【獣医師監修】猫の皮膚が赤いのは病気?斑点やかさぶたができる原因や治し方を解説

2025.01.27
【獣医師監修】猫の皮膚が赤いのは病気?斑点やかさぶたができる原因や治し方を解説

猫の皮膚が赤い様子を見ると、「皮膚の病気なのでは?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。動物病院を受診すべきか悩むケースもあるかと思います。

皮膚の赤みは一過性の場合もありますが、寄生虫の感染や常在細菌の増殖による感染症などにより、皮膚病を発症している可能性もあります。猫が皮膚病にかかっている場合は適切な治療が必要となるため、状況に応じて動物病院を受診しましょう。

本記事では、皮膚病の症状や原因、治療法や予防法を解説します。猫の皮膚病を予防し、健康をサポートできるよう、日頃の生活から対策をしておきましょう。

目次

 

猫の皮膚に赤い斑点やかさぶたができるのは病気?


猫の皮膚に赤い斑点やかさぶたができる場合、皮膚病にかかっている可能性があります。原因としては、感染症や寄生虫、ノミアレルギーや食物アレルギーなどが関係しています。

皮膚病にかかると、かゆみや痛みなどが起こり、日常生活に支障が出るのが特徴です。放置すると健康状態が悪化する可能性もあるため、赤い斑点やかさぶたなどの異常が出た場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。


猫の皮膚が赤いときに考えられる皮膚病とは

 

猫の皮膚が赤いときに考えられる皮膚病とは

皮膚に赤い発疹がある場合

皮膚に赤い発疹がある場合に考えられる皮膚疾患についてご紹介します。

病名

特徴

アレルギー性皮膚炎

人と同様に猫にも備わる「免疫」という仕組みが特定の抗原(ダニや食物)に対して過剰に反応することで引き起こされる皮膚炎。代表的なものとしては、食物アレルギーやノミアレルギー性皮膚炎、猫アトピー性皮膚症候群(猫アトピー)などが挙げられる。発症すると、皮膚にブツブツができたり、頭や体にかゆみが出て掻き壊したりする。また、地肌は赤くないにもかかわらず毛が薄くなることもあります。

膿皮症(のうひしょう)

常在菌の一種であるブドウ球菌が過剰に増殖することで起こる皮膚病。免疫力低下や他の皮膚炎などで細菌が侵入したり、増殖したりして発症リスクが高まる。アレルギー性皮膚炎でかゆみが起こり、掻き壊し続けた結果、皮膚が傷ついて細菌感染を起こすこともある。症状は、皮膚の深い部分で発症する深在性膿皮症と浅い部分で発症する浅在性膿皮症で異なることがあります。深在性膿皮症の場合、病変部位の皮膚が紫や赤色に腫れ上がり、膿や血液がにじみ出て、痛みを伴うことが特徴です。浅在性膿皮症の場合、皮膚に赤い湿疹が見られ、かゆみを伴うのが特徴です。

疥癬、耳ヒゼンダニ症

センコウヒゼンダニと呼ばれるダニが寄生することで発症する。ヒゼンダニが皮膚に穴を掘り、排泄や産卵をします。ヒゼンダニやその排泄物に対して炎症反応が起き、激しい痒みを伴う。赤みや痒み以外の症状としては、皮膚が厚みを帯びたり、フケや激しいかゆみで猫がかきむしってしまい、患部が傷ついて化膿したり出血したりすることもあります。猫での発生は比較的稀です。

播種性血管内凝固症候群

全身の血管に小さな血栓が起こり、止血に必要な凝固因子が消費されることで、血液が止まらない状態になる。悪性腫瘍や膵炎、子宮蓄膿症や炎症性疾患、重度の感染症による敗血症や免疫疾患などの影響で発症するケースがある。発症すると、血便や血尿、皮膚に内出血が認められるのが特徴。症状が進行すると、肝障害や腎障害、脳梗塞などに発展し、呼吸困難や手足の麻痺などが起こって命に関わることもある。

皮膚に赤いリング状の湿疹がある場合

皮膚に赤いリング状の湿疹がみられる場合は、皮膚糸状菌症が該当するケースがあります。皮膚糸状菌症は、カビの一種である糸状菌の感染が原因で起こる皮膚疾患です。糸状菌に感染した猫や犬との接触で発症することがあり、中でも野良猫との接触機会がある子では発症リスクが高くなります。、感染動物のフケや抜け落ちた毛なども感染源になるため、再発にリスクだけでなく、人へも感染する可能性があります。

 

