【26年最新】獣医師が監修!スコティッシュフォールドの病気の予防と治療の全ガイド

2026.03.03
【26年最新】獣医師が監修!スコティッシュフォールドの病気の予防と治療の全ガイド

日本で飼育されている純血種の猫はまだ2割未満ですが、特に人気が高いのがスコティッシュフォールドです。あるペット保険会社の契約件数でも、混血種に次ぐ2位にランクインしています。純血種は作出過程における繁殖の影響で、遺伝的要因による品種好発性疾患を持つことが多く、スコティッシュフォールドも例外ではありません。この記事では、スコティッシュフォールドによく見られる病気の治療や予防について詳しく解説します。

目次


スコティッシュフォールドによく見られる病気と症状

 

スコティッシュフォールドの代表的な好発性疾患は複数ありますが、その中でも特に多く発症すると言われている代表的な病気には、下記があります。


  • 骨軟骨異形成症

  • 肥大型心筋症

  • 外耳炎などの耳の感染症

 

それぞれの病気の概要と症状について解説します。

骨軟骨異形成症

軟骨の形成に関与する遺伝子異常によるスコティッシュフォールドに特異的な遺伝性疾患で、 軟骨が正常に成長せず、骨瘤(こつりゅう:骨が増殖してこぶ状になったもの)や骨棘(こつきょく:骨に生じるトゲのような突起)の形成、指の骨の変形などがみられるようになる病気です。


症状の程度に差はありますが、 耳折れのスコティッシュフォールドは必ず発症するとされています。


最も病変の発生しやすい部位は、後ろ足の指と踵ですが、前足にも発生することがあります。また、高率尾の病変を伴うともいわれています。主に骨が成長する若齢期に進行し、慢性的な痛みや関節がうまく動かせなくなることで日常生活に大きな支障を及ぼすことがあります。


症状としては、関節の腫れ、爪切りや足先を触れられることを嫌がる、遊ぶことが減少し、静かに寝ている時間が増えるなどがあります。また、特有の「スコ座り」、ジャンプの頻度減少や高所からの飛び降りを躊躇する行動、毛づくろいをしなくなるなど、日常生活における変化が見られることがあります。ただし、症状がこの疾患に特徴的なものではないことに加え、猫は痛みを表現するのが上手ではない子も多いため、病院受診時での獣医師からの指摘で初めて痛がっていることに気づかされる飼い主さんもいらっしゃいます。定期的な病院の受診(少なくとも年1回以上)や、おうちでの上記症状の有無を定期的にチェックすることで早めに痛みに気づいてあげられるようにしましょう。

肥大型心筋症

スコティッシュフォールドは、肥大型心筋症の発生が多いと言われており遺伝的な背景が要因となっている可能性がありますが、これまでの調査ではまだ好発品種といえる明確な統計データは出ていません。

とはいえ猫の心臓病の中では最も多い病気です。肥大型心筋症は心臓の筋肉の部分が通常より厚くなってしまい、血液の循環が悪くなり心臓の働きが弱くなってしまう病気です。

息苦しさ、嘔吐、食欲不振、呼吸が速くなる、足が腫れる、動悸、不整脈など、肥大型心筋症に関連する症状は多岐にわたります。特に、呼吸が早くなる・苦しそうなどの症状が見られる場合はすぐに獣医師に相談することが大切です。また、肥大型心筋症では合併症として血液の塊(血栓)が血管に詰まる血栓症(動脈血栓塞栓症)が併発することがあります。心筋症により心臓の働きが低下すると、血液の流れが悪くなることで血液が固まりやすくなります。それにより発生した血栓が後ろ足などの動脈に詰まってしまい、後ろ足が突然動かなくなる、突然泣き叫ぶ、呼吸が苦しそう、などの症状を引き起こすことがあります。これらの症状が見られた場合はすぐに病院を受診しましょう。

外耳炎などの耳の感染症

スコティッシュフォールドは耳折れのため、耳道における通気性が悪く、雑菌が増殖しやすい環境になりやすいため耳の皮膚に炎症が起こる外耳炎になりやすいとされています。


外耳炎の症状は、耳を痒がる、耳から異臭がしたり膿のような分泌物が出る、耳の周りの皮膚が赤くなる等がみられることがあります。日常的にしっかり観察しこれらのサインが見られたら、早めに獣医に診てもらうことが大切です。


