【獣医師監修】柴犬のよくある皮膚病とは?治療方法や予防についても解説

柴犬は凛々しい見た目と忠実な性格で人気の高い犬種ですが、実は皮膚トラブルが多いことで知られています。アトピー性皮膚炎や膿皮症、食物アレルギーなど、かゆみや脱毛を引き起こす病気に悩む飼い主さんも少なくありません。
そこで本記事では、柴犬の皮膚や被毛の特徴、よく見られる皮膚病、その検査や治療の方法、日常でできる予防の工夫について解説します。
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柴犬の皮膚・被毛の特徴
柴犬はたくましい雰囲気を持つ一方で、実は皮膚がやや弱いとされ、乾燥やアレルギーの影響を受けやすい犬種です。日々の観察や手入れを心がけることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
被毛は「ダブルコート」と呼ばれる二重構造で、外側には硬くまっすぐなトップコート(オーバーコートや上毛とも言います)、内側には細く柔らかなアンダーコート(下毛)が密に生えています。この被毛構造は、寒さや暑さから体を守るための自然の仕組みであり、四季のある日本の気候にもよく適応しています。
また、春と秋には換毛期を迎え、大量の毛が一度に抜け落ちます。特に柔らかな下毛がごっそりと抜けるため、室内に毛が舞いやすくなります。この時期はブラッシングをこまめに行うことで、皮膚や被毛の健康維持につながることがあります。
柴犬が発症しやすい皮膚病

柴犬は皮膚が比較的デリケートな犬種であり、体質や遺伝的要因、生活環境の影響から皮膚病を発症しやすい傾向があります。ここでは、柴犬に多い皮膚病について解説します。
犬アトピー性皮膚炎
柴犬に多く見られる皮膚病の1つが、犬アトピー性皮膚炎です。これは体質的にアレルゲンに敏感に反応してしまうことで起こる病気で、花粉やハウスダスト、ダニといった環境要因が主な引き金となります。柴犬は遺伝的に発症しやすい傾向があるため、注意が必要です。
発症年齢は幼少期にあたる3歳未満であることが多く、最初のサインとして強いかゆみや皮膚の赤みが現れます。特に症状が出やすいのは、顔周りや耳、足先、脇の下といった被毛の薄い部分です。かきむしることで皮膚が傷つき、脱毛や炎症が悪化するケースも少なくありません。
犬アトピー性皮膚炎は完治が難しい病気とされますが、適切な治療を受けながらスキンケアや生活環境の工夫を行うことで、症状を抑えることは可能です。自己判断で対処すると悪化するおそれがあるため、異変を感じたら早めに動物病院を受診し、獣医師と一緒にケアプランを立てることが大切です。
犬のアトピー性皮膚炎について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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食物アレルギーによる皮膚炎
食物アレルギーは、特定の食材に含まれる成分に対して免疫が過敏に反応し、アレルギー症状を引き起こす病気です(獣医師が使用する用語として食物反応性皮膚炎がありますが、こちらは免疫反応が関与しないものも含まれるため食物アレルギーと同義語ではありません)。
原因となる食材は犬によって異なりますが、代表的なものとして牛肉、鶏肉、卵、乳製品、米や小麦などの穀類が挙げられます。人間の食物アレルギーのように命に関わる急性反応(アナフィラキシー)は犬ではほとんど報告されていませんが、消化器系の不調や皮膚の炎症として現れるのが特徴です。
症状としては、軟便や下痢、ガスがたまりやすくなるといった消化器症状のほか、皮膚のかゆみや赤み、外耳炎の併発などが見られます。特に強いかゆみのために、顔を掻いたり噛んだり、体を床にこすりつけたりする行動が頻繁に見られるのも食物アレルギーのサインの可能性があります。
食物アレルギーは原因食材を特定し、それを避けることが最も有効な対策です。気になる症状が続く場合は、動物病院でアレルギー検査や食事療法を受け、原因を突き止めることが大切です。
膿皮症
膿皮症は、皮膚に常在している細菌が異常に増殖し、炎症や膿を伴う病変を引き起こす皮膚病です。健康な皮膚では細菌がバランスよく存在していますが、免疫力の低下や皮膚バリア機能の乱れによって、その均衡が崩れると発症につながります。
特に柴犬はアトピー性皮膚炎などの基礎疾患を抱えやすく、こうした背景があると膿皮症を併発しやすい傾向にあります。症状としては、赤みや発疹、膿を含む小さなできものが見られ、かゆみを伴うことも少なくありません。
