から生えているまつ毛の向きが異常で、まつ毛が眼球に向かって生え、目の表面を刺激して角膜の損傷や炎症を引き起こす場合があります。重症化すると、視力の低下や感染症が引き起こされるのが特徴です。睫毛乱生は、おもにプードルやアメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルといった犬種で発症するケースが多いです。


異所性睫毛や睫毛乱生はいずれも、遺伝的な要因や発育異常、外傷や傷跡などが原因で発症する場合があります。

目の炎症や傷

目の炎症や傷が入ると、刺激によって涙が分泌され、涙焼けにつながるケースがあります。涙の量が増え、涙焼けにつながる病気は以下のとおりです。


目の炎症や傷を引き起こする病気

概要

おもな症状

角膜炎・結膜炎

刺激物や異物、アレルギー、感染症などの影響で角膜や結膜に炎症が起こる病気。

目の充血や涙・目やにが増える。

緑内障

目の中に水がたまり、眼圧が上がることで、目の痛みや視覚障害を引き起こす病気。

目の痛みや涙が増え、充血や視覚障害、食欲低下などが起こる。

ぶどう膜炎

ぶどう膜(目の中の血管膜と呼ばれる組織)に炎症を起こす病気。

目の痛みや涙が増え、充血や瞳孔の開きが悪くなる。

アレルギー

犬が以下のアレルギーを発症すると、涙の量が増え、涙焼けにつながることがあります。


アレルギーの種類

概要

おもな症状

アトピー性皮膚炎

皮膚のバリア機能が正常に働いていないときにアレルゲン(アレルギーの原因)が体内に入り、過剰な免疫反応を引き起こすアレルギー。

目や口周り、耳や手足などに強いかゆみや赤みが出る。放置すると、悪化し、脱毛や腫れが起こる。

食物アレルギー

特定の食べ物に含まれるアレルゲンが体内に入り、過剰な免疫反応を引き起こすアレルギー。

背中にかゆみが出る。嘔吐や下痢を繰り返すこともある。目の炎症・痒み・結膜炎を引き起こし、涙の量が増える可能性があります。

ノミアレルギー

犬の皮膚にノミが寄生して唾液や排泄物を分泌することで、過剰な免疫反応を引き起こすアレルギー。

腰からしっぽの付け根あたりに発疹や蕁麻疹が起こる。結膜炎や顔の痒みで涙の量が増えることがあります。

鼻や歯の病気

鼻や歯の病気にかかると、粘膜に炎症が生じて、目から鼻につながる鼻涙管が閉塞することで、涙の量が増えるケースがあります。


鼻の病気

概要

おもな症状

慢性鼻炎

長い期間にわたって、鼻の粘膜に炎症が起こる病気。

鼻水やくしゃみなどの症状が持続し、進行すると嗅覚の低下や呼吸困難などの症状が起こることがあります。

歯周病(根尖膿瘍)

歯の周りの組織が細菌の感染などにより炎症を起こす病気。

歯ぐきの腫れや出血、口臭、上顎の歯周病が重度になると、炎症が鼻に波及し、くしゃみや鼻水などがみられる事がある。


鼻の病気にかかっていないか気になる場合は、呼吸の回数や鼻水の有無などを確認しましょう。呼吸がしにくい様子があったり、くしゃみや鼻水などが頻発したりするようであれば、動物病院を受診し、獣医師に相談してください。

 

涙焼けになりやすい犬種

 

犬の中には、涙焼けを起こしやすい犬種があります。以下の種類の犬種では、涙焼けを起こしやすいと報告されています。


涙焼けを起こしやすい犬種

概要

短頭種

フレンチ・ブルドッグやシー・ズー、パグ、ペキニーズなどの鼻が短い犬種は目が大きく、傷やゴミが入りやすいため、トラブルが起きやすい。鼻涙管が曲がっていることも要因。

小型犬

トイ・プードルやマルチーズ、パピヨンやポメラニアン、チワワやヨークシャー・テリアは、鼻涙管が細く詰まりやすいため、トラブルを起こしやすい。

毛色の薄い犬種

毛色の薄く白いマルチーズやビション・フリーゼ、ボロニーズやウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどは、涙焼けの変化が顕著に出やすい。


上記種類の犬を飼っている方は、涙焼けのリスクを踏まえ、継続的にケアしましょう。

 

犬の涙焼けで病院に行くべきケース

 

