【26年最新獣医師監修】猫のてんかんとは?原因や症状・対処法・治療などについて

2026.05.11
【26年最新獣医師監修】猫のてんかんとは?原因や症状・対処法・治療などについて

急に体がけいれんしたり、意識を失ったりするなどの症状が出るてんかん。猫もてんかんの発作を起こすことがあります。いつもとは違う様子を目の当たりにすると飼い主さんは動揺してしまいがちですが、落ち着いて対処するためにもてんかんについての基本的な知識を身につけておきましょう。この記事で、猫のてんかんの原因、症状、対処法や治療法について説明しますので、お役立てください。



目次



猫の「てんかん」ってどんな病気?


まず、猫の「てんかん」がどのような病気か、確認しておきましょう。「てんかん」は、脳が発する電気信号に異常が生じ、全身または体の一部に、けいれんや手足の突っ張りなどの発作症状が出る病気です。

24時間以上あけて2回以上のてんかん発作が確認された場合、「てんかん」と定義されるとされています。「てんかん」という病気の名前と「てんかん発作」という症状の名前が混同されることがよくありますが、それらは別物です。

 

現れる症状や起こる頻度間隔は猫によって異なりますが、多くの場合、発作は30秒~2分程度でおさまり、落ち着きを取り戻します。ただ、時として発作が長引くことがあり、その場合は注意が必要です。

 

いきなり目の前で愛猫がけいれんを起こしたり手足を突っ張らせたりすると、多くの飼い主さんは驚き慌ててしまいます。しかし、この後で説明するように、てんかんでは落ち着いて対処することが何よりも大切です。



猫のてんかんの原因


猫では犬と異なり、脳腫瘍や脳炎などの原因が明らかなタイプが多いことが特徴とされています。

全身または体の一部をけいれんさせるような発作を、引き起こす原因別に分類すると、下記の3つになります。


  • 構造的てんかん

  • 特発性てんかん

  • 反応性発作

 

上記の内、反応性発作は低血糖や熱中症、高尿素血症(重度の腎機能低下等)など、脳以外の病気が原因となるため、厳密にはてんかんではありません。またてんかんも、原因別に構造的てんかん、特発性てんかんの2つに分類できます。ここでは、この2つのてんかんについて詳しく解説します。

構造的てんかん(症候性てんかん)

画像検査(MRI)や脳脊髄液検査を行った結果、脳の構造や形状に関わる病変が見つかった場合、この病変がてんかんの原因だと診断されます。原因が脳の構造的な問題にあるため、構造的てんかんと呼ばれています。以前は症候性てんかんと呼ばれていました。

 

猫のてんかんにおける原因別発生割合は、調査機関によって異なりますが、構造的てんかん(約60%以上)の方が特発性てんかん(約20%前後)よりも多いという報告が多いです。構造的てんかんは7歳以降の高齢になってから現れるケースが多いとされています。

 

具体的には、脳腫瘍、脳炎、脳内出血、脳血管障害などの病気が挙げられ、主に根本原因となるこれらの治療を行っていくことになります。

特発性てんかん

画像検査(MRI)や脳脊髄液検査では明らかな異常が見つからないてんかんは、特発性てんかんと診断されるのが一般的です。遺伝的な要因が強く疑われていますが、正確にはまだ解明されていません。

 

特発性てんかんは、生後6ヶ月齢〜6歳に見られることが多いとされています。

 

猫のてんかんの症状


てんかん発作と聞くと、多くの方が思い浮かべるのが、全身をけいれんさせるような発作ではないでしょうか。しかし、てんかん発作には、全身に現れる症状と、部分的にしか現れない症状があります。

 

そのため、飼い主さんが愛猫のてんかん発作に気付いていないケースもあるかもしれません。それぞれの症状について詳しく解説します。

全身に現れる症状(全般発作)

てんかん発作のうち、症状が全身に現れるものを全般発作、または大発作と言います。多くの場合、発作を起こす前触れとして行動の異変が見られることがあります。例えば体が毎回同じ方向に揺れ始める、よだれがでる、飼い主のそばから離れないなどですが、前触れの症状は猫によって異なり、気付きづらいものもあります。

 

前触れの後に始まる発作には、下記のようなものがあります。


  • 強直性発作:手足が硬直して全身が突っ張ったようになる

  • 間代性発作:走るように足をバタバタさせたり体全体をガクガクさせたりする

  • 強直性間代性発作:上記2つの発作を強直→間代の流れで、あるいは同時に引き起こす


 

発作の最中は、意識がもうろうとしていることが多く、全く意識がないこともあります。間代性発作の場合は、意識の有無に関わらず、かなりのスピードで体が移動することも多いです。

 

また、上記発作の最中には、合わせて下記のような症状を伴うこともあります。


  • 歯をカチカチとさせる

  • よだれを垂らす

  • 口から白い泡を拭く

  • 脱糞や失禁をする

 

