小型犬がかかりやすい「気管虚脱」の症状や原因・治療法など

2022.11.29
小型犬がかかりやすい「気管虚脱」の症状や原因・治療法など
小型犬によく見られる疾病のひとつに「気管虚脱」があります。気管は呼吸に関与する器官ということもあり、どちらかというと症状に気づきやすい疾病です。その具体的な症状とはどういったものなのでしょうか。また、気管虚脱になる原因や治療法についても、この記事であわせて説明しますので、ぜひ愛犬の健康にお役立てください。
目次


「気管虚脱」は小型犬に多い?


まず、気管虚脱という疾病について説明しますので、理解を深めておきましょう。

気管とは、鼻や口から取り込んだ空気を肺に送るための管で、中が空洞の細長い形をした器官です。さらに管の外側は「C」のような形をした軟骨に覆われています。形のイメージとしてよく例に挙げられるのが、洗濯機や掃除機のホースです。周囲を軟骨に守られているため、気管はきれいな筒状の形を維持することができています。

ところが、何らかの原因により、軟骨が本来の形を保てなくなることで、歪んだり形がおかしくなってしまったりすることがあります。そうすると、気管はきれいな筒状を保つことができず、その部分がつぶれてしまった状態になり、これを「気管虚脱」といいます。

症例が多く報告されているのは小型犬ですが、中型犬や大型犬に発症しないというわけではありません。どんな犬にも起こる可能性がある疾病と考えておいてください。

犬の気管虚脱の症状


続いて、症状について確認しておきましょう。

気管虚脱が疑われる初期症状は、乾いた咳です。ただし、咳だけであればほかの疾病の可能性もあるので、「咳が出た、もしや気管虚脱では!?」と慌てないようにしましょう。

気管虚脱の症状は、少しずつ進行していく場合と、急激に進行する場合があります。咳のあとは、呼吸が「ゼイゼイ」と荒くなったり、「ガーガー」「グーグー」という苦しそうな呼吸をしたりという症状へ移り変わっていきます。特に激しい運動をした後や興奮状態になったときに出やすい症状なので、覚えておくといいでしょう。症状がひどくなると呼吸困難になることもあります。

なお、気管虚脱は症状の度合いにより、4つのグレードに分類されています。
  • グレード1…気管の直径の減少率が25%ほどで、症状としては軽症。
  • グレード2…気管の50%ほどがつぶれた状態で、中等症。
  • グレード3…気管の75%ほどがつぶれてしまった状態で、かなり重症。
  • グレード4…気管の内腔が殆どなくなるほどつぶれてしまった、最も重症の状態。

気管虚脱であるかどうか、どのグレードに該当する症状なのかは、基本的にレントゲン写真を撮影し、その画像で診断されます。また、機材が揃っている動物病院では、超音波検査、気管支鏡検査を診断に用いることもあります。

犬の気管虚脱の原因


さて、犬はどうして気管虚脱を発症するのでしょうか。そのはっきりとした原因は、今のところわかっていません。ただ、次のようなことが原因ではないかと考えられています。

ひとつは、遺伝です。これは、チワワ、マルチーズ、ヨークシャー・テリアといった「トイ種」、いわゆる小型犬に多く見られるからです。遺伝的にそういった因子を持っているのではないかと考えられています。

遺伝的要因以外では、吠えすぎ、首輪による圧迫、肥満、老化など。これらが気管に何かしらの影響を及ぼしているのではないかといわれています。

犬の気管虚脱の治療法


愛犬が気管虚脱と診断された場合、どのような治療が行われることになるのかを見ていきましょう。

気管虚脱になると、残念ながら自然治癒することは望めません。治療の主眼は、症状を悪化させないように、原因と思われるものを排除することに置かれます。例えば首輪の圧迫によるものと考えられるなら首輪をハーネスに変更するなどして、首のあたりが圧迫されないようにしたり、肥満が原因と考えられるなら体重を減らしたりといったことが行われます。激しい運動をしないようにする、むやみに興奮させないようにすることも大切です。

そのうえで動物病院では、症状に応じて次のいずれかの治療を選択することになります。
内科治療
症状が軽い場合は、投薬を受けながら経過観察となるケースがほとんどです。ただし、投薬は症状を軽くするためのもの。ひどい咳を抑えるための咳止めのお薬、つぶれた気管を広げる気管支拡張剤、炎症を抑えるステロイド、からんだ痰を除去する薬などが、症状に応じて処方されます。つぶれた気管を修復できるわけではないので、投薬は継続することが基本です。
外科治療
症状が重い場合は、手術による治療が行われます。方法は2通りで、気管を外側から補強する方法、もしくは気管虚脱が認められる部分にステントと呼ばれる器具を挿入して気管を広げる方法です。

どちらも、咳や呼吸の症状がおさまるなど術後の経過は良好とされています。ただ、気管そのものが元に戻ったわけではなく、器具で補助している状態です。術後は、合併症や再発に気をつけながら過ごすようにします。


愛犬が乾いた咳をしたり、苦しそうな呼吸をしたりするようになったら気管虚脱の可能性がありますので、獣医師に診察してもらいましょう。軽症であれば症状を抑える投薬での経過観察、重症の場合は手術による治療が行われます。愛犬の呼吸の様子には、どうぞ気をつけてあげてくださいね。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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