犬の脳腫瘍とは? 症状や治療について解説

2022.12.03
犬の脳腫瘍とは? 症状や治療について解説

犬も脳腫瘍を発症することがあります。腫瘍ができた脳の部位や大きさによって引き起こされる神経症状が異なり、早期発見が難しく、治りにくい病気でもあります。

この記事では、脳腫瘍はどのような症状が出るのか、治療はどのように行われるのかを説明しますので、愛犬の健康のためにお役立てください。

目次


犬の脳腫瘍とは


脳腫瘍とは、犬の頭蓋骨の内部に発生した腫瘍を総称したものです。「原発性脳腫瘍」と「二次性脳腫瘍」という2つのタイプに分けられ、原発性脳腫瘍は、頭蓋骨内部の組織にできた腫瘍をいいます。二次性脳腫瘍は、ほかの部位から転移・浸潤した腫瘍であった場合に診断されるものです。


脳腫瘍には、髄膜腫、神経膠腫(グリオーマ)、下垂体腺腫、リンパ腫などのいくつかの種類がありますが、いずれも腫瘍が脳を圧迫し、さまざまな神経症状を引き起こすという点は同じです。


どうして脳腫瘍ができてしまうのか、はっきりとした原因は、残念ながら現段階ではわかっていません。



犬の脳腫瘍の症状


脳腫瘍は脳のどこにできるかが分からず、また大きさもさまざまということもあり、症状は発生した部位や大きさによって異なります。


例えば元気や食欲がなくなる、フードの好みが変わるなど生活習慣面での変化が見られることもあれば、歩行時や走行時のふらつき、一方向への旋回運動や徘徊、緩慢で鈍い動きなど、行動面での変化が見られることもあります。


そのほか、視覚や聴覚に影響が出ることもありますし、頭や首が傾いてしまう、物にぶつかる頻度が増える、性格が極端に変化する、大量によだれが出る、けいれん発作や意識障害を起こすといったことも脳腫瘍が疑われる症状です。また、腫瘍によって脳内の圧力が高まると脳ヘルニアを引き起こしてしまい、急激に症状が悪化することもあります。


症状とその経過から脳腫瘍が疑わしい場合は、血液検査やレントゲン検査、MRI検査などを実施し、腫瘍の有無などを確認しながら診断がくだされることになります。なお、検査では麻酔をかけることもあるので、事前に獣医師の説明をしっかりと聞くようにしましょう。



犬の脳腫瘍の治療方法


検査の結果、脳腫瘍と診断されたときには、どのような治療が行われることになるのでしょうか。解説していきます。


まずは外科手術です。頭蓋骨を切開し、該当する腫瘍を切除します。頭部を切り、さらに脳に処置を施すため、後遺症や合併症などを引き起こすリスクが伴います。そのため、外科手術を受けるかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。


次に、腫瘍に放射線を当てて治療する方法もあります。放射線療法は、手術ができない部位や、手術後に残った部位などに用いられることが多いようです。患部組織が小さくなり、再発防止につながるともいわれています。ただし、どんな脳腫瘍にも有効というわけではなく、治療できる病院も限られているという点を覚えておきましょう。


その他には、抗がん剤を投与して治療する方法もあります。この方法もすべての脳腫瘍に有効というわけではありません。また、副作用が出る可能性があります。


最後に、緩和療法をご紹介します。これは、脳腫瘍そのものに処置を施すのではなく、愛犬が生活の質を保ちながら暮らせるようにする治療方法です。例えば、薬で脳のむくみを軽減したり、けいれん発作が起きにくくする薬を投与したりといったことが挙げられます。


このように、脳腫瘍の治療にはいくつかの選択肢がありますが、いずれにしても、愛犬の体力や状態、飼い主さんの家庭状況などを加味して、獣医師とよく相談することが大切です。



犬の脳腫瘍への家庭でのケア


脳腫瘍は残念ながら予防することができない病気のため、愛犬が発症する可能性はゼロではありません。愛犬が脳腫瘍と診断されたら、どのようにケアをしていくのがいいのか、家族みんなで意思の統一をはかっておきましょう。


また、症状が出た際に慌てずに対応できるように、心構えをしておくことも大切です。けいれん発作を起こしたときは、抱っこをしたり、体をさすったりしたくなるかもしれませんが、愛犬の体には触れず、おさまるのを待ちながら状況をしっかり記録します。診察を受ける際、獣医師にとって大切な情報となります。


普段の生活では、何かにぶつかったり、段差から落ちてしまったりすることのないよう、周囲に気を配ってください。危ないものがあれば場所を移動し、室内の階段にはゲートを取りつけておくと安心です。食事は、高たんぱくで栄養バランスの良いものを与えるといいでしょう。



犬の脳腫瘍は、予防のできない病気であり、原因もはっきりとはわかっていません。そのため、日ごろから愛犬の様子をよく観察し、気になることがあったときには早めに獣医師に相談することが大切です。また、脳腫瘍の症状や、症状が出た際にどのように対処すればよいかもしっかりと確認しておきましょう。

 

監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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