スコティッシュフォールドの病気の治療法と治療費用

スコティッシュフォールドによく見られる病気の治療法について、詳しく解説します。

骨軟骨異形成症の治療法

進行性の病気で根治療法が確立されていないため、消炎鎮痛剤やサプリメントの投与で痛みと炎症を緩和する対症療法が中心となっています。また近年では症状の進行抑制に放射線治療が実施されることもあります。内科療法が効かない重度あるいは難治症例の場合に、痛み軽減目的の一時的な対処として外科手術による治療(骨棘除去など)が行われるケースが報告されていますが、疾患の性質上一般的な治療法にはならず、あくまで一時的な処置となります。


その他食事管理による体重管理や爪切り、床にカーペットを敷くなどの環境改善等で関節への負担を減らせるよう生活環境を整えましょう。

肥大型心筋症の治療法

肥大型心筋症の治療は、薬物治療がメインとなり、定期的な検査によって得られる情報に応じて様々な薬物を組み合わせることで全身状態を良好に維持していきます。


状態の急変が生じることもあるため定期的なモニタリングが非常に大切です。

外耳炎の治療法

外耳炎の治療は、外耳道の洗浄や点耳薬の耳への投与が中心となります。抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬など原因に応じた薬剤の使用によって、症状の改善を図ります。


定期的な耳のチェックとお手入れが重要となります。お手入れの方法については獣医師にしっかり確認しておきましょう。

 

スコティッシュフォールドの病気の治療費用

 

スコティッシュフォールドの病気の治療費用

 

動物病院における医療費は、人の病院における自由診療に相当します。つまり、同じ病気の治療でも、動物病院が個々に料金を設定するため、一概に「この病気にかかる治療費はいくら」とは断定できません。

そのため、あくまでも一事例として、スコティッシュフォールドによく見られる病気の治療にかかる費用をご紹介します。目安として参考にしてください。

骨軟骨異形成症:

<消炎鎮痛剤やサプリメントによる投薬治療>

消炎鎮痛剤は、月額約3,000〜5,000円が目安となります。必要に応じてサプリメントが併用される場合は、その分の費用が追加されます。痛みのコントロールのため、月1回の通院と考えると、年間の医療費は6万円程度が見込まれるでしょう。

 

<放射線治療>

放射線治療は、二次診療施設(専門病院)や大学病院などの高度な医療施設でなければ受けられません。かかりつけの動物病院とよく相談し、必要に応じて紹介状を書いてもらいましょう。


某大学の附属動物病院における放射線治療診療料金の案内は、下記のように掲載されています。


  • 初回:約20万円(診察料:5,000円、CT撮影:40,000円、MRI撮影:43,000円、放射線治療計画:55,000円、外部照射:99,000円)

  • 2〜4回目:約10万円(診察料:同上、外部照射:同上)

  • 5回目以降:約6万円(診察料:同上、外部照射:55,000円)

 

<骨棘除去手術>

骨棘除去などの手術を受ける場合は、手術費用が約20万円で、数日の入院費が3〜4泊で1日あたり約1万円を目安と考えると良いでしょう。ただし、現段階ではまだ効果が明確にはわかっていません。獣医師とよく相談の上で治療方針を決めていきましょう。

肥大型心筋症:

治療法での説明通り、肥大型心筋症の治療のメインは薬物治療で、定期的な検査によるモニタリングが、全身状態を良好に維持するポイントとなります。そのため、通院による薬代と検査費用が、継続的に発生します。

 

1回の治療費としては、下記を目安に考えてください。


  • 初診料(初回のみ):1,000〜2,000円

  • 再診療(2回目以降):200〜1,500円

  • 血液検査:5,000〜12,000円

  • X線検査:5,000〜10,000円

  • 心エコー検査:10,000〜20,000円

  • 薬代(1ヵ月あたり):5,000〜20,000円

 

