【獣医師監修】犬のかさぶたは皮膚病が原因?対処法や予防策についても解説

2025.08.05
【獣医師監修】犬のかさぶたは皮膚病が原因?対処法や予防策についても解説

「愛犬の皮膚にかさぶたを見つけて驚いた…」「何かの皮膚病かも?」と不安に感じていませんか?


犬のかさぶたは、傷や皮膚炎、感染症などが原因で生じることがあり、放置してはいけないケースもあります。


本記事では、かさぶたができる仕組みから主な原因、受診すべき症状、家庭でできる対処法、日頃からの予防策までを獣医師監修でわかりやすく解説します。

目次

 

犬のかさぶたとは?

 

犬の「かさぶた」は、皮膚が傷ついた際に傷口からにじみ出た血液や漿液(しょうえき:体液の一種)などが、角質などの皮膚成分と混ざり合って乾燥・固着することで形成されます。


似た症状として「フケ」がありますが、フケは主に古くなった角質細胞が自然に剥がれ落ちたもので、健康な犬でも生じることがあります。一方で、かさぶたは皮膚に何らかのダメージがある場合に起こります。


犬の皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっており、それぞれが異なる役割を果たしています。


  • 表皮……もっとも外側にあり、外部からの細菌や異物の侵入を防ぐバリア機能を担う

  • 真皮……表皮の下にあり、主にコラーゲンからなる組織で、血管、神経、毛包、皮脂腺などを含み、皮膚の弾力性や構造を保ち、損傷に対する再生機構の主な場所としての役割を担う

  • 皮下組織……真皮の下にあり、脂肪や結合組織で構成され、外部からの衝撃や寒暖差から体を守り、脂肪としてエネルギーを蓄える機能を持つ


かさぶたは、これらのうち表皮と真皮が損傷した場合に起こる症状です。

 

犬にかさぶたができる主な原因

 

犬にかさぶたができる主な原因

 

犬のかさぶたは、単なる傷だけでなく、感染症やアレルギー、皮膚病など、さまざまな原因によって生じます。見た目が似ていても、背景にあるトラブルはまったく異なる場合もあるため、原因を見極めることが重要です。


ここでは、犬の皮膚にかさぶたができる代表的な原因について詳しく解説します。

外傷・ケガ

散歩中の擦り傷や切り傷など、外部からの刺激によってできた傷がかさぶたになることがあります。浅い傷であれば自然に治癒していく場合もありますが、細菌が入り込むと化膿することがあります。


出血や赤みが目立つ場合は、傷の深さや感染リスクを考慮して動物病院で診察を受けましょう。

膿皮症

膿皮症は、犬に多く見られる細菌感染症で、主な原因菌はブドウ球菌です。細菌の増殖により炎症が起こり、滲出液やフィブリンなどが混ざり乾燥した場合にかさぶたになることがあります。


多くはかゆみを伴い、掻くことでさらに悪化するケースもあるため、早期の治療が肝心です。


詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症は、カビの一種である真菌によって起こる皮膚疾患です。円形脱毛とともに、赤みやかさぶたが形成されるのが特徴です。この疾患は人にも感染することがあり、特に小児や高齢者は注意が必要です。症状に気づいたら、早めに動物病院を受診しましょう。

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毛包虫症(ニキビダニ症)

ニキビダニは本来皮膚に常在するダニですが、免疫力が低下すると異常繁殖し、毛包虫症を引き起こします。皮膚がジュクジュクした状態になり、脱毛やかさぶたが広範囲に見られることもあります。


詳しくはこちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください

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疥癬(ヒゼンダニ症)

疥癬は、ヒゼンダニと呼ばれる小さな寄生虫が原因で発症します。強いかゆみがあり、犬が激しく掻きむしることで皮膚が傷つき、かさぶたができます。

人にも感染することがあるため、家庭内で感染を広げないよう注意が必要です。症状が見られた場合は、すぐに診察を受けましょう。

アレルギー

アレルギーは、体を守るはずの免疫反応が特定の物質(アレルゲン)に対して過剰に反応してしまうことで、さまざまな症状を引き起こす疾患です。犬にとって皮膚はアレルギー症状が現れやすい代表的な部位であり、強いかゆみや炎症を伴うケースが多く見られます。

