【獣医師監修】柴犬がなりやすい病気とは?よくある症状や予防についても

柴犬は日本犬の中でも人気の高い犬種で、健康的で飼いやすい印象をもたれがちですが、実は特有の体質から注意が必要な病気もいくつか存在します。
特に皮膚のトラブルや関節の異常、眼の病気などは早期に気づき、対応することが大切です。
本記事では柴犬がかかりやすい病気とその症状、予防法や日常生活で気をつけたいポイントなどについて解説します。
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柴犬は病気に強い?
柴犬は日本原産の犬種の中でも特に体が丈夫で、比較的病気に強いといわれています。四季のある日本の気候に適応してきたため、暑さや寒さにもある程度の耐性があります。ただし、どんなに健康的な犬種でも注意すべき病気があります。
柴犬の平均寿命は13〜16歳ほどで、毛色や性別による寿命の差はほとんどありません。毎日の食事管理や適度な運動、定期的な健康チェックを続けることで、元気な状態を長く保つことができます。
柴犬がなりやすい病気とその症状

柴犬は皮膚トラブルや関節の病気、眼の疾患、老齢期に見られる認知症などに注意が必要です。
ここでは、柴犬が発症しやすい代表的な病気とその症状、治療や予防のポイントについて解説します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、ハウスダストや花粉、カビなどの環境中のアレルゲンに対して、体が過敏に反応することで起こる皮膚の炎症です。アレルゲンによって季節による症状の強さに変化が見られることがあります。例えば、花粉がアレルゲンの場合は春や秋の花粉が多い時期には悪化しやすく、比較的落ち着いた季節には軽減する可能性があります。
主な症状としては、顔や足先、脇や腹部などにかゆみや赤み、皮膚のベタつきなどが見られます。慢性的な掻き壊しによって皮膚が厚くなったり(苔癬化)、脱毛が進んだりするケースもあるため、早めの対応が大切です。
アレルギーの原因を完全に取り除くことが難しいため、対症療法として、抗炎症薬やかゆみを抑える抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の服用、シャンプー療法や保湿剤などによるスキンケア、必須脂肪酸などを中心としたサプリメントの摂取などが中心となります。最近では腸内環境を整えることが、アトピー性皮膚炎の管理に役立つことも示されています。
アトピー性皮膚炎について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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食物アレルギー
食物アレルギーは、特定の食材に対して体が過剰に反応し、皮膚のかゆみや赤み、嘔吐・下痢などの症状を引き起こす病気です。柴犬では、比較的若い時期、特に3歳頃までに発症するケースが多く見られます。
確定診断は、除去食試験がゴールドスタンダードとされています。あまり一般的には使用されないカンガルーやアヒル、シカなどをタンパク源としたフードや加水分解食などを最低6週間継続し、改善が見られた場合は元の食事を与えて症状が再発するかどうかを確認する試験です。
なお、血清IgE検査などのアトピー性皮膚炎の診断に利用される検査は食物アレルギーの診断においてはあくまで参考であり、検査で陽性となった食材が必ずしも原因とは限らないため、慎重な判断が必要です。
また、アトピー性皮膚炎と併発しているケースも少なくなく、食事の見直しだけでは症状が完全に消失しないこともあります。そのため、獣医師の指導のもとで時間をかけて食材の選定を行い、体質に合った治療を受けることが重要です。
股関節形成不全
股関節形成不全は、骨盤と太ももの骨をつなぐ股関節の形に異常が生じ、関節がうまくかみ合わずに痛みや歩行障害を引き起こす病気です。体重を支える後ろ足のバランスが崩れるため、柴犬にとっては日常生活にも支障をきたしやすくなります。
主に大型犬に見られやすい疾患ですが、特に海外では柴犬も一定のリスクについて言及されていることがあります。
多くは先天的な要因によって発症しますが、急激な体重増加や激しい運動などにより、後天的に症状が出る場合もあります。代表的な症状には、お尻を大きく振るような歩き方や、後ろ足をそろえてぴょんぴょんと跳ねるように走る様子が挙げられます。立ち上がる、座るといった動作を嫌がるようであれば、早めに動物病院での診察を受けることが大切です。
治療法は、症状の重さに応じて内服薬や外科手術などから選択されます。また、体への負担を減らすために、日頃から体重管理を心がけることも予防の一環です。