薬代の幅が広いのは、症状のステージにより、強心薬、利尿薬、抗不整脈薬、血栓予防薬など、必要となる薬の種類が変わるためです。

外耳炎:

外耳炎の場合も、数回の通院が必要となることが一般的です。1回の治療にかかる費用は、診察料、耳垢検査、耳洗浄、薬代を含めて2,000〜5,000円程度が目安です。

 

某ペット保険会社では、2週間で3回の通院が必要になった外耳炎の治療費用として、総額9,180円という事例が紹介されています。


スコティッシュフォールドの病気予防のための注意点

 

スコティッシュフォールドの病気予防のための注意点

 

スコティッシュフォールドの魅力である耳折れは、原因となる遺伝子を2つ持つ(ホモ接合体)と重症化しやすい、遺伝性の骨格障害です。そのため、いくつかの猫種登録協会では公認されていません。

 

公認している団体も、耳折れ同士の交配は禁じており、耳折れの猫は必ず正しい骨格構成を持つ立ち耳の猫と交配すること、アメリカンショートへアやブリティッシュショートヘアとの異種交配も行うことなどが定められています。

 

健康なスコティッシュフォールドを迎えるためには、まず信頼できるブリーダーを選びましょう。その上で、さらに病気予防に大切な注意点について解説します。

遺伝子検査の実施

家族に迎える前に遺伝子検査を行うことで、スコティッシュフォールド特有の遺伝病のリスクを把握できます。これにより、早期発見や予防策を立てやすくなります。

定期的な健康診断の受診

愛猫の健康を守るためには、定期的な健康診断が欠かせません。早期発見や予防が可能になり、獣医からの専門的アドバイスも得られます。

 

猫のライフステージは、0〜6ヵ月齢までが子猫期、2歳までが青年期、6歳までが成猫期、10歳までが壮年期、14歳までが中年期、15歳以上が老猫期とされています。猫の1歳は人の15歳、猫の7歳は人の44歳に相当すると考えられています。

 

このことを考慮すると、少なくとも7歳までは年に1〜2回、8歳以上は半年に1回の健康診断を受けることが理想的だと考えられています。ただし、持病を持ち定期的な通院により検査を継続的に受けている場合は、それらを考慮した上で健康診断の検査項目をアレンジすることができます。

 

獣医師と相談しながら、年齢や健康状態に適した健康診断を定期的に受けることで、病気の早期発見・早期治療に努めることが、愛猫に元気に長生きしてもらうことにつながります。

体重・食事管理

動物の体は、食べたもので作られます。そのため、猫の食性に適した栄養バランスを満たした良質な食事と、その猫の運動量に見合った食事量による適切な体重管理を行うことが、愛猫の健康管理には必要不可欠です。

 

メインの食事となるフードは、猫にあった栄養バランスを満たしている総合栄養食を与えましょう。また袋や缶に記載されている給与量は、あくまでも目安量です。実際の体重や体型を観察しながら、個々の猫に適した給与量を見つけてあげましょう。

 

また、猫が飲みたいときにいつでも新鮮な水が飲めるようにしておくことも大切です。猫はあまり水を飲まない傾向があり、泌尿器系の病気が多い原因とも言われています。ドライフードだけではなく、ウェットフードなども上手に利用して、食事からも水分が補給できるようにすると良いでしょう。

 

スコティッシュフォールドは、骨格障害に特に注意が必要な品種です。獣医師とよく相談した上で、関節をサポートするEPAやDHAなどの脂肪酸をサプリメントで補充することも、効果が望めるかもしれません。

ストレス対策

スコティッシュフォールドは繊細でストレスに弱い品種といわれることがあります。繊細な猫ちゃんには安心して過ごせる環境を作ることがとても重要です。

安全で快適なお家の中や、ストレスを減らす工夫をすることが、愛猫が健康でいられるポイントになります。

定期的な耳チェック

外耳炎を予防するためには、おうちでの耳のチェックとお手入れが重要です。耳を定期的に観察することで、異常に早く気付き、お手入れをすることで予防できることがあります。


