高齢の猫の後ろ足に力が入らないのは病気のサイン?

2023.04.10
高齢の猫の後ろ足に力が入らないのは病気のサイン?
猫も高齢になると筋力や体の機能が衰え、それまでにはない症状が見られるようになります。後ろ足に力が入らないというのも、そのひとつ。前足はしっかりしているのに、後ろ足に力が入らず、ふらついたり、転んだりしてしまうことがあります。その様子を見ていると、飼い主さんとしては心配になることでしょう。ここでは、高齢になった猫の後ろ足に力が入らない原因、対処法について説明します。
目次


高齢の猫の後ろ足に力が入らない原因


まず、高齢になった猫の後ろ足に力が入らなくなる原因について見ていきましょう。考えられる原因はいくつかあります。

ひとつは、年をとったことによる筋肉量の減少と、それに伴う筋力の低下です。特に後ろ足は、ほかの部位に比べると衰えが出やすいとされており、ふと後ろ足を見たら骨ばっていて驚いたという飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

また、ケガをしていることが原因で後ろ足に力が入らない可能性もあります。足の裏の傷であれば飼い主さんもすぐに気づけるはずですが、例えば知らないうちに高い所から落ちるなどして、背中や腰にダメージを負っているということもあるかもしれません。猫は高い所が好きで、若いころなら上手に降りてくることができますが、高齢になり運動能力が衰えると、落下することも多くなってきます。

さらに気をつけたいのは、病気が原因となっているケースです。具体的なケガや病名についてはこの後の項目でまとめて説明しますので、ここでは、高齢猫の後ろ足に力が入らない原因として「筋肉量の低下と衰え」「ケガ」「病気」の3つがあることを押さえておいてください。

高齢猫が後ろ足に力が入らなくなるケガの種類


ひと口にケガといっても、いろいろなケガがありますが、飼い主さんもすぐに気づけるのが足の裏のケガです。外に出る猫の場合、木の枝やトゲなど、思わぬものが刺さってしまうことがあります。また、爪が伸びすぎて肉球に刺さったり食い込んだりということも。猫にとっては、後ろ足をついた瞬間に痛みを感じることになりますから、力の入らない歩き方になってしまうこともあります。

飼い主さんの目に見えないケガとして挙げられるのは、骨折や脱臼です。高い所から落ちて背中や腰を打ちつけてしまったり、外に出たときに車に接触したり、飼い主さんが見ていないところで思わぬケガをしていることもよくあります。さらに、そのケガが影響して骨に炎症が起きてしまうことも。

骨折、脱臼、炎症は、見た目にはわかりにくいかもしれませんが、抱き上げたり体に触れたりすると、痛がる素振りを見せます。そういった様子も判断材料にしていきましょう。

高齢猫が後ろ足に力が入らなくなる病気の種類


次に、病気です。高齢猫の後ろ足に力が入らなくなる病気は、思いのほか多くあります。

まず挙げられるのが、脳腫瘍です。脳に腫瘍ができると、体の動きにさまざまな障害が出ます。どのような障害が出るかは腫瘍ができた位置や大きさにもよりますが、うまく立てなかったり、歩こうとして足がもつれたりするほか、痙攣や性格の変化なども脳腫瘍の症状のひとつです。

高齢猫に多いといわれている心筋症でも、後ろ足にふらつきが見られます。心筋症は心臓の働きに異常が出る病気ですが、やっかいなのは血栓が生じること。血栓が後ろ足に詰まってしまうケースがあり、そうなると後ろ足の血液の循環が悪くなりますから、力を入れることが難しくなります。ひどくなると麻痺してしまうので、早めの処置が必要です。

糖尿病も、後ろ足に影響が出る可能性があります。猫が糖尿病にかかると、後ろ足のかかとが上がらなくなってしまうケースがあり、もし愛猫のかかとが地面についていたら、すぐに動物病院を受診したほうがいいでしょう。

そのほか、直接的な原因というわけではありませんが、ウイルス感染症、腎臓病、甲状腺機能亢進症などの病気の影響で貧血や体力低下が引き起こされると、それが後ろ足のふらつきにつながることがあります。

後ろ足に力が入らない高齢猫への対処法


高齢となった愛猫の後ろ足に力が入らないとき、飼い主さんはどのように対処したらいいのでしょうか。

まず、足や足の裏を確認し、もしキズなどがあって、自然に治ることが明らかな軽傷の場合のみ、自宅で様子を見てもいいでしょう。重傷の場合や、キズなどが見当たらなくても抱き上げたときに嫌がる場合、もしくは原因が全く分からない場合などは、獣医師に診察してもらってください。

内臓の病気、骨折や脱臼のような目に見えないことも、必要な検査をすればはっきりと診断がつきます。飼い主さんが安易に大丈夫だと判断するのは、ケガや病気を見落とす可能性があることを覚えておきましょう。


高齢猫の後ろ足に力が入らない場合、その原因としてはいくつかのことが考えられます。時には脳腫瘍や心筋炎など命に関わる病気の可能性もありますし、気がつかないところでケガをしていることもあるかもしれません。後ろ足に力が入らない、ふらつくといった様子が見られたら、早めに獣医師の診察を受けるようにしてくださいね。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

コラム一覧を見る