治療には、抗生物質の投与や薬用シャンプーによる皮膚の洗浄が一般的に行われます。ただし、細菌の増殖を引き起こした根本の疾患がある場合には、その治療も並行して進めなければ再発を防ぐことは難しいとされています。
膿皮症について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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柴犬の皮膚病の検査・診断方法
柴犬の皮膚病を診断する際には、まず視診や触診によって皮膚や被毛の状態を観察します。発疹の分布や赤み、かゆみによる掻き壊しの有無を確認し、耳や肉球、脇の下、内股など症状が出やすい部位も丁寧にチェックします。そのうえで必要に応じて、より専門的な検査を行います。
代表的な検査の1つが細胞診で、膿やフケ、かさぶたなどをテープやスライドガラスで採取し、染色して顕微鏡で観察します。細菌やマラセチア(酵母菌)の過剰増殖をその場で確認できる簡便な方法であり、治療の第一歩となります。菌の種類や有効な薬を特定するためには、数日を要する培養検査を実施することもあります。
真菌の感染が疑われる場合には、紫外線ランプ(ウッド灯)を使った検査が用いられます。特定のカビに感染した毛は緑色に光ることがあり、その毛を採取して顕微鏡で確認します。さらに詳しい診断には、やはり培養検査が必要です。
寄生虫の確認には、ノミを見つけるためのコーム検査や、疥癬ダニやニキビダニを調べる皮膚掻爬検査が行われます。後者は皮膚の表面を軽く掻き取り、顕微鏡で寄生虫を探す方法です。場合によっては少し血がにじむこともありますが、確定診断のためには欠かせません。
脱毛の原因を調べる際には、抜毛検査と呼ばれる方法で毛を採取し、顕微鏡で毛根や毛質を観察します。また、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが疑われる場合には、血液検査によってアレルゲンの可能性を推測することがあります。ただし、この検査だけで確定診断はできず、臨床症状や除外診断と組み合わせて診断されます。
柴犬の皮膚病の治療方法
柴犬の皮膚病は一度発症すると長引きやすく、再発を繰り返すことも少なくありません。そのため「症状を抑える」「皮膚のバリア機能を整える」「原因を避ける」といった多角的なアプローチが必要になります。ここでは代表的な治療法を紹介します。
薬による治療(内服薬・外用薬・注射薬)
皮膚病の症状や原因に応じて、獣医師の判断のもとで薬を使い分けます。かゆみや炎症を抑えるためには、ステロイド、免疫抑制剤、分子標的薬、抗ヒスタミン薬などが処方されることがあります。
症状が局所的な場合には軟膏やローションなどの外用薬を用い、全身的に強い症状が出ている場合には内服薬や注射薬が選択されることがあります。感染を伴っている際には、抗生物質や抗真菌薬も組み合わせて使用されることがあります。
食事療法やサプリ
食物アレルギーが関与していると考えられる場合には、アレルゲンを含まない除去食や加水分解食を用いた食事療法が効果的とされています。さらに、必須脂肪酸やビタミン・ミネラル類など皮膚の健康をサポートするサプリメントを取り入れることもあります。
ただし、食事の変更やサプリの使用は自己判断で行うと逆効果になる場合があるため、必ず動物病院で指導を受けながら進めることが大切です。
スキンケア
皮膚病の治療は薬だけでなく、日常のスキンケアによって皮膚そのもののバリア機能を高めることも欠かせません。低刺激性のシャンプーで皮膚や被毛を清潔に保ち、保湿剤を用いて乾燥を防ぐなどのケアが考えられます。
定期的なブラッシングや適度なシャンプーケアは、皮膚の健康維持と再発予防につながることがあります。
アレルゲンの回避
柴犬の皮膚病はアレルギーが関与していることも多いため、その場合は原因となるアレルゲンを可能な限り避けることも必要です。
室内ダニやハウスダスト、花粉など環境中のアレルゲンを減らすためには、こまめな掃除や換気、防ダニ加工の寝具や空気清浄機が役立ちます。
食物アレルギーが原因の場合は、該当する食材を徹底的に避けることが必要です。
柴犬の皮膚病を予防する方法
柴犬は皮膚がデリケートで、体質や環境の影響を受けやすい犬種です。そのため、発症してから治療するのではなく、日頃の生活習慣や環境管理によって皮膚病を未然に防ぐことがとても大切です。