犬の皮膚アレルギーの主な原因には、3つのタイプがあります。花粉やハウスダストなどの環境アレルゲンによるアトピー性皮膚炎、食事に含まれるタンパク質に反応する食物アレルギー、ノミの糞に含まれるタンパク質が引き金となるノミアレルギー性皮膚炎です。

これらのアレルギーはすべて、皮膚に強い炎症を引き起こすため、犬はかゆみから皮膚を激しく掻き壊してしまうことがあります。その結果、出血や滲出液が出て、乾燥後にかさぶたとなって皮膚表面に残ります。こうした状態では、傷口から細菌が入り込みやすく、二次感染のリスクも高まるため、早期の対応が不可欠です。

落葉状天疱瘡

落葉状天疱瘡は、自己免疫の異常によって皮膚に膿疱やびらん、かさぶたが生じる病気です。

鼻の上や目のまわり、耳、肉球などに好発し、赤みやかさぶたが左右対称的かつ慢性的に繰り返し出現するのが特徴です。見た目が軽症に見えても、進行性の疾患のため、免疫抑制剤や特殊な薬剤を使用した専門的な治療が必要になることがあります。

腫瘍性皮膚疾患

皮膚腫瘍(できもの)が破れてかさぶたになることもあります。良性・悪性を問わず、腫瘍が皮膚の表面に近い位置にあると、外部刺激や掻き壊しによって出血やかさぶたができやすくなります。

しこりの存在や皮膚の変化に気づいた場合は、悪性の可能性も考慮し、早期に動物病院で検査を受けましょう。

 

動物病院をすぐに受診すべき症状


かさぶたが徐々に広がる

最初は小さなかさぶただったのに、気づくと周囲に広がっていた場合は、免疫異常や感染症、真菌・細菌性の皮膚炎などが疑われます。


特に、脱毛や赤み、皮膚のただれを伴うようであれば、進行性の疾患が隠れているおそれもあります。早期に原因を特定して適切な治療を始めることが大切です。

かゆみがひどい

かゆみが強く、頻繁に掻いたり噛んだりしている場合は要注意です。炎症の悪化や細菌感染が進行しているサインかもしれません。放っておくと掻き壊しによって傷が広がり、さらにかさぶたや炎症が増してしまう悪循環に陥ることがあります。


夜間に寝られないほど掻いている、落ち着きなく体を気にしているといった行動があれば、早めの受診をおすすめします。

治りが遅い

通常、軽いかさぶたであれば1〜2週間ほどで自然に剥がれて治癒します。


しかし、2週間以上経っても状態が改善しない、または何度も同じ場所にかさぶたができてしまう場合は、アレルギーやホルモン異常といった基礎疾患が隠れている可能性があります。


繰り返す症状は慢性化の兆しであることも多いため、放置は避けましょう。

人間にも症状が出る

犬にできたかさぶたを触った後、飼い主や家族の皮膚に赤みや湿疹、かゆみなどの異常が見られる場合は、真菌やヒゼンダニなど人獣共通感染症の可能性があります。特に免疫の弱い子どもや高齢者がいる家庭では、注意が必要です。


こうした症状が見られたら、動物病院と皮膚科の両方を早急に受診しましょう。

 

犬のかさぶたに気づいたときの対処法

 

 犬のかさぶたに気づいたときの対処法

 

愛犬の皮膚にかさぶたを見つけると、飼い主としては驚いたり心配になるかもしれません。


しかし、焦って自己判断で処置をすることで、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。まずは落ち着いて、冷静に対応することが大切です。


以下に、犬のかさぶたに気づいたときに飼い主がとるべき具体的な行動を紹介します。

まずは様子を観察

かさぶたの大きさや色、表面の状態(乾いているのか、湿っているのか)、出血や膿があるかなどを丁寧に観察しましょう。また、かさぶた周辺の毛が抜けていたり、皮膚に赤みや腫れが見られたりする場合は炎症や感染が進んでいる可能性があります。


また、観察した様子は、できる限り記録しておくと良いでしょう。日々の変化を確認するためにも、経過をスマートフォンなどで写真に残しておくと、動物病院を受診した際に診断の助けになることがあります。

無理に剥がさない

かさぶたは傷ついた皮膚を保護し、自然治癒を助ける役割を果たしています。そのため、見た目が気になっても、無理に剥がすことは厳禁です。かさぶたを剥がすと、傷口が再び開いたり、細菌が入り込んで感染のリスクが高まったりするおそれがあります。


