猫の糖尿病とは? 原因や治療法・対策など
2023.04.10
糖尿病は、人間の病気として広く知られていますが、猫も患うことがあります。とはいえ、猫と人間では生活パターンも異なれば、食べるものも違います。猫の糖尿病は、どのような原因で発症するものなのでしょうか。また、糖尿病と診断された場合、どのような治療をすることになるのでしょうか。予防法や対策も含めてお伝えします。
初めに猫の糖尿病について概要を押さえておきましょう。
猫の糖尿病は人間の糖尿病と同じで、血液中のブドウ糖が多くなって減らない、いわゆる「血糖値」の高い状態が続く病気です。
本来であれば、膵臓から分泌されるインスリンの働きによりブドウ糖が細胞内に取り込まれ、血糖値のコントロールが行われます。そのため、血糖値の高い状態が続いてしまうことはありません。
ところが、正常にインスリンが分泌されなかったり、分泌はされるものの働きが弱くなったりという理由で、血液中のブドウ糖が減らない状態になってしまうのです。猫の場合、症例が多く見られるのはシニア期に入ってからですが、若い年齢でも発症することがあるので、油断はできません。
なお、糖尿病はその原因により、大きくふたつの型に分けられています。
膵臓から分泌されるインスリンが不足して起こる1型糖尿病と、インスリンは分泌されているものの働きが弱くなって発症する2型糖尿病です。犬の場合は、大多数が1型で2型を発症するのは稀だと言われていますが、猫の場合は逆。発症数が多いのは、2型だとされています。
さて、猫が糖尿病になると、どのような症状が出るのでしょうか。
初期のころは無症状というケースもあるのですが、次第にたくさん水を飲んでたくさんおしっこをする「多飲多尿」という症状が見られるようになります。これは、血液中の減らない糖を、おしっこで排出してコントロールしようとするための症状です。
また、栄養分となる糖が細胞内に行き渡らないと、体はどうにかして栄養を得ようとします。そのため、食欲が増加して食べる量が増えることも初期に見られる症状のひとつです。ただ、いくら食べても血液中に多量の糖がある状態は変わりません。細胞に糖が取り込まれるようにはならないため、食べる量は多いのに痩せるという症状が見られるようになります。
さらに症状が進むと、猫には特徴的な症状が見られることもあります。それは、かかとをつけて歩くようになることです。通常、猫は肉球を地につけて歩きますが、もし愛猫のかかとが下がって床につけながら歩いていたら、糖尿病の可能性があります。
さらに病気が進行すると、栄養分を取り込むことのできない体からは元気が失われ、次第に食欲も低下していきます。歩くときにふらつく、毛艶が悪くなるなど、明らかな不調が目につくようになります。
では、どうして猫の糖尿病は発症するのでしょうか。
原因はさまざまですが、ひとつには不適切な食生活が挙げられます。人間でも指摘されることですが、食べすぎてしまうこと。特に、猫に適した高たんぱく・低炭水化物の食事ではなく、炭水化物が多めの食事は高血糖を引き起こす原因となる可能性があります。また、肥満も原因のひとつです。その背後にあるのは、食べすぎや運動不足など。
環境的な要因としては、ストレスが挙げられます。なぜなら、ストレスを感じると血糖値は上がるとされているからです。トイレが汚れている、落ち着いてくつろげる場所がないなど、気づかぬうちに愛猫にストレスがかかっていないか、チェックしてみてください。
そのほか、膵炎など膵臓の病気、口内炎といった炎症から糖尿病になることもあるので、覚えておきましょう。
次に、愛猫が糖尿病と診断されたらどのように治療するのかを見ていきましょう。
まずは、インスリンの投与です。糖尿病は、インスリンが不足していたり、うまく働かなかったりすることで起こります。そこで、体の外からインスリンを補充し、血糖値をコントロールしようというわけです。
インスリンの投与は、基本的に1日2回、飼い主さんが注射で行います。もちろん獣医師もサポートしますし、薬との相性も含めて慎重に経過観察をしながら進めていきます。
もうひとつの治療の重要な柱が、食生活を改善することです。糖尿病の猫専用の療法食を用いたり、高たんぱく・低炭水化物の食事を与えたりというかたちで進めていきます。ただ、どのような食事が望ましいかは、猫の体格や体調によりけり。食生活については、自己判断せず、獣医師のアドバイスを受けて対処していきましょう。
最後に、猫の糖尿病の予防法や対策についてお伝えします。
先ほど挙げた猫の糖尿病の原因の中から、飼い主さんに対応できるものから順に取り組んでいくことが予防につながります。
例えば、高たんぱく・低炭水化物の食事に切り替えること、一緒に遊んで適度な運動を促すことなどは、今日からできることではないでしょうか。愛猫がストレスを感じているようなら、愛猫にとって心地好い環境を整えることも、大切な糖尿病対策です。日々のケアを心がけることが、糖尿の予防につながるでしょう。
猫の糖尿病の原因、症状、予防法や対策についてはおわかりいただけたでしょうか。愛猫の食事内容や生活環境をチェックし、糖尿病にならないように見守ってあげましょう。多飲多尿、かかとをつけて歩くなど、気になる症状が見られたら、動物病院で獣医師の診察を受けるようにしてください。