ここでは、家庭で実践できる予防のポイントを紹介します。
定期的にブラッシングやスキンケアを行う
柴犬はダブルコートという被毛の特徴を持つため、抜け毛や汚れがたまりやすく、放置すると皮膚トラブルにつながりやすい犬種です。定期的にブラッシングを行うことで、フケや汚れを取り除くだけでなく、血行を促進し皮膚の健康維持にも役立つことがあります。特にアンダーコートは絡みやすいため、丁寧なケアが欠かせません。
敏感肌の柴犬には低刺激で保湿成分を含んだシャンプーを選ぶ、洗浄後は保湿ケアを取り入れるなどで皮膚バリア機能を守れることがあります。
室内環境を清潔に保つ
アトピー性皮膚炎の症状悪化の大きな要因となるダニやカビ、ハウスダストを減らすためには、室内環境の管理が重要です。こまめな掃除機がけや拭き掃除でアレルゲンの発生を抑え、寝具やタオルは定期的に洗濯して清潔に保ちましょう。
さらに、柴犬は高温多湿に弱いため、夏場はエアコンや除湿機を活用し、室温と湿度を適切に調整することが予防につながることがあります。
ストレスを減らす
ストレスは免疫力の低下を招き、皮膚病の悪化を助長する要因になります。柴犬は繊細な気質を持つ個体も多いため、心身の健康管理も重要です。毎日の散歩や遊びを通じてエネルギーを発散させるとともに、安心して過ごせる静かなスペースを用意してあげましょう。
食事バランスを整える
皮膚の健康は腸内環境と深く結びついています。栄養バランスの取れたドッグフードを与えることが基本であり、栄養価の調整が難しい手作り食は極力避け、どうしても手作りを与えたい場合はレシピについて獣医師とよく相談しましょう。
近年では「腸活」が皮膚病予防にも有効とされています。善玉菌のエサとなるプレバイオティクス、生きた菌そのものを摂取できるプロバイオティクス、善玉菌の代謝産物を含むバイオジェニックスなどを組み合わせることで、腸内環境の改善が期待でき、皮膚の健康維持に寄与する可能性があります。
柴犬の皮膚病についてよくある質問

柴犬の皮膚病は種類や原因が多岐にわたるため、飼い主さんから寄せられる疑問も少なくありません。初期症状の見分け方や換毛期との違い、完治の可能性など、よくある質問に回答します。
よく見られる初期症状は?
代表的な症状としては、かゆみや赤み、発疹(ぶつぶつ)、腫れ、かさぶた、フケ、脱毛などが挙げられます。一見すると軽い皮膚トラブルに見えることもありますが、放置すると症状が悪化することがあるため、早めの対応が大切です。
毛が抜けるのは皮膚病だから?
柴犬はダブルコートの被毛を持つため、春と秋に大量の毛が抜ける「換毛期」があります。これは自然な生理現象であり、病気ではありません。しかし、換毛期以外の時期に大量の毛が抜ける場合や、部分的に脱毛が見られる場合には注意が必要です。
異常な脱毛の原因としては、細菌や真菌、寄生虫の感染による皮膚炎、アレルギー反応による皮膚炎、ホルモンの異常などが挙げられます。
完治することはできる?
柴犬の皮膚病が完治できるかどうかは、病気の種類によって異なります。感染症が原因の場合は、適切な薬による治療で完治が期待できます。膿皮症や皮膚糸状菌症などは、治療後に再発を防ぐためのケアを続ければ良好な経過をたどることが多いです。
一方、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーといったアレルギー性の皮膚病は、体質が深く関わっているため「完治」というよりは「症状をコントロールする」ことが目的になります。薬物療法やスキンケア、アレルゲンの回避、食事管理を組み合わせることで、症状を大きく軽減し、快適に過ごせる状態を維持することは十分可能です。
まとめ 柴犬の皮膚病は予防と治療が大切
柴犬は体質的に皮膚が弱く、さまざまな皮膚病を発症しやすい犬種です。かゆみや赤み、脱毛などの初期症状を見逃さず、早めに動物病院を受診することが改善への近道となります。治療は薬や食事療法、スキンケア、アレルゲンの回避などを組み合わせて行い、再発防止には日常的なケアが欠かせません。
定期的なブラッシングや保湿、室内環境の清潔さを保つこと、ストレスを減らすこと、栄養バランスの整った食事が、皮膚トラブルを防ぐ大きなポイントです。
- 監修者プロフィール
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岩谷 直(イワタニ ナオ)
経歴:北里大学卒業。大学研修医や企業病院での院長、製薬会社の開発や学術職などを経て株式会社V and P入社
保有資格:獣医師免許

