【24年最新】獣医師が解説!スコティッシュフォールドの病気の予防と治療の全ガイド

2024.02.29
【24年最新】獣医師が解説!スコティッシュフォールドの病気の予防と治療の全ガイド

スコティッシュフォールドは、その特徴的な折れ曲がった耳と愛らしい姿で人気のある猫種です。しかし、スコティッシュフォールドにはかかりやすい独自の遺伝的な疾患が存在し、その予防と早期発見が重要です。この記事では、スコティッシュフォールドの主な病気とその予防方法について詳しく解説します。

目次

スコティッシュフォールドによく見られる病気と症状

骨軟骨異形成症

軟骨の形成に関与する遺伝子異常によるスコティッシュフォールドに特異的な遺伝性疾患で、 軟骨が正常に成長せず、骨瘤(こつりゅう:骨が増殖してこぶ状になったもの)や骨棘(こつきょく:骨に生じるトゲのような突起)の形成、指の骨の変形などがみられるようになる病気です。

症状の程度に差はありますが、 耳折れのスコティッシュフォールドは必ず発症するとされています。

最も病変の発生しやすい部位は、後ろ足の指と踵ですが、前足にも発生することがあります。また、高率に尾の病変を伴うともいわれています。主に骨が成長する若齢期に進行し、慢性的な痛みや関節がうまく動かせなくなることで日常生活に大きな支障を及ぼすことがあります。

症状としては、爪切りや足先を触れられることを嫌がる、遊ぶことが減少し、静かに寝ている時間が増えるなどがあります。また、特有の「スコ座り」、ジャンプの頻度減少や高所からの飛び降りを躊躇する行動、毛づくろいをしなくなるなど、日常生活における変化が見られることがあります。

肥大型心筋症

スコティッシュフォールドは、肥大型心筋症の発生が多いと言われており遺伝的な背景が要因となっている可能性がありますが、これまでの調査ではまだ好発品種といえる明確な統計データは出ていません。とはいえ猫の心臓病の中では最も多い病気です。肥大型心筋症は心臓の筋肉の部分が通常より厚くなってしまい、血液の循環が悪くなり心臓の働きが弱くなってしまう病気です。息苦しさ、嘔吐、食欲不振、呼吸が速くなる、足が腫れる、動悸、不整脈など、肥大型心筋症に関連する症状は多岐にわたります。これらの症状が見られたら、早めに獣医さんに相談することが大切です。

外耳炎などの耳の感染症

スコティッシュフォールドは耳折れのため、耳道における通気性が悪く、雑菌が増殖しやすい環境になりやすいため耳の皮膚に炎症が起こる外耳炎になりやすいとされています。

外耳炎の症状は、耳を痒がる、耳から異臭がしたり膿のような分泌物が出る、耳の周りの皮膚が赤くなる等がみられる事があります。日常的にしっかり観察しこれらのサインが見られたら、早めに獣医さんに診てもらうことが大切です。

スコティッシュフォールドの病気の治療法と治療費用

骨軟骨異形成症の治療法

進行性の病気で根治療法が確立されていないため、消炎鎮痛剤やサプリメントの投与で痛みと炎症を緩和する対症療法が中心となっています。また近年では症状の進行抑制に放射線治療が実施されることもあります。

その他食事管理による体重管理や爪切り、床にカーペットを引くなどの環境改善等で関節への負担を減らせるよう生活環境を整えましょう。

肥大型心筋症の治療法

肥大型心筋症の治療は、薬物治療がメインとなり、定期的な検査によって得られる情報に応じて様々な薬物を組み合わせることで全身状態を良好に維持していきます。状態の急変が生じることもあるため定期的なモニタリングが非常に大切です。

外耳炎の治療法

外耳炎の治療は、外耳道の洗浄や点耳薬の耳への投与が中心となります。抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬など原因に応じた薬剤の使用によって、症状の改善を図ります。定期的な耳のチェックとお手入れが重要となります。お手入れの方法については獣医師にしっかり確認しておきましょう。

治療費用について

骨軟骨異形成症:

消炎鎮痛剤などのお薬の費用は月額約3,000円から5,000円が目安です。定期的な検査やサプリメントの併用などでは追加費用が見込まれます。

肥大型心筋症:

心臓病の薬物治療は、月額約5,000円から10,000円程度です。定期的な検査費用がこれに加わります。急変による救急対応ではさらに高額になる可能性があります。

外耳炎:

一般的には治療開始時にお薬代として2,000円から5,000円程度が必要です。検査や洗浄費用がこれに加わります。重症化している場合はさらに高額になる可能性があります。

スコティッシュフォールドの病気予防のための注意点

スコティッシュフォールドを飼育する際には、特定の健康問題への注意が必要です。以下の予防策を講じることで、猫ちゃんの健康を保護し、長く快適な生活をサポートすることができます。

遺伝子検査の実施

家族に迎える前に遺伝子検査を行うことで、スコティッシュフォールド特有の遺伝病のリスクを把握できます。これにより、早期発見や予防策を立てやすくなります。

定期的な健康診断の受診

愛猫の健康を守るためには、定期的な健康診断が欠かせません。早期発見や予防が可能になり、獣医からの専門的アドバイスも得られます。

体重管理

できるだけ関節に負担をかけないようにすることも大事なポイントです。関節への負担を減らすためにも、適正な体重の維持が大す。獣医師に体重の管理に関するアドバイスをしてもらいましょう。

ストレス対策

スコティッシュフォールドは繊細でストレスに弱い品種といわれることがあります。繊細な猫ちゃんには安心して過ごせる環境を作ることがとても重要です。安全で快適なお家の中や、ストレスを減らす工夫をすることが、猫ちゃんが健康でいられるポイントになります。

定期的な耳チェック

外耳炎を予防するためには、おうちでの耳のチェックとお手入れが重要です。耳を定期的に観察することで、異常に早く気付き、お手入れをすることで予防できることがあります。

また、適切なケアで外耳道を清潔に保つことも重要です。例えば、柔らかいガーゼや綿棒を使用して、耳垢や分泌物を取り除くことも大事なケアです。お手入れの方法に不安がある場合は、獣医師に相談し、チェックポイントやお手入れの方法について教えてもらいましょう。

生活環境に工夫

生活環境の工夫も欠かせません。特に、床材は滑りにくい素材を選び、必要に応じてカーペットを敷くなどして、猫が安心して動き回れる環境を整えてあげましょう。また、爪が伸びすぎると滑りやすくなるため、定期的な爪切りなど猫が安全に過ごせる環境を整えてあげましょう。

まとめ

スコティッシュフォールドは、その折れ曲がった耳と愛らしい姿で多くの人々に愛されています。しかし、特異的な遺伝性疾患を発症することがあるため遺伝子検査の実施、定期的な健康チェック、生活環境のチェックが非常に重要となります。猫ちゃんが快適な生活を過ごせるようこれらについて獣医師とよく相談しましょう。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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