多くの場合、発作は30秒〜2分程度でおさまりますが、しばらくは意識がもうろうとしていたり、足取りがふらついたりすることもあります。しかし、発作後数分〜数十分も経てば、けろっとしたように普段の状態に戻ることがほとんどです。

部分的に現れる症状(焦点性発作)

部分的に現れるてんかん発作を焦点発作、または部分発作と言います。現れる症状は脳のどこから異常な電気信号が出されるかによって異なり、主なものには下記が挙げられます。


  • よだれがでる

  • 顔や顔の一部(まぶたなど)がピクピクとけいれんする

  • 明らかに異常と思われる姿勢になる

  • 実際には何もいない空間に対して、虫を食べるように咬みつこうとする(フライバイト)

  • ごく一部の足だけをけいれんさせる

  • 通常とは異なる声を上げる

 

焦点発作から全般発作に移行することもありますが、焦点発作のみでおさまるケースも多く、その場合は愛猫のてんかん発作に気付かずに見過ごしてしまう飼い主さんも少なくありません。


愛猫がてんかん発作を起こしたときの対処法


愛猫がてんかん発作を起こしたときの対処法

 

愛猫のてんかん発作を初めて見た飼い主さんは、おそらく心臓が締め付けられるほど驚き、心配されることでしょう。また、歯をカチカチさせていると舌を噛んでしまうのではないかと心配になり、口を押さえたくなるかもしれません。しかし、発作中はあまり干渉せず、冷静に対処することが、愛猫と飼い主さん双方の安全を図るために大切です。

 

発作を起こした場所によっては、落下したり家具に激突したりする可能性があります。その場合、愛猫の体を押さえつけるのではなく、周囲の家具を移動させる、クッションなど緩衝効果のあるものでガードするなどの対処を行いましょう。また、咬傷事故を防ぐために口に手や物を入れないようにしましょう。

 

また、スマホで発作の様子を動画撮影したり、下記の内容を整理した記録を残したりすることをおすすめします。動画やメモとして残した記録は、動物病院での詳細な報告を助け、獣医師による診断や治療をスムーズに進めることに役立ちます。


  • 発作が起こった日付と時刻

  • 発作が続いた分数

  • 発作が起きる直前に何をしていたか(寝ていた、遊んでいた、食事前/中/後等)

  • 発作の内容(意識の有無、具体的な症状等)

  • 発作後の様子

  • その他気になる点

 

発作が断続的に繰り返される場合は、その都度記録してください。発作が起こる頻度や時間間隔なども、診断に重要な情報となります。発作がおさまり落ち着きを取り戻したら、れらの情報を持って、必ず動物病院を受診してください。


てんかんの中には緊急治療が必要なケースもあります。以下に該当する場合は様子を見ないですぐに病院を受診しましょう。


  • 発作が5分以上続く

  • 24時間以内に2回以上の発作が起こる

  • 意識が戻らない


これらはてんかん重積と呼ばれ、緊急治療が必要となります。

 

猫のてんかんの治療について


実際に愛猫がてんかん発作を起こした場合、できるだけ速やかに動物病院で診察を受け、原因を見極めた上で適切な治療を受けましょう。治療内容や期間などは、原因や猫の状態などによって変わりますが、一般的な猫のてんかんの治療について、治療方法、治療開始の目安、目安となる治療費の観点で解説します。

治療方法

構造的てんかんの場合は、その病気の治療を行うことで、てんかん発作の程度や頻度を改善していきます。治療方法は病気により異なりますが、手術が可能な位置に発症した脳腫瘍などのように、外科的手術も含めて根治を目指せる病気もあります。根治を目指せない病気の場合も、病気の治療を中心にしながら、必要に応じて抗てんかん薬によるてんかん発作のコントロールを目指します。

 

特発性てんかんの場合は、抗てんかん薬によるてんかん発作のコントロールが基本の治療になります。犬・猫のてんかんに関する文献では、単剤の投与でコントロールできる症例が20%〜30%、2剤以上で発作間隔を延ばせる症例が約50%、残りの約20%は投薬では難しい難治性てんかんという報告もあります。


抗てんかん薬としてはフェノバルビタールやレベチラセタム、ゾニサミドなどがあり、レベチラセタムは副作用が少なく猫での使用が増加しているとされています。これらの抗てんかん薬は完治目的ではなく、発作頻度と重症度を下げる目的で使用されます。

治療開始の目安

特発性てんかんの場合、治療を開始する目安としては、3ヶ月に2回以上の発作がある場合が望ましいと言われていますが、獣医師によって1ヶ月に1回以上とか6ヶ月に2回以上、また1回以上発作を起こしたらその時点でという意見もあり、一概には言えません。

 