猫の糖尿病とは
初めに猫の糖尿病について概要を押さえておきましょう。
猫の糖尿病は人間の糖尿病と同じで、血液中のブドウ糖が多くなって減らない、いわゆる「血糖値」の高い状態が続く病気です。
本来であれば、膵臓から分泌されるインスリンの働きによりブドウ糖が細胞内に取り込まれ、血糖値のコントロールが行われます。そのため、血糖値の高い状態が続いてしまうことはありません。
ところが、正常にインスリンが分泌されなかったり、分泌はされるものの働きが弱くなったりという理由で、血液中のブドウ糖が減らない状態になってしまうのです。猫の場合、症例が多く見られるのはシニア期に入ってからですが、若い年齢でも発症することがあるので、油断はできません。
なお、糖尿病はその原因により、大きくふたつの型に分けられています。
膵臓から分泌されるインスリンが不足して起こる1型糖尿病と、インスリンは分泌されているものの働きが弱くなって発症する2型糖尿病です。犬の場合は、大多数が1型で2型を発症するのは稀だと言われていますが、猫の場合は逆。発症数が多いのは、2型だとされています。
猫の糖尿病の症状
さて、猫が糖尿病になると、どのような症状が出るのでしょうか。
初期のころは無症状というケースもあるのですが、次第にたくさん水を飲んでたくさんおしっこをする「多飲多尿」という症状が見られるようになります。これは、血液中の減らない糖を、おしっこで排出してコントロールしようとするための症状です。
また、栄養分となる糖が細胞内に行き渡らないと、体はどうにかして栄養を得ようとします。そのため、食欲が増加して食べる量が増えることも初期に見られる症状のひとつです。ただ、いくら食べても血液中に多量の糖がある状態は変わりません。細胞に糖が取り込まれるようにはならないため、食べる量は多いのに痩せるという症状が見られるようになります。
さらに症状が進むと、猫には特徴的な症状が見られることもあります。それは、かかとをつけて歩くようになることです。通常、猫は肉球を地につけて歩きますが、もし愛猫のかかとが下がって床につけながら歩いていたら、糖尿病の可能性があります。
さらに病気が進行すると、栄養分を取り込むことのできない体からは元気が失われ、次第に食欲も低下していきます。歩くときにふらつく、毛艶が悪くなるなど、明らかな不調が目につくようになります。
猫の糖尿病の原因
では、どうして猫の糖尿病は発症するのでしょうか。
原因はさまざまですが、ひとつには不適切な食生活が挙げられます。人間でも指摘されることですが、食べすぎてしまうこと。特に、猫に適した高たんぱく・低炭水化物の食事ではなく、炭水化物が多めの食事は高血糖を引き起こす原因となる可能性があります。また、肥満も原因のひとつです。その背後にあるのは、食べすぎや運動不足など。
環境的な要因としては、ストレスが挙げられます。なぜなら、ストレスを感じると血糖値は上がるとされているからです。トイレが汚れている、落ち着いてくつろげる場所がないなど、気づかぬうちに愛猫にストレスがかかっていないか、チェックしてみてください。
そのほか、膵炎など膵臓の病気、口内炎といった炎症から糖尿病になることもあるので、覚えておきましょう。
猫の糖尿病の治療法
次に、愛猫が糖尿病と診断されたらどのように治療するのかを見ていきましょう。
まずは、インスリンの投与です。糖尿病は、インスリンが不足していたり、うまく働かなかったりすることで起こります。そこで、体の外からインスリンを補充し、血糖値をコントロールしようというわけです。
インスリンの投与は、基本的に1日2回、飼い主さんが注射で行います。もちろん獣医師もサポートしますし、薬との相性も含めて慎重に経過観察をしながら進めていきます。
もうひとつの治療の重要な柱が、食生活を改善することです。糖尿病の猫専用の療法食を用いたり、高たんぱく・低炭水化物の食事を与えたりというかたちで進めていきます。ただ、どのような食事が望ましいかは、猫の体格や体調によりけり。食生活については、自己判断せず、獣医師のアドバイスを受けて対処していきましょう。
猫の糖尿病の予防と対策
最後に、猫の糖尿病の予防法や対策についてお伝えします。
先ほど挙げた猫の糖尿病の原因の中から、飼い主さんに対応できるものから順に取り組んでいくことが予防につながります。
例えば、高たんぱく・低炭水化物の食事に切り替えること、一緒に遊んで適度な運動を促すことなどは、今日からできることではないでしょうか。愛猫がストレスを感じているようなら、愛猫にとって心地好い環境を整えることも、大切な糖尿病対策です。日々のケアを心がけることが、糖尿の予防につながるでしょう。
猫の糖尿病の原因、症状、予防法や対策についてはおわかりいただけたでしょうか。愛猫の食事内容や生活環境をチェックし、糖尿病にならないように見守ってあげましょう。多飲多尿、かかとをつけて歩くなど、気になる症状が見られたら、動物病院で獣医師の診察を受けるようにしてください。
- 監修者プロフィール
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牛尾 拓(ウシオ タク)
経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許