股関節形成不全について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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【獣医師監修】犬の股関節形成不全とは?原因・症状や治療方法について解説
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼(パテラ *本来はパテラとは膝のお皿(膝蓋骨)のことを指します)は、膝の皿にあたる骨が本来の位置からずれてしまう状態です。柴犬をはじめとする小型〜中型犬によく見られ、特に先天的な骨格の異常が関係していることが多いとされています。脱臼の程度やその他骨格への影響などによりグレード1~4に分類され、数字が大きくなるほど重症度が高くなり日常生活への影響も大きくなります。
若齢期から長い時間をかけて外見上ではわかりにくい程度で関節炎などが進行し、高齢期に症状が顕在化することがあります。
突発的に後ろ足を引きずるように歩いたり、突然スキップするような歩き方をしたりすることがあります。ひどくなると、後ろ足をまったく地面につけなくなることもあり、歩行そのものが困難になります。
治療は、グレード1や2の軽度であれば内服薬や安静による保存療法が行われることが一般的ですが、グレード3以上の多くの場合やグレード2でも獣医師が必要だと判断した場合は根本的な改善のために手術が検討されます。
予防としては、足腰に過度な負担をかけない生活環境を整えることが大切です。
膝蓋骨脱臼(パテラ)について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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白内障
白内障は、眼の中にあるレンズ(水晶体)が白く濁ることで視界がぼやけたり、視力が低下したりする病気です。高齢になるにつれて発症するものを老齢性白内障と呼びます。
初期の白内障は、見た目にはわかりにくい場合もありますが、進行すると瞳が白っぽく見えるようになります。散歩中につまずきやすくなる、物にぶつかるといった行動が見られた場合は注意が必要です。
治療としては、点眼薬を使って進行を遅らせる方法が一般的ですが、症状が進んで視力に大きな影響を与えている場合は手術が検討されます。
なお、瞳が白く見えるからといってすべてが白内障とは限りません。白内障かどうかを正確に見極めるためにも、気になる症状があれば早めに動物病院を受診しましょう。
緑内障
緑内障は、眼の中にある「眼房水」と呼ばれる液体の流れが滞ることで、眼圧(眼の中の圧力)が異常に上昇し、網膜や視神経がダメージを受けてしまう病気です。圧力によって視覚が徐々に失われるほか、眼の痛みや違和感が生じることもあります。
突然ものにぶつかるようになったり、目を細めていたり、目の周囲を触ると嫌がるといったサインが見られた場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。
治療は、点眼薬で眼圧を下げる方法や外科的な処置がありますが、視覚の有無や病期、原因、眼の状態などを総合的に判断して決定されます。
特発性前庭疾患
特発性前庭疾患は、体のバランス感覚を司る「前庭」に異常が生じることで、斜頸(首が傾く)、眼振(目が左右に揺れる)、ふらつき、転倒などの症状が突然あらわれる病気です。「特発性」とは明確な原因が特定できないことを意味します。
高齢の柴犬に比較的多く見られる疾患であり、見た目に強い異変があるため飼い主は驚くかもしれませんが、多くの場合は命に関わる病気ではありません。症状は数日から数週間で自然に改善していくのが典型です。ケースによっては軽度の頭の傾きが後遺症として残ることがありますが、多くは日常生活に支障がないことが多いです。再発は稀で、予後は良好なことが多いです。
ただし、吐き気や食欲不振、立ち上がれないなど日常生活に支障が出るケースもあるため、介助や食事の補助、必要に応じた薬の投与など、サポートが欠かせません。
認知症
柴犬は比較的認知症になりやすい犬種といわれています。高齢になると、脳の老化に伴って認知機能が低下し、さまざまな行動の変化が見られるようになります。
よく見られる症状には、呼びかけても反応がない、トイレの場所を忘れて室内のあちこちで排泄してしまう、昼夜逆転して夜中に徘徊したり吠え続けたりする、壁にぶつかって立ち止まる、同じ場所をぐるぐる歩き続けるといったものがあります。
認知症の症状緩和や進行抑制に適用される薬剤やサプリメントはいくつかありますが、残念ながら認知症は根本的な治療が難しい病気です。そのため、できるだけ快適に過ごせるような環境を整えることが重要です。