とくに免疫力の低い高齢猫や子猫、基礎疾患を持つ猫が発症しやすい病気です。

皮膚糸状菌症が発症すると、口や鼻先、耳や目といった顔周りの部位や足先にかゆみや境界が明瞭な脱毛、脱毛部における赤み、フケやかさぶたなどの症状が特徴です。


他の皮膚炎に比べると、それほどかゆみは強くありません。そのため、目立たない場所に発症していて気づきにくいこともあります。

皮膚が赤く腫れている場合

皮膚が赤く腫れている場合は、好酸球性肉芽腫群(こうさんきゅうせいにくげしゅぐん)の可能性があるかもしれません。

 

好酸球性肉芽腫群は、猫の皮膚や口内などに炎症や潰瘍病変を引き起こす疾患の総称です。好酸球は白血球の一種であり、通常は寄生虫などの外敵を体内から排除したり、免疫細胞の機能を調節したりする際に活躍します。肉芽腫は、免疫系が異物と認識するが体内から排除できない対象物を体内で隔離しようとした結果生じる塊のようなものです。好酸球性肉芽腫群は、好酸球が過剰に作用し炎症が慢性化した結果肉芽腫等の皮膚症状が起こる疾患です。


好酸球性肉芽腫群は、おもに以下の3つに分類されます。

病名

特徴

無痛性潰瘍

おもに上唇や上顎に痛みを供わない潰瘍病変ができる。潰瘍は辺縁が盛り上がったクレーターのような病変で、進行は緩やか。犬歯が当たる部分の粘膜から発症することが多い。

好酸球性プラーク

平らに膨らんで盛り上がったような病変(プラーク)ができる。複数のプラークが寄せ集まってできるケースもある。発症すると、強いかゆみが起こることが多く、痒みによる舐め壊しで炎症がさらにひどくなることがある。おもに太ももの内側、首、指の間などにあらわれる。

好酸球性肉芽腫

肉芽腫と呼ばれる線状の肉の盛り上がりが起こる。おもに太ももの後ろ側、顎や口の中にできやすい。比較的若い年齢の猫に発症しやすい。

 

猫が皮膚病になる原因と治し方

 

猫が皮膚病になる原因と治し方

猫が皮膚病になる原因ごとの治療法を解説します。予めおおまかな費用も把握しておきましょう。

感染症

感染症を治療する場合、軽症あるいは局所的であれば、消毒液や抗生物質などを含む塗り薬などの外用薬で治療する場合もあります。


全身に感染が広がっている場合は、抗真菌薬や抗生剤を用いて全身療法を行います。場合によっては薬用シャンプーや毛刈りなどの手段も必要です。


治療期間は、原因や症状の程度により異なりますが、治療への反応が良好な場合は場合は2週間から1カ月潜在的な疾患が原因で治療への反応が悪い場合などは1ヶ月以上かかる場合があります。通常1週間から2週間毎に診察を受けることが一般的です。治療費としては、初診時に5,000~10,000円、再診時に4,000~5,000円程度かかることがありますが、状態等により必要な検査が増えそれ以上かかることもあります。

寄生虫

寄生虫を治療する場合は、一般的に駆虫薬の投与により治療します。細菌による二次感染が認められる場合は抗生剤の内服や外用薬を使用することもあります。


治療期間は、上述の感染症と同様に、治療への反応に応じて数週間〜数ヶ月かかることがあります。治療費用は4,000〜10,000円程度が目安です。

ノミアレルギー

ノミアレルギーに対しては、寄生しているノミを駆除し、生活環境内にいるノミの蛹(さなぎ)や卵も排除することが大切です。


ノミの駆虫剤には、卵のふ化や成虫への成長を阻害する効果をもつ薬剤もあります。駆虫する場合はノミのライフサイクルを考慮し、駆虫剤の効果が発揮されるまで2〜3ヶ月の間継続して使用することが求められるでしょう。


生活環境にいるノミの蛹や卵も症状の再発に関わることがあります。生活環境や使用しているグッズ等の衛生管理にも注意しましょう。

ノミアレルギーによるかゆみや皮膚炎に対して、抗炎症薬やかゆみ止め、細菌等による二次感染が認められる場合は抗生物質を使用することがあります。治療費用は、ノミの駆除剤が1,000〜3,000円程度、皮膚症状がある場合はお薬の費用として追加で4,000円程度かかります。また、ノミアレルギーの診断に検査が実施されることがあります。検査費用は10,000円程度、病院によってはそれ以上かかることがあります。