また、適切なケアで外耳道を清潔に保つことも重要です。例えば、柔らかいガーゼを使用するなど、獣医師に方法を確認した上で、耳垢や分泌物を取り除くことも大事なケアです。お手入れの方法に不安がある場合は、獣医師に相談し、チェックポイントやお手入れの方法について教えてもらいましょう。

生活環境に工夫

生活環境の工夫も欠かせません。特に、床材は滑りにくい素材を選び、必要に応じてカーペットを敷くなどして、猫が安心して動き回れる環境を整えてあげましょう。


また、爪が伸びすぎると滑りやすくなるため、定期的な爪切りなど猫が安全に過ごせる環境を整えてあげましょう。

 

スコティッシュフォールドの病気を避けるために

 

スコティッシュフォールドは、純血種の猫が少ない日本の中でもとても人気の高い品種です。その人気の要因となっている耳折れは、スコットランドの農場で飼われていた1匹の猫の遺伝子異常による骨格障害が原因でした。そのため、耳折れのスコティッシュフォールドのほぼ全てが骨軟骨異形成症を持っていると考えられています。

 

健康なスコティッシュフォールドと暮らしたいのであれば、良心的なブリーダーを探すこと、そして今回ご紹介したような遺伝子検査や定期的な健康診断、日々の食事や体重管理、ストレス対策、生活環境の整備などに配慮をしていくことが大切です。

 

かかりつけの動物病院の獣医師や看護師をはじめとしたスタッフと連携しながら、愛猫に快適な暮らしをさせてあげましょう。

 

スコティッシュフォールドの病気についてよくある質問

 

最後に、スコティッシュフォールドの病気について、よく聞かれる質問をご紹介します。愛猫の健康管理の参考にしてみてください。

折れ耳の場合は骨軟骨異形成症になる確率が高い?

はい。耳折れの場合の骨軟骨異形成症の確率は高く、ほぼ100%と言われています。ただし、「100%=重症化」というわけではありません。症状の強さには個体差がかなり見られます。

 

スコティッシュフォールドの特徴である耳折れは、TRPV4という遺伝子異常が原因だということがわかっています。この遺伝子は常染色体上にあり顕性遺伝するため、性別には関係なく、この遺伝子を1つでも持っていれば耳折れになります。

 

顕性遺伝のため、耳折れ同士で交配すると、骨軟骨異形成症の発症確率は90%以上になります。そのため、主要団体では耳折れ同士の交配を禁じています。そのおかげで、現在では遺伝子異常のTRPV4をホモで持つ(FF)個体はほぼいなくなりました。

 

それでも、耳折れ(Ff)と立ち耳(ff)の交配では、50%が骨軟骨異形成症になってしまいます。しかし実際には、成長過程で耳が折れない個体や折れが弱い個体も多く、「耳折れ」の分類は、必ずしも遺伝子構成と一致しているとは言えないようです。この外見上の分類をベースに、現在のスコティッシュフォールドが耳折れになる確率は約30%、立ち耳になる確率は約70%と言われています。

その他の病気にはなりやすい?

今回ご紹介した病気の他に、短頭種気道症候群、多発性嚢胞腎、尿石症、遺伝性網膜変性、肺腫瘍などを、スコティッシュフォールドの品種好発性疾患として挙げている専門書もあります。しかし、最もリスクの高い病気は骨軟骨異形成症だと考えて良いでしょう。

 

まとめ スコティッシュフォールドの病気を避けるために

 

スコティッシュフォールドは、純血種の猫が少ない日本の中でもとても人気の高い品種です。その人気の要因となっている耳折れは、スコットランドの農場で飼われていた1匹の猫の遺伝子異常による骨格障害が原因でした。そのため、耳折れのスコティッシュフォールドのほぼ全てが骨軟骨異形成症を持っていると考えられています。

 

健康なスコティッシュフォールドと暮らしたいのであれば、良心的なブリーダーを探すこと、そして今回ご紹介したような遺伝子検査や定期的な健康診断、日々の食事や体重管理、ストレス対策、生活環境の整備などに配慮をしていくことが大切です。

 

かかりつけの動物病院の獣医師や看護師をはじめとしたスタッフと連携しながら、愛猫に快適な暮らしをさせてあげましょう。

 

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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