【獣医師監修】犬のてんかんはどんな症状? 原因・治療方法など

2025.04.02
【獣医師監修】犬のてんかんはどんな症状? 原因・治療方法など

犬のてんかんは、突然のけいれんや意識障害が繰り返し起こる病気です。犬種を問わず発症する可能性があるものの、特定の犬種ではリスクが高いとされています。また、原因が特定できない場合も多く、予防が難しい疾患です。


この記事では、犬のてんかんについて、原因や症状、治療方法から日常生活での対処法まで詳しく解説します。

目次




犬の「てんかん」とは?


てんかんは、何かしらの異常により、脳の神経細胞が過剰に興奮し、けいれんや意識障害を繰り返す病気です。通常は時間が経つと元の状態に戻ります。突然症状が現れることが一般的で、残念ながら予防は難しいと言われている病気です。

また、発作が現れる頻度には個体差があります。てんかんの特徴は繰り返すことのため、けいれんが1回しか起きていないのであれば、てんかんとは診断されないことがあります。原因については、脳に明らかな原因が見つからないケースと、脳に明らかな原因が見つかるケースが見られます。

犬種を問わず起こる可能性のある病気ですが、特にかかりやすいといわれている犬種として、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ビーグル、シェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリー、プードルなどが挙げられます。

また、てんかんは大きくは「特発性てんかん」と「症候性てんかん」の2つに分類され、原因が特定できるかによって診断が変わります。

特発性てんかん

特発性てんかんは、血液検査や画像診断など、さまざま検査をしても原因が見つからない場合に診断されるものです。


原因は特定できないものの、特定の犬種に多いことから、遺伝的要素が強く影響していると考えられています。

症候性てんかん

症候性てんかんには、脳炎や脳腫瘍など、てんかんを誘発する脳の構造的な異常を伴う病気があって引き起こされている可能性がある場合の「構造的てんかん」と、脳に構造的な異常はないものの、低血糖や腎不全、肝不全、ミネラルの異常等により二次的に脳に過剰な興奮が生じ、てんかんが起こる「反応性てんかん」があります。



犬のてんかんの症状

 

次に、犬のてんかんの症状について具体的に見ていきましょう。症状は、全身に見られるもの(全般性てんかん発作)と、体の一部に見られるもの(焦点性てんかん発作)に大きく分けることができます(実際にはこれらに加え、非けいれん性全般けいれん発作といわれる外見では発作かどうか区別の難しいものもあります)。


全身症状は、けいれんや体全体の硬直、犬かきのように手足を動かすなどが特徴です。多くの場合、犬は意識を失っています。体の部分的に見られる症状は、顔や足に見られるけいれん、ひきつりやこわばり、ふらつき、大量のよだれなどです。こちらは全身症状とは異なり、意識を失うことはあまりありません。


このような症状の出るてんかんですが、発作はたいてい数分以内でおさまります。そのため、すぐに命に関わることはない場合もありますが、1日に複数回の発作が起きたり(群発発作:ぐんぱつほっさ)、数分以上(5分以上が目安)も発作が続いたりするとき(重積発作:じゅうせきほっさ)、発作後に歩けない・意識が戻らないなどの場合は重篤な症状であるといえます。脳に後遺症が残る可能性や命に関わる恐れもありますので、速やかに動物病院を受診しましょう。



犬のてんかんの原因


犬のてんかんの原因

 

先ほどもお伝えしたように、てんかんは原因が明らかなものもあれば、原因が不明なものもあります。しかし、「特発性てんかん」は、かかりやすい犬種があることから、遺伝的な要素が大きいのではないかと考えられています。


「症候性てんかん」は、脳炎、脳梗塞、水頭症など脳に関する病気のほか、外傷、腎臓病、肝臓病などほかの病気が原因となっています。つまり、病気の影響により、二次的にてんかんの症状が出ているということです。

 

犬がてんかんを起こす前兆

てんかんの発作は突然現れることが多いものの、前兆が見られる場合もあります。よく見られる前兆は、「落ち着きがなくなる」、「性格が変化する」などです。たとえば、犬が不安そうに歩き回ったり、飼い主に異常に寄り添ったりする行動、突然怒りっぽくなるなどは、てんかん発作が起きる前兆の可能性があります。