食物アレルギー

食物アレルギーが疑われる場合は、適切に検査を受けてアレルギーの原因を判別し、療法食を与えて治療することが一般的です。


まずは、アレルギーの原因となる食品を特定しなければなりません。動物病院では食物除去試験や食物負荷試験と呼ばれる検査を実施し、病院によっては血液検査等を追加で実施することでアレルゲンを特定します。特定後は、獣医師の指示のもとで、適切な食事を与え続けるようにしましょう。また、既に痒みや皮膚症状が認められる場合は最初に薬物による症状軽減のため内服薬等のお薬が処方されることがあります。


食物アレルギーの原因が特定できた場合は、与えるキャットフードが制限を受けることもあります。食物除去試験などの検査期間を含めると治療には2ヶ月異常かかることがあり、費用としては、血液検査によるアレルギーの診断検査が含まれる場合には初回治療で30,000円、皮膚症状の管理のために定期的な受診が必要な場合は月に5,000~10,000円程度が目安となります。

アトピー

アトピーの治療は、完治を目指すものではなく、アレルゲンの回避、悪化因子の除去、スキンケア、皮膚症状の管理など、総合的な管理でかゆみや皮膚症状を日常生活に影響が出ない程度に抑えることが重要です。アレルギー反応の原因物質となるものを特定するために血液検査が必要になり、特定された場合はその物質に可能な限り接触しないように環境に注意しなければなりません。

原因物質の回避が不可能な場合、外用剤や内服、注射などの薬物療法で症状を和らげる必要があるケースもあります。定期的なシャンプーや保湿剤の使用、皮膚の乾燥を防ぐためのケアや皮膚の健康維持のためのサプリメントによる管理も必要となることがあります。


治療費用としては、検査を実施した場合の初回の治療が35,000円程度です。以降は皮膚症状の程度等により異なりますが、1ヶ月ごとに10,000円程度が目安となります。

 

猫の皮膚病を予防する方法

 

猫の皮膚病を予防する方法

猫の皮膚病を予防するためには、病状に応じた適切なアプローチを進めることが重要です。以下の内容を参考に、適切な予防策を実践しましょう。

清潔な環境を保つ

人のアレルギーと同様に、猫も環境中の物質に対してアレルギー症状を起こすことがあります。アレルギーを発症するリスクを下げるためにも日常的な環境の清掃や使用しているベッドなどの定期的な選択を行いましょう。

お手入れやケア

猫は本能的にグルーミングを行うことで被毛の環境を整えるため、必ずしもスキンケアは必要ありません。しかし、長毛種や肥満、グルーミングをあまりしない猫の場合などでは被毛の状態が悪化し、毛玉やフケが増えることで皮膚にトラブルを起こす可能性があります。日常的に被毛や皮膚の状態をチェックし、必要に応じてブラッシングや保湿などのケアを心がけましょう。判断が難しい場合は獣医師に相談するとよいでしょう。

駆虫薬を使う

皮膚にトラブルを引き起こすノミやダニは、動物病院で処方されるスポットタイプ(首の後ろに垂らすタイプ)の駆虫薬の定期的な使用で簡単に予防可能です。日向ぼっこが好きでベランダに出る猫や外に出ることがある猫の場合は通年(一年中)の予防がおすすめです。


飼育環境や寄生している虫の種類などによって使用すべき薬は異なります。獣医師に相談し、状況に合ったものを使用しましょう。

ストレスのケア

猫では、ストレスにより過剰にグルーミングをしてしまうことで、脱毛や皮膚の舐め壊しなどの症状を起こす心因性脱毛がみられる事があります。

猫の本能的な性質などを考慮し、爪とぎやトイレ、昇り降りを含めた運動ができるスペース、狩猟本能を満足させるおもちゃなど、猫がリラックスできるよう環境を整えることを心がけましょう。

 

猫の皮膚病は自然治癒する?


猫の皮膚病は一過性のものもあり、自然治癒することもあります。しかし、症状が長引く場合は、放置すると悪化する可能性があります。数日で症状が改善しないようであれば、動物病院を受診しましょう。


寄生虫や感染症が原因の場合は、まれに人にも伝染する可能性があります。猫に痒みを伴う皮膚症状がみられる状況で、人にもかゆみなどの皮膚症状がある場合は、速やかに獣医師及び医師に相談してください。

 

まとめ 

猫の皮膚に赤い斑点やかさぶたができたときは、何らかの皮膚疾患にかかっている可能性があります。発疹や腫れなどによって、想定される皮膚病は異なります。また、原因や治療法もさまざまです。


猫を飼うときは定期的な駆虫薬の使用、清潔な環境の維持、ストレスのケアなどを心がけることが重要です。


猫の皮膚に異変があったり、いつもと様子が異なったりする場合は、速やかに動物病院を受診してください。

 

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

コラム一覧を見る