犬の骨折の見分け方は? 原因と予防・治療方法も

2022.11.13
犬の骨折の見分け方は? 原因と予防・治療方法も
犬が骨折するのは珍しいことではありません。日常生活のふとした拍子に起きるケガのひとつですが、愛犬は言葉で訴えることができませんし、飼い主さんもすぐにそうとは気づかないことがあります。しかし、骨折したときには速やかな治療が必要で、治療が遅れると後遺症が残ってしまうこともあるのです。
この記事で、犬の骨折の見分け方、原因、予防法や治療についても解説します。
目次


犬の骨折とは


骨折は、骨に何かしらの強い力や衝撃が加わることで、骨が損傷することです。損傷ですから、折れるだけでなく、骨にヒビが入ったり、欠けてしまったりすることも骨折に分類されます。

骨折は、すべての犬に起こる可能性があります。ただ、体格的に骨折しやすい犬種、日常の行動的に骨折しやすい部位があるので、詳しくお伝えしておきましょう。

骨折しやすい犬種
骨折がよく見られる犬種、トイ・プードル、チワワ、マルチーズ、ミニチュア・ピンシャー、イタリアン・グレーハウンドなど。小型犬やどちらかというと足の筋肉が少なく細い犬種に多く発生します。

骨折しやすい部位
犬が骨折しやすいのは足です。アニコム「家庭どうぶつ白書2018」によると、前足と後足では、前足の骨折が約56.1%、後足の骨折が約15.6%という結果になっています。

犬の骨折の原因


では、犬はどのような原因で骨折してしまうのでしょうか。大きな事故に遭わなくても、日常生活の中で骨折してしまうこともあります。

よく見られるのが、ソファなど高さのあるところや、飼い主さんの抱っこから飛び降りることです。飛び降りたとき、愛犬は前足で着地します。このとき、飛び降りた勢いと自分の体重を前足だけで受け止めなければなりません。つまり、前足に強い負荷がかかってしまうということです。

階段からすべり落ちたり、フローリングの床で滑って転んだりということも、骨折につながります。また、閉まりかけのドアに挟まれて骨折してしまうことも。飼い主さんにとっては問題なく快適に過ごせる自宅であっても、愛犬にとっては危険が潜んでいる可能性があるのです。

また、誤って人に踏まれたり蹴られたりする、ドッグランで転倒したり衝突したりするといったことも、骨折につながることがあります。そのほか、病気や高齢により骨が弱っていることが原因ということもあるので、覚えておきましょう。

犬の骨折の見抜き方


骨折すると相応の痛みがありますが、愛犬はそれをあまり表現しない場合もあるため、飼い主さんの目にははっきりとわからないことがあります。次のような様子が見られたら、骨折を疑ってみましょう。

例えば、歩くときに足を引きずっていたり、地面に足をつけないようにしたりするとき。そうではなくても、ふらふらしているなど歩き方がいつもと違うときは、足に何らかの異常が起きている可能性が高いです。また、特定の箇所を頻繁になめるときも、何か気になる症状が発生していると考えられます。

見た目に腫れている、触れると熱を持っているときも骨折している可能性があります。触ろうとすると嫌がったり、キャンキャン鳴いたりするときも注意が必要です。さらに、元気がなく、じっとうずくまって動こうとしないときは、骨折も含め体調に異変が生じている疑いがあります。速やかに動物病院を受診しましょう。

犬が骨折してしまった場合の治療方法


では、犬が骨折したときには、どのような治療が行われるのでしょうか。症状によって異なるため一概には言えないのですが、一般的な治療法について解説します。

ひとつは、ギプスで外側から固定する方法です。添え木などを当てることもあり、比較的軽度の骨折に用いられます。

手術をして骨折した部位をピンやプレートで固定する治療もポピュラーです。皮膚を切開して骨の状態を確認しながら固定する方法、外部から皮膚を貫通するピンを使って骨を固定する方法など、いくつかあります。

なお、骨はうまくついたものの、筋肉が萎縮してしまった、痛みが残ってしまった、関節の可動域が狭くなってしまったなどの事情で、うまく歩けなくなることも。その場合は、獣医師の指導のもとリハビリを行い、回復を目指します。

犬の骨折の予防方法


日常生活での骨折は、ちょっとした工夫で予防することができます。愛犬に痛い思いをさせないためにも、見直せるところは見直していきましょう。

フローリングなど滑りやすい床材は骨折を引き起こしやすくなります。カーペットを敷くなどして、滑りにくくしてあげましょう。しつけの段階では、むやみに走り出さないように「マテ」、自分のいるべき場所に落ち着かせる「ハウス」をしっかり身につけさせることが大切です。

抱っこをいやがって飛び降りようとする場合は、抱き方を工夫しながら、抱っこに慣れさせていきましょう。愛犬を怖がらせないように、腕全体で包み込むように抱き上げるとうまくいくようです。

強い骨を作るためには、栄養バランスのとれた食事も欠かせません。骨というとカルシウムが思い浮かびますが、カルシウムだけをむやみに強化するのではなく、適切な量が含まれているフードやサプリメント等を使って上手に供給しましょう。さらに適度な日光浴を取り入れると、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが活性化し丈夫な骨を作ることにつながります。


犬の骨折は、日常生活の中でもよく起こるケガです。見た目にはっきりわかることもありますが、そうでないことも多々あります。愛犬の歩き方や様子をチェックし、気になることがあるときには早めに動物病院を受診しましょう。家の中や食事を見直すことも予防につながります。この機会に、ぜひチェックしてみてくださいね。
監修者プロフィール

牛尾 拓(ウシオ タク)

経歴:岩手大学農学部獣医学課程卒業。動物病院勤務、製薬会社の学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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