犬に涙焼けが見られた場合、病院に行くべきか悩むケースがあるかもしれません。以下の症状がある場合は、動物病院を受診し、獣医師に相談してください。


  • 目が赤く充血している

  • まぶしそうにしている

  • 濃い黄色の目やにが出ている

  • 涙があふれている状態が続いている

  • 痛そうにまばたきを繰り返している

  • 涙焼けが見られた部分に脱毛や炎症がある

  • 涙の量が多く、毛が濡れた状態が続いている


涙焼け自体は病気ではないものの、涙で毛が濡れた状態が続くと、細菌に感染し、皮膚炎を発症するケースがあります。


また、涙焼けは涙を正常に分泌できていない場合もあるため、目になんらかの疾患が起きている可能性もあるでしょう。重症化する前に、速やかに動物病院を受診し、適切な処置を受けてください。

 

犬の涙焼けの治療法

 

犬の涙焼けの治療法を、原因となる病気やアレルギーごとに解説します。該当する病気がある場合は、動物病院で適切な治療を受けましょう。


涙焼けの原因

治療法

鼻涙管閉塞

基礎疾患がある場合は、その治療を行う。詰まった涙管を通すために、細い管を通して涙管を洗浄する。

眼瞼内反症

先天的に眼瞼内反症が起こっている場合は、外科手術を行い、まぶたの内反を整復することがあります。軽度の場合は、定期的にピンセットでまつ毛を抜いたり、点眼薬を使うことがあります。

マイボーム腺機能不全

マイボーム腺を専用の器具で圧迫して分泌物を押し出したり、まぶたを蒸しタオルで温めたりして固まった分泌物を溶かし、マッサージで分泌を促進します。状態により点眼薬を使用することもあります。

角膜潰瘍

抗菌薬や抗炎症薬などの点眼薬を使用する。

緑内障

眼圧を下げるために、点眼薬を使用したり、外科手術を実施します。

ぶどう膜炎

抗生剤や消炎剤、点眼薬などを使用する。

アトピー性皮膚炎

飲み薬や外用薬、サプリメントを使用し、総合的なスキンケアなどを行う。

食物アレルギー

アレルゲンの可能性がある食材を取り除き、食事管理を行う。

ノミアレルギー

ノミを予防・駆除し、皮膚症状がみられる場合は飲み薬や外用薬を使用することがあります。

慢性鼻炎

原因となる基礎疾患に応じて薬剤の使用や、鼻腔内の

異物の除去などを行う。

歯周病

スケーリングや抗生剤などの薬剤の投与、重度な場合は抜歯などの外科処置が必要な場合があります。


上記の処置はいずれも動物病院で受ける必要があります。速やかに獣医師に相談し、適切な治療を受けましょう。

 

犬の涙焼けの対策・ケア


犬の涙焼けの対策・ケア

犬の涙焼け対策・ケアは自宅で誰でも簡単に実践できます。以下の方法を取り入れてみましょう。

目の周りの毛をこまめにカット

目の周りの毛が伸び、目を刺激している場合は、毛をこまめに取り除くことが重要です。とくに、濡れやすい涙焼け部分をカットすることで、清潔な状態が維持しやすくなります。


月1回はトリミングサロンに行き、目の周りの毛をカットしてもらうことをおすすめします。目の周りの毛を取り除いてもらうことで、毛による眼球への刺激が防止でき、涙があふれるのを防ぎやすくなるでしょう。

涙をこまめに拭き取る

目の周りが常に濡れていると、変色が起きやすくなります。そのため、コットンや専用のケア用品を使用し、水分を拭き取ってください。


また、毛が固まっている場合は、コットンを濡らした状態で当て、ふやかしてから拭き取ると取れやすくなります。ノミ取りコームのような目の細かいクシを使うとスムーズにできるでしょう。


必要以上に固まっている部分を触ったり、強くこすったりすると目が傷つき、皮膚炎の原因になります。涙を拭き取る際は、慎重にゆっくり行いましょう。

涙焼け対策用のフードやサプリを活用

アレルギーが原因で涙焼けを起こしている場合、アレルゲンが含まれないフードを選ぶことが重要です。


また、獣医師に相談のもと、必要に応じて愛犬の体に合うサプリメントやフードを選ぶことも大切です。一度動物病院を受診し、獣医師のアドバイスを受け、適切な食生活を心がけましょう。

 

まとめ 犬の涙焼けを防ぐには日常的なケアが大切

 

犬の涙焼けは、殆どの場合、涙が過剰に分泌されたり、涙の通り道が詰まることが原因で起こります。


涙焼けの原因は、鼻や目の病気、アレルギーなどが挙げられます。短頭種や小型犬

などは鼻涙管が曲がっていたり、管が細く詰まりやすかったりするため、涙焼けが起こりやすいのが特徴です。そのため、こまめに毛をカットしたり、涙を拭き取ったりしましょう。


目の充血や目やにの増加、脱毛や炎症などが見られる場合は、速やかに動物病院を受診し、獣医師に相談することが重要です。適切な治療を受けたり、対処法に関するアドバイスを受けたりしましょう。

 

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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