老犬の下痢の対処法とは? 病院にはすぐに連れていくべき?

2022.10.28
老犬の下痢の対処法とは? 病院にはすぐに連れていくべき?
さまざまな不調に見舞われるようになる老犬にとって、下痢は決して珍しい症状ではありません。大切なのは、飼い主さんが焦ったり、おろおろしたりしないこと。知識さえしっかり持っていれば、落ち着いて対処できます。
老犬の下痢について、受診の目安も含め、対処法や予防について説明しますので、どうぞ参考にしてください。
目次


老犬の下痢はすぐに病院に連れて行ったほうがいいの?

老犬の下痢は決して珍しいことではありませんが、原因はさまざま。すぐに回復することもありますし、動物病院での治療を必要とすることもあります。次のような様子が見られたときには受診することをおすすめします。
ただし、老犬の場合は思わぬ病気が隠れている場合もありますので、老犬の状態をしっかりと把握した上で、動物病院に相談するようにしましょう。

まずは、元気がなくぐったりしていて、食欲もないというとき。さらに便の状態が泥のようだったり水のようだったりというときは、できるだけ早く受診したほうがいいでしょう。

なお、元気や食欲がある場合でも、2日〜3日下痢が止まらない、回復に向かう様子が見られないというときは、受診することをおすすめします。
そのほか、下痢にプラスして嘔吐が見られる、便に明らかに血が混ざっている、食事を変更していないのに便の色がいつもより黒っぽいというときも、受診してください。便の色が黒っぽくなっているときは、胃などからの出血も考えられます。

なお、診察に連れていくときは、可能であれば便を持参しましょう。便の状態や色にはさまざまな情報が詰まっているため、獣医師が診察する際の手助けになります。

老犬の下痢の原因


ところで、下痢はどのような原因で起きるのでしょうか。症状により「急性胃腸炎」と「慢性胃腸炎」に分けることができるので、それぞれについて原因を説明します。

急性胃腸炎は、傷んだフードで増殖した菌、ウイルスなど、体に何かしらの異物が入り込み、それを排出するために起こる一過性の下痢症状のことです。原因となる物質が排出されてしまえば、自然に治癒、回復していくことが多いです。

急性胃腸炎は、フードやおやつの変更、もしくは与えすぎにより、消化不良を起こすことでも発症します。胃腸が正常に機能しなくなってしまったためで、消化不良は誤飲や誤食でも起こります。

また、ストレスへの耐性の低下や、老犬の場合は年をとって体温調節が上手にできなくなったことによる冷えも急性胃腸炎を引き起こす原因といわれています。さらに、ワクチン接種によるアレルギーが引き金になることもあります。アレルギーとして出る症状は下痢だけでないので、ワクチン接種後は全身症状、呼吸の様子にも注意しながら、安静に過ごすことが大切です。

このような症状が数日で回復に向かえば急性胃腸炎と判断できますが、よくなる気配が見られない、数週間以上も下痢が続くという場合は、慢性胃腸炎と診断されます。原因としては、ストレスが継続していることや老化により消化機能が衰えていること以外にもアレルギーや腫瘍を含む様々なものが考えられます。

老犬の下痢の対処法


老犬が下痢をした場合、思わぬ病気が隠れている可能性がありますので、自分で判断するのではなく、動物病院へ相談しましょう。その上で、自分で対処できることを次のようなかたちでやってみてください。

まずは、食べ物を消化しやすいものにすることです。具体的には、ふやかしたフードやペースト状のフードなど、やわらかいものを与えてください。胃腸に負担がかかる冷たいものや硬いものは避け、食事量は控えめにします。下痢をすると多量の水分が排出されてしまうので、こまめに水分補給をすることもポイントです。

生活環境面では、老犬にストレスがかかっていないかをチェックしてみましょう。冷暖房の位置、外からの騒音など、気づかないうちに影響を及ぼしていることがあるかもしれません。また、環境だけでなく、足腰が弱って痛みを感じている、目や鼻の機能が衰えて不自由を感じているなど、体の変化も老犬にとってのストレスとなる可能性があります。

日ごろからよく観察してストレスの原因を探り、必要な対策を講じることが大切です。また、老犬の様子で不安に思うことがあれば、その都度病院に相談することも検討するといいでしょう。

老犬の下痢の予防方法


体が老いていくのは自然の摂理なので仕方のない面もありますが、下痢を予防するために気をつけたいことがいくつかあります。

ひとつは、老犬の胃腸に負担をかけないためにも、いきなりのフード変更はしないこと。もうひとつは、老犬が落ち着いて過ごせるように環境を整えてあげることです。周囲の環境はもちろん、使い続けてきたフード用のボウル、寝具マットなど、もしかしたら年齢に合わなくなっているものもあるかもしれません。この機会に見直してみましょう。結果的に下痢の予防につながることがあります。


老犬が下痢をするととても心配になりますが、慌てずによく様子を見て、適切に対処することが何よりも大切です。食欲はあるか、便の状態はどうか、ぐったりしていないかなど、ひとつひとつ確認してみてください。老犬になると、体のあちらこちらに不調が出ることも考えられます。どうぞ落ち着いて、適切な対処をしてあげてくださいね。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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