認知症について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは、代謝を調整する甲状腺ホルモンの分泌が不足することで、全身にさまざまな不調が現れる病気です。甲状腺は首元にある小さな臓器で、体温や心拍数、代謝の調整に関与しています。自己免疫性の炎症や萎縮性の変化でホルモン産生量や分泌量が低下することで起こります。
ホルモン分泌が低下すると、代謝の低下により元気がなくなったり、寒がりになったり、体重が増えやすくなるといった症状が見られます。また、皮膚がたるんで表情がどこか悲しげになる「サッドフェイス」も特徴です。皮膚・被毛の異常として、左右対称性の脱毛や毛の光沢低下、乾燥肌などがみられる事もあります。
治療には、体内で不足している甲状腺ホルモンを薬で補うホルモン補充療法が行われます。
柴犬の病気予防として気をつけたいポイント
柴犬は比較的丈夫な犬種とされていますが、健康を長く保つためには日々のケアが欠かせません。
ここでは、柴犬の体質をふまえた上で、病気予防のために飼い主が意識したいポイントを紹介します。
ブラッシングなどの皮膚・被毛ケア
柴犬はダブルコートと呼ばれる二重構造の被毛をもっており、抜け毛が多い犬種です。特に春と秋の換毛期には大量の毛が抜けるため、こまめなブラッシングが必要です。抜け毛を放置してしまうと、皮膚に湿気や汚れがたまり、炎症や皮膚病の原因になることがあります。
また、柴犬は皮膚が比較的デリケートな傾向があるため、皮膚の状態を観察しながらケアを行うことが大切です。ブラッシングの際には、皮膚に赤みやかゆみ、湿疹などの異変がないかをチェックする習慣をつけましょう。
食事の栄養バランス
柴犬は食へのこだわりが強い犬種ともいわれており、特定のフードしか食べたがらない、あるいは好き嫌いが激しいという傾向があります。偏った食生活が続くと、栄養バランスが崩れ、皮膚トラブルや体重増加、消化不良といった不調を招くおそれがあります。
主食となるフードは、柴犬の年齢や体格、運動量に合った栄養設計のものを選びましょう。また、皮膚や被毛の健康維持のためには、EPAやDHAなどの脂肪酸を含む栄養素をサプリメントで取り入れるのも効果的とされています。
ただし、サプリメントの使用を検討する際は、自己判断ではなく、必ず獣医師と相談した上で導入しましょう。
柴犬の病気についてよくある質問

柴犬を飼っていると、ちょっとした体調の変化が気になることがあります。「この症状は様子を見てよいのか」「すぐに病院に連れていくべきか」など、迷う場面も多いかもしれません。
ここでは、柴犬の健康に関して飼い主からよく寄せられる疑問を取り上げ、わかりやすく解説します。
動物病院に行くべきケースとは?
基本的に、いつもと様子が違うと感じた場合には、早めに動物病院を受診することが推奨されます。犬は不調を隠す習性があるため、目に見える変化がある頃にはすでに症状が進行している可能性もあります。
たとえば、下痢や嘔吐が長引いている、尿の色や量に異常がある、突然食欲がなくなった、皮膚や関節に痛がる様子が見られるといった場合は、何らかの病気が隠れているおそれがあります。また、目が白く濁っている、耳から強いにおいがする、呼吸が苦しそうに感じられるといった症状も注意が必要です。
「なんとなく元気がない」と感じるような小さな変化でも、深刻な病気のサインであることがあるため、迷ったときは獣医師に相談しましょう。
手術になった場合の治療費は?
手術の費用は、病気の種類や手術の内容、動物病院の設備や地域によって大きく異なります。一般的には、軽度の皮膚手術であれば数万円程度ですが、整形外科手術や眼科手術、腫瘍の摘出など、より高度な処置になると5〜20万円ほど、場合によってはそれ以上かかることがあります。
特に、シニア期に入った柴犬では全身麻酔のリスクが高まるため、術前検査が増えるほか、術後のケア費用も加算される傾向にあります。手術にかかる費用の内訳には、診察料、血液検査、レントゲン、麻酔、入院費なども含まれるため、事前に見積もりを出してもらうと安心です。
まとめ 柴犬は年齢ごとに適切な健康管理を
柴犬は比較的体が丈夫な犬種ですが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、関節疾患、眼の病気、認知症など、年齢や生活習慣によって注意が必要な疾患も多くあります。
若いうちは元気でも、加齢とともに不調が現れやすくなるため、年齢ごとに健康状態を見直しながら適切なケアを行うことが大切です。少しの異変にも早く気づけるよう、日頃からよく観察し、不安なことがあれば迷わず動物病院へ相談しましょう。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許