なお構造的てんかんの場合は早期治療が望ましいですが、検査なしに特発性てんかんか構造的てんかんを判断することはできないため、1回でもてんかん発作を起こした場合は、まず動物病院で診察してもらうことが大切です。

治療費の目安

ここでは、特発性てんかんにかかる治療費の一例をご紹介します。動物病院での治療はすべて人の自由診療に相当するため、治療にかかる費用は動物病院によって異なります。また抗てんかん薬も、その猫に適したものが処方されるため、あくまでも一例として参考にしてください。加えて、てんかんの原因を調べるための検査費用等も別にかかり、MRIが必要になる場合は10万円またはそれ以上の費用がかかることがあります。

 

下記は、某ペット保険会社に請求された、猫のてんかんの内服治療費の一例です。平均額や水準額ではありませんので、あくまで目安として参考にしてみてください。


  • 診察料(再診費用):500~1,000円

  • 内服薬(1ヶ月分):3,000~8,000円

  • 処方料:500円

  • 合計:4,000~10,000円


猫のてんかんについてよくある質問

 

猫のてんかんについてよくある質問

 

最後に、猫のてんかんについてよく寄せられる質問をご紹介します。てんかんはあまり身近な病気ではないため、発作が出ていても飼い主さんには気付きづらかったり、実際に愛猫のてんかん発作を目撃して動揺し、パニックになってしまったりすることもあります。そのため、現状は愛猫にてんかんの懸念がなくても、事前に一読しておくと、いざという時の参考になるでしょう。

発作の予兆はある?

必ず予兆があるとは限りません。しかしよく観察していると、てんかん発作を起こす前に、毎回同じ前触れが起きていることも決して少なくありません。前触れに気付けるようになると、その後に起きる発作に対する環境や心の準備ができ、発作中の愛猫や飼い主さんの安全を確保できるようになるでしょう。

 

てんかん発作の前触れとしては、下記のようなものが知られています。


  • よだれがでる

  • 部屋のすみに行こうとする

  • 飼い主のそばに来て離れようとしない

  • 震えが出る

  • 急におとなしくなる

  • 急に走り始める

  • 体が同じ方向に揺れ始める

寿命にも影響する?

病気に対して治療や手術を行った後の経過を予後と言います。予後が悪い病気の場合は、その病気にかからなかった猫と比較すると短命に終わり、寿命に影響するケースもあり得ます。

 

構造的てんかんの場合の予後は、根本原因となった病気によって良し悪しが異なりますので、一概に寿命に影響するかどうかは言えません。

 

治療の目標が生活の質(QOL)の向上となる特発性てんかんの場合も、抗てんかん薬でてんかん発作をコントロールできれば、寿命に影響を与えることはあまりないと言われています。

 

ただし、1回の発作が5分以上継続する、または発作が治まる前に次の発作がかぶさるように起きてしまう重積発作や、24時間以内に2回以上の発作が繰り返し起こる群発発作が見られる症例では、短命だったという報告もあります。

 

また、発作が起きた場所によっては怪我をすることもあるため、発作を起こしている猫の周囲はできるだけ障害物がないように配慮しましょう。

てんかんは予防できる?

てんかんに対する有効な予防法はありません。ただし、日頃から愛猫の健康管理に配慮し、定期的に健康診断を受けることは、構造的てんかんの予防や早期発見に役立つでしょう。

 

またてんかん発作を引き起こす脳機能の乱れは、大きな音・強い光・強い緊張や不安などのストレスが引き金となることがあります。愛猫がてんかんと診断された場合は、できるだけ興奮させたりストレスを与えたりしない、穏やかな生活を心がけることで、てんかん発作の予防につながる可能性もあります。

 

人を対象にした研究ですが、2014年に、1日1,080mg程度の低用量の魚油(EPAおよびDHA)の摂取により、てんかん発作の頻度を33.6%低下させたという研究が発表されました。最近では猫に使用できるサプリもあるので、かかりつけの獣医師に相談の上で活用するのも一つの手段です。

 

まとめ 猫のてんかんは上手に付き合っていく

 

愛猫がてんかん発作を起こすと、抱いたり抑えたりしようとして、体に触れたくなるかもしれません。しかし、発作中の猫にはできるだけ刺激を与えず、周囲の家具を移動させる、クッションなどの緩衝材で防御する等の方法で愛猫の安全を確保し、あとは発作の記録に徹することが大切です。

 

構造的てんかんの場合は、原因となる病気によっては根治可能な場合もありますが、特発性てんかんや原因不明のてんかんと診断された場合は根治が難しく、抗てんかん薬による発作のコントロールを生涯続けなければならないことがほとんどです。

 

初めててんかん発作に気付いた際はまず診察を受け、原因特定と早期治療を目指ししましょう。特に特発性てんかんは、薬で発作をコントロールし、愛猫のQOLを維持・向上させられれば、愛猫も飼い主さんも安心して暮らしやすくなるでしょう。

 

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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