普段から様子を観察しておくことで、発作の前兆を早期に察知しやすくなります。

 

犬がてんかん発作を起こした場合の対処法


愛犬がてんかん発作を起こしたとき、特に初めてのときは飼い主さんも動揺してしまいがちです。だからこそ、どのように対処すればいいのか、しっかりと確認しておきましょう。


けいれんなどの発作を起こしているときは、体を無理に押さえつけたり揺さぶったりしないようにします。発作中は、犬は意識がなく周りの状況がわからなくなっていますので、無理に押さえつけようとすると、噛まれてしまうことがあります。

周囲にぶつかって危険なものがある場合は、なるべくどけるか、毛布やクッションでカバーするなどして、犬が怪我をしないようにしましょう。


同時に、獣医師に伝えるために、どのような発作が起きているか、持続時間はどのくらいかなど愛犬の様子をよく観察して記録しておいてください。可能なら動画で撮影すると、獣医師にも伝わりやすくなります。そのほか、発作の前の行動、発作がしずまった後の様子など、気になったこともメモしておきましょう。



犬のてんかんの治療方法

 

犬のてんかんの治療方法


犬のてんかんの治療では、抗てんかん薬を投与します。治療の目的は、発作の頻度を減らし、その症状を軽減することで、犬の生活の質を向上させることにあります。

抗てんかん薬は、犬の体重や状態、症状の程度に合わせて適切な薬剤が処方され、継続的な投与が必要となる場合がほとんどです。また、薬剤は適切な血中濃度範囲内に収められる必要があるため、投与開始からしばらくの期間は定期的に血液検査で血中濃度の測定が行われることがあります。

症候性てんかんの場合は、てんかん発作を引き起こしている根本的な原因を治療します。たとえば、脳腫瘍や腎臓病、肝臓病などが原因である場合は、それらの病気に対する治療を行います。

犬のてんかんの治療費

犬のてんかんの治療では、主に抗てんかん薬を使用します。治療は継続的に行うため、治療費がかかる点に留意が必要です。治療費は体重やてんかんの症状、治療への反応などで異なります。


たとえば、特発性てんかん体重5kgの犬では、抗てんかん薬1種類の投与を開始した場合、薬代だけで毎月約5,000円以上の費用がかかる可能性があります。


また、薬の効果を確認するための血中濃度測定や、副作用の有無を確認するための血液検査や尿検査が定期的に必要なため、別途検査費用として1回7,000~15,000円程度、場合によりそれ以上かかることがあります。


費用が積み重なることを考えると、ペット保険への早めの加入も検討した方がよいでしょう。発症した後の加入では、適用されないことが多いと考えられるため、健康なうちからペット保険に加入することも検討しましょう。予め保険に加入していれば、薬代や検査費用の一部、あるいは全額が補償される場合があります。

犬のてんかんの治療頻度

犬のてんかんの治療頻度は、症状や個体差によって異なりますが、多くの場合、長期的な治療が必要です。


てんかんは慢性的な疾患であり、完治が難しいため、発作の頻度を抑えて症状を軽減することを目指した管理が基本です。


抗てんかん薬を使用する場合、薬の投与は毎日欠かさず行う必要があります。

 

犬がてんかんにならないための予防方法はある?

犬のてんかんの予防方法は、現時点では存在しないとされています。発作を完全に防ぐ方法は確立されていないため、てんかんが発生した際に、飼い主が適切な対処を心がけることが重要です。


「犬がてんかん発作を起こした場合の対処法」の項目で先述した内容をもとに、慌てず冷静に対応するようにしましょう。


繰り返しですが、発作がおさまった後には、どのような症状が現れたか、発作の持続時間、発作の発生状況(食後や運動後など)などを記録、または動画に残しておくことで、動物病院での診断がスムーズになります。

 

 犬のてんかんは動物病院へ相談しよう

 

てんかんの発作と思わしき症状が見られた際は、なるべく早く動物病院へ相談しましょう。


犬のてんかんは完治が難しいものの、適切な治療によって発作の頻度を抑え、症状を軽減することが可能です。飼い主としては、発作が起きた際に冷静に対処し、症状や状況を記録して動物病院で共有することが重要です。


また、治療には継続的な費用がかかるため、あらかじめペット保険の活用も検討しておくとよいでしょう。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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