また、犬が気にして舐めたり噛んだりしてしまうと、かさぶたが取れたり、症状が悪化したりすることがあります。必要に応じてエリザベスカラーなどを使用し、患部を守るようにしましょう。また、獣医師へ相談あるいは動物病院の受診を検討しましょう。

自己判断でシャンプーしない

かさぶたが気になるからといって、市販のシャンプーで洗ってしまうのは避けるべきです。かさぶたの原因がアレルギーや感染症、真菌などであった場合、不適切なシャンプーによって症状が悪化したり、皮膚の状態を変えてしまい、正確な診断が難しくなったりすることがあります。


まずは獣医師の診察を受け、必要に応じてシャンプーの種類やタイミングを指示してもらいましょう。

 

犬の皮膚トラブルの予防策

 

犬の皮膚トラブルの予防策

 

かさぶたは、皮膚が何らかのダメージを受けているサインです。従って、かさぶたがみられる時は既に何らかの皮膚トラブルが発生していることを意味します。皮膚トラブルを未然に防ぐためには、日常的なケアと生活環境の見直しがとても重要です。


ここでは、犬の皮膚トラブルを予防するための対策を紹介します。

皮膚ケア

日々のスキンケアは、犬の皮膚を健康に保つ基本です。ブラッシングは皮膚の血行を促進し、毛のもつれを防ぐだけでなく、早期に皮膚の異変に気づくためにも役立ちます。


また、乾燥しやすい季節は、保湿スプレーなどを使って潤いを保つことも効果的です。


トリミングやシャンプーを行う際は、犬の肌に合った製品を選び、洗浄後はしっかりと乾燥させましょう。濡れたままの状態は雑菌が繁殖しやすく、皮膚トラブルの原因となるため注意が必要です。ただし、過度に乾燥させるとかえって皮膚のトラブルの原因になることもありますので、ドライヤーを使用するときはタオルの上から風を当てるなど、必要に応じて注意深く対応しましょう。

感染症・寄生虫の対策

ノミやマダニ、皮膚に感染を起こす細菌や真菌への対策も皮膚トラブルの予防には欠かせません。動物病院で処方される予防薬は、定期的に使用することで感染リスクを大幅に下げることができます。


また、散歩から帰ったあとは、被毛や皮膚に異常がないかを軽くチェックする習慣をつけましょう。草むらや公園などではマダニなどの外部寄生虫が付着しやすいため、早めに気づくことで病気のリスクを防ぐことができます。

免疫力の向上

皮膚は体のバリア機能のひとつであり、免疫力が低下するとトラブルが起こりやすくなります。そのため、良質なタンパク質を含む栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。必要に応じて、皮膚や免疫をサポートするサプリメントの利用も可能ですが、使用前には獣医師へ相談するようにしましょう。


また、ストレスをためないように日々のスキンシップや適度な運動を取り入れると、免疫力の維持につながることがあります。

生活環境の改善

犬の皮膚の健康は、生活環境の清潔さとも密接に関係しています。定期的な室内清掃を行い、毛やホコリ、ダニの温床となる寝具やクッション類はこまめに洗濯しましょう。


また、湿度が高すぎるとカビや雑菌が繁殖しやすくなるため、除湿器や空気清浄機の使用、適切な換気も効果的です。犬が長時間過ごす場所を快適で清潔に保つことも皮膚トラブルを予防する第一歩です。

 

まとめ 犬のかさぶたは皮膚病のサインかも

 

犬にかさぶたができる原因は、外傷のような軽度なものから、感染症やアレルギー、免疫疾患、腫瘍といった深刻な病気まで多岐にわたります。皮膚の表面にできたかさぶたは、見た目では判断がつきにくく、背景にあるトラブルを見極めることが重要です。


軽度の外傷であれば自然に治るケースもありますが、かさぶたが広がる・かゆみが強い・なかなか治らない・人間にも症状が出るといった場合は、早急に動物病院での診察を受ける必要があります。


また、かさぶたに気づいたときは、焦って自己判断でシャンプーをしたり剥がしたりせず、まずは落ち着いて観察し、必要な情報を記録しておくことが大切です。定期的な皮膚ケアや寄生虫予防、生活環境の見直しなど、日頃からの対策を行うことで、皮膚トラブルの予防にもつながります。


愛犬のかさぶたは、体からの大切なサインかもしれません。少しでも異変を感じたら、早めに獣医師へ相談しましょう。

監修者プロフィール

岩谷 直(イワタニ ナオ)

経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

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